壊れた番の直し方

おはぎのあんこ

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2.檻の外で始める生活

22.灯の発情期②

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 響一郎は灯に何度も口づけを落とした。
 その後、灯の白濁に塗れた腹や性器を舌で丁寧に拭い、飲み下した。



 響ちゃん、やっぱりすごく優しい……!!
 2年前はそんなこと絶対にしてくれなかったのに……
 俺のちんこ舐めてくれるんだ……!!



 灯はそんなことを思いながら、響一郎が自分の性器をペロペロ舐める仕草にはしたなくも欲情してしまう。

「もう勃ってきたぞ」
 響一郎はニヤリと笑う。
 その口元は灯の精液で汚れている。
「響ちゃん……」


 それが2回目の合図だった。
 2人は夜通し体を重ねた。



 ……まだ外は真っ暗だが、朝と呼ばれる時刻になった。

 数え切れない程何度も交わった2人は一旦休止の体でベッドに横たわる。
 2人とも一糸纏わぬ姿で、汗ばんだ体を冷ます。



 灯は響一郎の横顔を見つめながら、ずっと抱いていた疑問を口にする。

「響ちゃん……響ちゃんは2年前……αだった頃と変わらないよな? 全く同じとは言わないけど。俺はもっと……響ちゃんは不安そうにすると思っていたよ? でも、実際は優しくて……逆に余裕見せてくれてるよね?」
 響一郎の顔が強張る。
「俺を抱くの、怖くなかった?」

 少しの沈黙の後、響一郎は口を開く。
「そんな風に言われたら……言うしかないよなぁ」

響一郎は考えながら言葉を繋ぐ。
「正直言って、少し前まではずっと怖かった。他のαと番にならずに灯は俺を選んでくれたから、絶対に灯をΩとして幸せにしてやらないといけないと思っえいたからね……そうなると絶対に発情期のときは俺が満足させてやらなきゃ……ってプレッシャーがあったよ」
「そうだったんだ……」
 響一郎の言葉は淡々としているが、垣間見える灯への強い思いに灯は身が引き締まる思いになる。


「『Ωの発情期中の満足度は人生の満足度に直結する』って、中学、高校とエリートα専用の特別授業で繰り返し聞かされたからね。たとえ体が変わってもそんなの言い訳にならない、と思っていた。灯が俺の行為に満足できなかったら、俺の存在意義なんてないから……今度こそ灯の前から消えて他のαと番になって欲しいと思っていた」


 そうではないかと思ってはいたが……
 実際に直接響一郎の口から「俺の存在意義なんてない」と言われると辛くて灯は泣きそうになる。


「灯の発情期が来るのが怖くて、永遠に来なければ良いのに……なんてずっと考えていた。それなら、俺はずっと灯のそばにいられるから……」
 響一郎はハハッと笑う。
「そんなこと考えている時点でもうダメだよな」

 灯は聞く。
「いつからそういう風に考えなくなったの?」
「俺が発情期になったときだな」
 響一郎はそのときのことを思い出しながら言う。

「俺は絶対に灯の世話にはなりたくなかったけど、無理で……見せたくない恥ずかしい姿を見せてしまって、あぁ、もう終わりだな、って思ったけど、終わりじゃなかった……」

 灯は響一郎の手をそっと握る。
「『響ちゃんは響ちゃんだ』って言われて……俺は俺のまま灯といても良いのかな、って思えた」


 響一郎も灯の手を握り返す。
 ふぅーと息を吐いて、吸う。

「そうしたら何か吹っ切れてさ。灯が俺にしたのと負けないくらい、灯の発情期のときのセックスでは満足させてやる、ってやる気になっちまった」
「おぉ、すごい意気込み」
「もし俺の体が満足させられなかったらオモチャで灯をイかせてやる、それでもダメなら2人で作戦会議だ! くらいの意気込みだったな……まぁ、そんな必要はなかったがな」
 響一郎はハハハと明るく笑う。


 灯は響一郎のその様子に心を打たれる。

 笑い話のように言っているが、そういうふうに割り切ることが決して簡単なことではないことは灯にも分かる。
 その境地に至るまでの響一郎の苦悩を灯は想像することしかできない。


 以前よりも優しさが明らかに増したのは、自分がΩとして抱かれたときの感覚から得たものなのだろう。
 荒々しく扱われるよりも優しく扱われるほうが体も心も満足するのだと響一郎は抱かれる側になって実感したのだろう。


 その感覚を受け取るだけでなく、灯に実践しようと考えることも当たり前のことではない。
 響一郎の誠実さや向上心があってのものだ、と灯は思う。


「響ちゃんすごいね……本当に響ちゃんはすごい人だ」
 灯は思ったことを素直に口にする。

「どうだ? 俺、灯に勝ったか?」
 さ響一郎は冗談めかして笑う。

「何言ってんだよ。まだ序盤だろ? 発情期舐めんなよ」



 ピンク色の霧が灯の頭を支配していく……



 ヒクッと腰を揺らしてしまう灯の脚を、響一郎は有無を言わさない力で押さえつける。
 そのまま大きく開かせて恥ずかしい状態にしたままで、灯の唇に同意を取るためのキスをする。
 それから、響一郎は自らの欲望を蜜口にあてがう。


 ちゅぷん、と音が鳴る。
 響一郎自身が入っていく力の頼もしさに、灯の全てが蕩けていく……





 ……1週間後、灯は幸せに満ちた足取りで秋の終わりの通りを歩く。

 手には最近話題のケーキ屋のロゴが入った紙箱がある。
 お互いの発情期を無事終えたお祝いパーティーをするのだ。

 その店は少し遠いところにあり、さらに行列していたのもあって2時間くらい掛かってしまった。
 その分食べるのが待ち遠しい、と灯は思う。



 灯がパーティーの提案をしたとき。響一郎は呆れた表情をした。
「そんなことするヤツ聞いたことないぞ」
 でも、灯はお祝いしたいと言って聞かなかった。
 結局、響一郎は灯の熱意に折れた。
「脳内お花畑が・・・・・・」と捨て台詞を残して……




 灯は響一郎と発情期を過ごすことが出来て嬉しかった。
 1週間くっついたり離れたりしながら過ごした。

 2日目の夜、シャワーを浴びに風呂に行ったが、そこでも響一郎は灯を後ろから襲った。
 立ちバックで犯される刺激と快感を感じながら灯は射精した。

 その後のボディーソープでヌルヌルにしてお互いをマッサージし合ったのも良かった。再び高まった体を抑えられなかった灯は、響一郎にお願いして、洗面所でもバックで犯されてしまった。
 その記憶が灯の頭の中に蘇る。


 幸せだな……


 怠いような、重いような体の疲れと、熱を持ったようなナカの痛みが、激しい交わりを思い出させる。
 でも、それこそが灯の求めていた幸せだった。
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