壊れた番の直し方

おはぎのあんこ

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2.檻の外で始める生活

14.想像の中で……

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 灯と響一郎が黄丸のビルに引っ越してから、2か月が経った。

 2LDKの部屋を借りていたのと、家具が備え付けだったのもあって、2人は別々の部屋のベッドで寝ていた。


 これで良いのだろうか? という思いは灯にあった。
 恋人同士なのだから一緒に寝る、もっと言えば性的な意味でも寝るべきなのではないか? と……


 しかし、今の2人は昔のようなαとΩという分かりやすい関係ではない。
 どういう風に寝るべきか、灯は決めかねていて、響一郎と話をするのも何となく避けてしまっていた。
 下手な切り出し方をすると、響一郎の微妙なプライドを傷つけてしまう、と思った。


 3か月に1度の発情期はまだ来ていない。
 だけど、「そういう気分」になってしまう夜もある。

 そういうときは、自慰をして紛らわせる。
 2年前の響一郎との行為を思い出しながら……


 罪悪感をたっぷり味わいながらの絶頂は、苦さがいつまでも残ってしまう……




 ある夜中、灯は尿意で目が覚めた。

 廊下に出てトイレで用を足し、部屋に戻ろうとすると、響一郎の部屋の前で妙な気配を感じた。

 灯は部屋に一旦戻ったあと、電気を消したまま、音を出さないように細心の注意を払いながら再び廊下に出た。
 もちろん、目的地は響一郎の部屋だ。


 ドアの前に立つ。
 布が擦れるような音が聞こえる……
 それと、荒い息遣いも……


「はっ……はあっ……はっ……」

 灯は音を立てないように神経を研ぎ澄ませながらドアを少しだけ開ける。隙間からベッドの上の響一郎が見えるように。

「んはあっ……んん……」
 暗がりの中でよく見えないが、悩ましくシーツの上で揺れる響一郎が何をしているのかくらいは灯にも分かる。


「んん……」
 響一郎は左手で乳首を弄りながら、自身を握っているようだ。

 スウェットの上を捲り上げ、下のパンツをずらして、だらしない格好でただ自分の欲望に忠実に動いている。

 灯は響一郎の左手の指に挟まれた胸の突起を見つめる。
 色羽と音二郎が「開発」したそれは、2年前よりも確かに膨らみを大きくし、色も濃くなっている。
 その突起を今響一郎は人差し指と中指の間に挟み、捏ね回し、自らの快楽を生み出している……
 
 さらに、灯はパンツから飛び出した響一郎の自身をじっと見る。
 前に見たときは、響一郎が色羽に犯されているときで、とても辛そうに見えた。
 今は、響一郎の大きな手に色々な仕方で撫でられて、嬉しそうに天を仰いでいる。



「んっ……はぁ……ダメだぁ……」

 しばらく弄った後、響一郎は体勢を変える。
 腹を下に蹲るようにして、尻の割れ目に中指を沿わす。
 ヌルヌルと数回表面を滑らせた後、躊躇いなく蕾に指を入れていく……
 ズブズブと長い指が沈んでいく……


 その様子を見て、灯は衝撃を受ける。

 元々αだった響一郎は、REDにされて、妹の色羽と弟の音二郎をはじめとする人たちに2年間犯され続けた。
 それは想像を絶する苦痛だったに違いない。

 だから、響一郎は後ろの穴で気持ち良くなることに嫌悪感を持っているか、少なくとも進んで気持ち良くなろうとはしないだろう、と灯は思っていた。



 しかし、今、響一郎は自らの指で後ろを慰めて、気持ち良くなろうとしている……


「んはっ……はあっ……もっとっ……」
 自身を慰めていたときの何倍も甘く切ない声で、響一郎は自らを深く求めていく。
 チュクチュクと水音が響き、トロリとした愛液が後孔から垂れてくる。
 それはΩの体の特徴である。


「ふうん……はぁん……」
  響一郎の指はかなり長い方で、太さもそれなりにある。
 しかし、ペニスに比べたら全く物足りないだろう。

 響一郎は、体を揺すりながら抜き差しの速度を速めていく。

「来てっ……はっ……来て……」
 誰を呼んでいるのか分からない、しかし切実さのある声が暗闇に響く。



 あぁ、Ωになった響ちゃん、辛そうだなぁ。
 ……俺のチンポで慰めてやるよ。



 灯は自分の心の中で生まれた声に驚く。



 俺が……?
 響ちゃんを……?



 今まで考えつかなかったのが不思議なくらいだが、灯は今初めて響一郎に欲情し、後ろから突っ込んでやりたい、と思った。
 体は従順で、すぐに自身がボクサーパンツの布地を押し上げてくる。



「んん……んんっ……来てっ……!!」
 響一郎の声に切なさが増す。


 灯は想像する。
 細い両手が響一郎の四角い尻を掴み、割れ目の奥にモノが突っ込まれるシーンを……

 響一郎のモノと比べると見劣りする、しかし指と比べれば充分な大きさの雄がヌルヌルした肉壁を押し入っていく。
 抵抗は最初だけで、響一郎は灯のモノの虜になる。
 灯が細い腰を固い尻に打ち付ければ、響一郎は歓喜に悶える。

「灯」と名を呼びながら響一郎はその体を灯の動きに支配され、悦びの中で果てるだろう……



 灯はそこまで考えて、愕然とする。
 燻る欲求を抱えたまま、響一郎が自慰をする姿を見つめる。


 しばらくして、響一郎の動きが止まり、声も聞こえなくなる。
 背中を丸めた響一郎の後姿に落胆の色が滲む。
 自分では後ろをイかせることは出来ないと悟ったのだろう。



 響一郎は再び勃起した自身を慰め始める。
 灯も、パンツを下ろして自分の雄を扱く。


「ううっ……んっ……ふうっ……んっ……」

 響一郎の高まる声を聞きながら、灯も声を押し殺しながら一緒にその時を待つ。

「んっ……」
 響一郎が達し、体の力が抜けたのと同時に灯も果てた。
 日が開いていたのもあり、吐き出された白濁の量は多かった。
 若い男の匂いが鼻につく。

 手の中に生温かい種を握りしめながら、灯はそれが響一郎のナカに散らされる想像をした。


 音を立てないように扉を閉め、灯は自分の部屋に戻った。
 ベッドの中で、灯は何度も響一郎を犯す想像をした。

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