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1.双子との出会い
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苦しめ合うほどに近く、傷つけ合うほどに深い…
そんな幼馴染との関係の始まりは、とてもありふれたものだった。
両親とアパートから一軒家に引っ越してきた輝美は、4歳の男の子だった。
4件となりに2つ下の双子の男の子が住んでいると聞いて、輝美は嬉しくなった。
両親と挨拶に行くと、双子は自分の両親の陰に隠れようと必死になっていた。
隠れきれていないのが可愛いな、と輝美は幼いながらに年上の余裕を持って眺めた。
輝美は父親に促されて挨拶をする。
「南輝美みなみてるみです。よろしくお願いします」
「輝美くんっていうんだ?挨拶が完璧、すごいわねー」
双子の母親が感激する。
輝美の両親の方を見て言う。
「4歳の子ってこんなにしっかりしてるんですね!」
「そんな。全然…」
輝美の父親は謙遜する。
「うちの子なんてまだまだ…ほらお名前は?」
母親に言われて、双子はおずおずと両親の後ろから顔を出した。
「るい」
「れん」
素っ気なく答える双子に、母親は呆れる。
「もー、せっかくお兄ちゃんが来てくれたのに…輝美くん、累るいと蓮れんと遊んであげてね」
双子はポッと頰を赤らめて、期待と不安を持った目で輝美を見た。
輝美も双子の方を見つめ返した。
2人と仲良くなりたいと思った。
翌日、輝美は幼稚園の帰りに双子の家に行った。
ダイニングに通されていすに座っても、累と蓮はその周りをチョロチョロ走り回っている。
「2人とも席につきなさい。輝美くんはついてるでしょ」
母親の言葉に双子は顔を見合わせる。
「てるみくん」
「てるみくん」
2人は笑って輝美の後ろを走り抜けて自分の席に着く。
「うわあっ!」
輝美が思わず声を上げる。
「冷たいでしょー」
「氷だよー」
輝美は背中に入れられた氷を手で探る。
「こら!イタズラしちゃダメでしょ!ごめんね、輝美くん…」
母親がふきんで輝美の背中を拭く。
「てるみくん、ちょうだい」
「ちょうだい」
切り分けられ、輝美の前に置かれたバームクーヘンを、輝美が食べる前から双子が交互にフォークを使って食べていく。
「こらー!自分の分を食べなさい!ほんとに、もう、しょうがないんだから」
母親はイライラしながら、皿に乗ったバームクーヘンを交換する。
双子は顔を見合わせて、楽しそうに笑う。
輝美は楽しい気分になった。
輝美は一人っ子だったので、こういう賑やかさが珍しかった。
累と蓮が遠慮せず自分に接してくれるのも、距離が近づいたみたいで嬉しかった。
3人は毎日のように一緒に遊んだ。
累と蓮は輝美をイタズラのターゲットとして、いつもからかった。
輝美は、2人のおもちゃみたいだった。
「ねーねー、スパゲッティ食べてー 」
「食べてー」
公園の砂場で遊んでいると、2人がタッパーを差し出す。
輝美が蓋をあけると…
「うわああー!!何これ?!」
「ミミズー」
「朝お庭でたくさん集めたのー」
労力に見合う輝美の驚きぶりに、2人は満足げな笑顔を見せる。
「ひいぃ…全く…何なんだよ」
大量の蠢くミミズを直視するのが気持ち悪くて、輝美は目をそらしながらタッパーを地面に置いた。
その様子もおかしかったようで、さらに2人は笑った。
またある時は、輝美が幼稚園の遠足で動物園に行くという話を2人にした。
その話に累と蓮は目を輝かせた。
「ねー、お山のおさるさんに僕たちが集めたどんぐりあげて欲しいの」
「おさるさんにごはんあげて欲しいな」
クッキー缶に集めたどんぐりの中から、特にきれいなどんぐりをビニール袋に詰めて、2人は輝美に渡した。
特に疑問も持たずに、輝美はそれを遠足に持っていった。
遠足から帰って、輝美は2人に声を上げた。
「おい!猿はどんぐりなんて食べないんだって!それに、勝手にものをあげるなって先生に怒られたじゃないか!」
怒っている輝美を見て、累と蓮はバツの悪そうな顔をする。
「ごめんなさい。知らなかったの…」
「僕も…ごめんなさい」
しかし、目が2人とも笑っていて、明らかに最初から知っていたと分かる。
「嘘がつけないってのが2人の良いところだね」
輝美は脱力して、笑うしかなかった。
輝美はどんなにイタズラされても2人のことが好きだった。
友達というよりも兄弟のような存在に感じていた。
その関係がずっと続いて欲しいと思っていた。
そんな幼馴染との関係の始まりは、とてもありふれたものだった。
両親とアパートから一軒家に引っ越してきた輝美は、4歳の男の子だった。
4件となりに2つ下の双子の男の子が住んでいると聞いて、輝美は嬉しくなった。
両親と挨拶に行くと、双子は自分の両親の陰に隠れようと必死になっていた。
隠れきれていないのが可愛いな、と輝美は幼いながらに年上の余裕を持って眺めた。
輝美は父親に促されて挨拶をする。
「南輝美みなみてるみです。よろしくお願いします」
「輝美くんっていうんだ?挨拶が完璧、すごいわねー」
双子の母親が感激する。
輝美の両親の方を見て言う。
「4歳の子ってこんなにしっかりしてるんですね!」
「そんな。全然…」
輝美の父親は謙遜する。
「うちの子なんてまだまだ…ほらお名前は?」
母親に言われて、双子はおずおずと両親の後ろから顔を出した。
「るい」
「れん」
素っ気なく答える双子に、母親は呆れる。
「もー、せっかくお兄ちゃんが来てくれたのに…輝美くん、累るいと蓮れんと遊んであげてね」
双子はポッと頰を赤らめて、期待と不安を持った目で輝美を見た。
輝美も双子の方を見つめ返した。
2人と仲良くなりたいと思った。
翌日、輝美は幼稚園の帰りに双子の家に行った。
ダイニングに通されていすに座っても、累と蓮はその周りをチョロチョロ走り回っている。
「2人とも席につきなさい。輝美くんはついてるでしょ」
母親の言葉に双子は顔を見合わせる。
「てるみくん」
「てるみくん」
2人は笑って輝美の後ろを走り抜けて自分の席に着く。
「うわあっ!」
輝美が思わず声を上げる。
「冷たいでしょー」
「氷だよー」
輝美は背中に入れられた氷を手で探る。
「こら!イタズラしちゃダメでしょ!ごめんね、輝美くん…」
母親がふきんで輝美の背中を拭く。
「てるみくん、ちょうだい」
「ちょうだい」
切り分けられ、輝美の前に置かれたバームクーヘンを、輝美が食べる前から双子が交互にフォークを使って食べていく。
「こらー!自分の分を食べなさい!ほんとに、もう、しょうがないんだから」
母親はイライラしながら、皿に乗ったバームクーヘンを交換する。
双子は顔を見合わせて、楽しそうに笑う。
輝美は楽しい気分になった。
輝美は一人っ子だったので、こういう賑やかさが珍しかった。
累と蓮が遠慮せず自分に接してくれるのも、距離が近づいたみたいで嬉しかった。
3人は毎日のように一緒に遊んだ。
累と蓮は輝美をイタズラのターゲットとして、いつもからかった。
輝美は、2人のおもちゃみたいだった。
「ねーねー、スパゲッティ食べてー 」
「食べてー」
公園の砂場で遊んでいると、2人がタッパーを差し出す。
輝美が蓋をあけると…
「うわああー!!何これ?!」
「ミミズー」
「朝お庭でたくさん集めたのー」
労力に見合う輝美の驚きぶりに、2人は満足げな笑顔を見せる。
「ひいぃ…全く…何なんだよ」
大量の蠢くミミズを直視するのが気持ち悪くて、輝美は目をそらしながらタッパーを地面に置いた。
その様子もおかしかったようで、さらに2人は笑った。
またある時は、輝美が幼稚園の遠足で動物園に行くという話を2人にした。
その話に累と蓮は目を輝かせた。
「ねー、お山のおさるさんに僕たちが集めたどんぐりあげて欲しいの」
「おさるさんにごはんあげて欲しいな」
クッキー缶に集めたどんぐりの中から、特にきれいなどんぐりをビニール袋に詰めて、2人は輝美に渡した。
特に疑問も持たずに、輝美はそれを遠足に持っていった。
遠足から帰って、輝美は2人に声を上げた。
「おい!猿はどんぐりなんて食べないんだって!それに、勝手にものをあげるなって先生に怒られたじゃないか!」
怒っている輝美を見て、累と蓮はバツの悪そうな顔をする。
「ごめんなさい。知らなかったの…」
「僕も…ごめんなさい」
しかし、目が2人とも笑っていて、明らかに最初から知っていたと分かる。
「嘘がつけないってのが2人の良いところだね」
輝美は脱力して、笑うしかなかった。
輝美はどんなにイタズラされても2人のことが好きだった。
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