運命の幼馴染み、αの双子とΩの俺

おはぎのあんこ

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23.忘れられない人

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 突然の伊万里の誘いに輝美は戸惑ったが、心のどこかでこうなることを予感してもいた。



 無駄だと思いつつ、聞く。

「マリ、言ってたよね?恋人じゃないからチンポはいれないよ、って」

「気が変わった。テルミンがエロいからチンポ入れたくなった。恋人じゃない人にチンポ 入れたくないから俺の恋人になって欲しい」

 平然と伊万里は言う。



「俺はΩの恋人が欲しい。αやβみたいな上下関係のない、対等な恋人が…」

 伊万里の肉茎は重力に逆らうように張り詰めている。

 輝美は開いていた脚を閉じて、ピンクの花柄の掛け布団で下半身を隠す。

「他にもΩなんていっぱいいるだろ?なんで俺?」

「テルミンは大好きな友達だから、安心して付き合える。性格も良いし、見た目も好きだし、イくところも可愛いし…」

 伊万里は微笑みながら羅列する。

「そんなこと言われても…」

 輝美は掛け布団をさらに上に引っ張り上げて体を隠そうとする。

 それを制止するように伊万里は言う。

「悪いようにはしないよ。俺もΩだけど、発情期の処理は自分でできる。それよりも、俺のチンポでΩの恋人を気持ち良くさせたいんだ…経験あるから、心配しなくて良いよ。手や道具よりも気持ち良くさせてあげる…」

 伊万里は言いながら着ていたカットソーと下着のシャツまで脱いでしまう。

 その体は完全に「男」だ。

 華奢なのに肉が付いているべきところにはしっかり筋肉が載っている。

 それでいて、曲線的な「女」らしさもある体…



「俺を恋人として見て。受け入れて。この邪魔な布団を退けて、一つになろう」

 布団越しにモノを輝美の下半身に押し付けて伊万里は言う。







 伊万里の顔を見ながら輝美は考える。



 性的興奮に瞳孔が開いた伊万里の顔は、それでも友達としての理性を保っている。



 伊万里の首には鋲の付いた赤い首輪がある。

 輝美と同じΩの証。

 自分のフェロモンで豹変したりすることのない、同じ性を持つ者。



 傷を刻み刻まれて、本能で縛り縛られる関係ではない。

 お互いがお互いを思う気持ちだけで結ばれる関係。

 伊万里というΩと結ばれるというのは、そういう関係を結ぶということなのかもしれない。

 それは輝美には魅力的に思えるものだ。



 伊万里の肉棒が自分の後孔を貫くことを、今の輝美は想像できない。

 でも、実際貫かれたら、そういうものだと受け入れられるのかもしれない。

 今のこの状況だって、つい1ヶ月前までは全く想像もつかなかった。

 でも、今では伊万里の扱う指や玩具でイかされて、はしたない姿を晒している。

 そんな姿を晒すことに抵抗のない自分がいる。







 このまま一線を超えてしまえば…

 数十分後には、今とは違う自分が伊万里と笑っているのかもしれない…







 輝美がピンクの布団を退けようとした、そのとき…



 ビクン、と体の奥が拍動した。

 体が何かを思い出したかのように…



 記憶がフラッシュバックする。

 山の中にある神社の奥で、泥まみれになって泣いている累の姿…

 輝美の頭や体を侵食していく、暴力的な花の匂い…



 フェロモンによって強制的に変わる累と自分の体を、輝美はずっと憎んできた。

 それなのに、体はずっと覚えていたのだ…

 一度は繋がったのに離れてしまった、「番」の存在を…





 そんな体の記憶などに振り回されたくない、と輝美は抵抗を試みる。

 しかし、布団を持つ手が震えてしまう。

 下半身から布団を退けることがどうしてもできない。



 思い通りに体が動かなくて、情けなくて。

 輝美の目から涙が溢れる。

 物欲しげに膨らんだ伊万里の一物の前で泣くのは酷い行為だということは分かっているのに、それでも涙は止まらない。

 板張りの天井が涙で歪んでいく。





 伊万里は立ち上がって言う。

「俺はテルミンのことを知らなさ過ぎたね」

 ボクサーパンツを履いて、下着のシャツを着る。

「マリ、ごめん…」 

 輝美は謝る。

 伊万里は輝美の横に仰向けに寝転ぶ。

 両手を頭の下に敷く。

「突っ走っちゃった」



 輝美は伊万里がもっと傷ついた様子を見せるのかと思っていた。

 でも、伊万里は淡々と話す。

「テルミンは優しいから、俺に対して申し訳ないとか思ってるでしょ?そんなの、いらないからね?俺が自分のためにやってることだから」



 伊万里はため息を吐く。

「Ω同士でも大丈夫、αなんていらない、って証明したいんだ。そうしないと怖くなっちゃうから…いつか、結局どこかのαと番になって、捨てられて…母さんみたいな馬鹿なΩになってしまうのが…」

「馬鹿なΩって…」

「実際そうだよ。αと番わなければ、番を失って苦しむこともないんだ。本当に馬鹿な話だよ」

 伊万里は笑う。

「まあ、大事な友達に恋人になって欲しい、ってチンポ出して頼むのも、馬鹿なヤツのすることかもしれないな」





 笑う伊万里の整った横顔を見て輝美は言う。

「今はマリと恋人同士にはなれないや。でも、友達のままでも良いじゃんって思うよ」



 横を向いた伊万里と輝美は目が合う。

「もし、マリがどこかのαと番になって、捨てられたら、俺はマリのところに通うよ。今日、マリが俺にしてくれたように、道具でマリをイかせてあげる」



 それを聞いた伊万里は感動して泣いてしまう。

 大きな目から涙が零れる。

「そんなこと言ってくれたの、テルミンが初めてだよ…」

 華奢な体を折って、ピンクの布団を握りしめて泣く伊万里の姿は、小さな女の子のように見える。





 輝美は小さな男の子だった累のことを思い出す。



 いつかはまた会わないといけない。

 そうしないと、この体は納得しない…





 輝美は運命というものの重さを感じながら、泣く伊万里を見つめた。

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