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1.檻の中
6.ある予感
しおりを挟む灯はムーの顔を直視できない。
2人のαに挟まれて項垂れたムーはΩ以外の何者でもない。
灯は自分がなぜ今までムーをαだと思っていたのか信じられない。
長い前髪がマスクを覆い、濃紺の浴衣は前がはだけて白い胸が覗いている。
灯はこれから目の前で起こることを悟る。
ああ、やめろ……見たくない……
なぜか灯の胸は早鐘を打つ。
自分が犯されることは受け入れられたのに、なぜかムーの身にこれから起こることを受け入れられない。
「私たちも追いつきましょう」
黒いドレスの女は、黒いTシャツの男に命じ、ムーを寝かせる。
「やめろ……」
ムーは灯から顔を背けて言う。
「あら? 今更何を言うの? ムー、お前が望んだことでしょう?」
鈴が転がるような声で女は言う。
「お前はその目で灯くんと野々池さんが番になるのを見届けるのよ。私と音と繋がりながら、ね」
「色は本当にすることがエゲツないねぇ」
女の名は色、男の名は音というらしい。正式な名かどうかは分からない。
音は色とムーを交互に見てニヤニヤ笑う。
「なんだかよく分からないけど、世の中にはいろんな趣味の人がいるんだなぁ」
急な展開に龍司はぽかんとなって、檻の外で繰り広げられる光景を見ている。
「つまり、ムーはαたちに命じられて動いていた下僕だったんだな。番になる幼馴染みの俺たちの横で、同じように繋がる……そういう趣味ってことだな」
そう言って、龍司は1人で納得する。
「まぁ、そういうところね。ムーに見せつけたいの、私は。灯くんと野々池さんが番になるところを……ほら、ちゃんと顔を見せて」
色はムーに命令する。ムーはそれでも動かなかったが、音が強制的に顔を灯の方へ向ける。
「よく見ておくんだ。お前と同じΩの灯くんが龍司のモノになっていくところを……」
「嫌だ……見たくない……」
ムーは首を振り、灯の心の声と同じことを口にする。
「何言ってんだよ。早くお前も灯くんに追いつけよ」
そう言って、音はムーの着物の帯を解き、前を開いてその裸体を露わにする。
痩せ細り肋骨の目立つ身体は、艶やかに見える。
ぷっくりと膨らんだ2つの突起は物欲しげだ。
「この2年、俺と色でムーを開発したんだ。苦労したよ……なかなかだろ? 口では嫌がっているのに、体はこんなに欲しがっているなんてさ」
なぜか、灯はムーの火照った体にそそられてしまう。
自身が疼き、龍司のモノを咥え込んだままの後孔も切なく締まる。
「おいおい、灯。こんな奴に感じてんのかよ。やっぱりΩだな」
龍司は灯の反応を見て嘲笑う。
「ごめんなさいね。私たちもすぐに貴方たちに追いつくから……」
色はそう言うと、迷いのない動作でムーの脚を高く挙げた。
ムーのΩにしては立派な雄と、愛液でぐっしょりと濡れた後孔が丸見えになる。
「うふふ。良い眺めでしょ?」
ペットを自慢するかのように灯と龍司の方を見て言うと、色はムーの方に向き直り、黒いドレスの裾からモノを取り出す。
「うわぁ……」
「わぁ……」
龍司と灯は同時に声が出てしまう。
つい声が出てしまう程に、色のペニスはとても大きく、極太だった。
華奢な体からするとアンバランスな位に。
「下着を着けずにここまで来たけど、汚しそうで怖かったわ」
色は大きな亀頭を撫でた。
周りの視線も気にせずに、ヌチャヌチャと淫猥な音をさせて数回扱き上げる。さらに、それは重力に逆らって天を見上げる。
「すぐにムーに突っ込めるわ」
「本当にやめてくれ……」
色はムーの言葉を無視してその両脚を持つ。
愛液を溢れさせている後孔に突っ込んでいく。
「ううーんっ!」
ムーは悲鳴のような声を上げて、身を捩る。
濡れたモノと穴が擦れて、淫らな水音を立てる。
「はっ……は……あんっ……はあっ……」
「うふふ。お前もすっかり私のおチンポの虜ねぇ。昔のお前とは似ても似つかぬ下劣な姿……」
色の巨大なαのシンボルはムーの中に納められてしまう。
「んんん……んん……んっ……」
ムーは挙動不審な様子を見せると、突然射精してしまった。腹の上に白濁が散る。
「私のおチンポは入るだけでムーの前立腺を潰してしまうのよね」
言い訳なのか自慢なのか分からない言葉を色は吐く。
「野々池さん、お待たせ。動いて良いわよ」
「はっ……はい!!」
色のペニスと迫力に完全に押された龍司は裏返った声で返事をする。
「よ……よしっ、灯、いくぞ」
冷めた灯の内壁を萎えかけた雄が押し上げ、再開を知らせる。
「痛っ……」
灯は再び痛みを感じるが、最初ほどではなかった。快楽がすぐそこにある感触もあった。
俺は、ムーが色という人に犯されているように、今、龍司に犯されているんだなあ……
不思議な感慨が灯に訪れる。
ムーは首輪をしているから、色や音の番ではないんだな。
REDというのは何なんだろう?
2年前から開発した、とか言っていたが、どういうことなんだろう……?
2年前、というキーワードが灯の頭に引っかかる。
よく見たら、色と音の顔はよく似ている。
そして、2人の顔にはどこか懐かしさを感じる……
「おいっ、灯。何ボーっとしてんだよ。お前も腰動かせ」
龍司は乱暴に灯に命じる。そこには、色に負けたくない、という妙な対抗心が感じられる。
違うことを考えていたのに、灯の体は感じている。
蜜が接触部分から溢れるように湧いて、クチュクチュと水音を鳴らす。
「ふっ……ふうん……うふっ……」
灯は自らの乳首を摘んで捩じるように刺激する。そうして、腰を上げて回し、龍司のモノが奥へ来るように誘い込む。
奥へ行っては少し戻る。その繰り返しで高まっていく。
「淫乱野郎。自分で気持ちよくなってやんの」
龍司は馬鹿にしたように笑う。
灯はムーの方に顔を向ける。
ムーは泣いていた。両手で顔を覆いながら。
それは、生理的な涙でも、快楽の涙でもなかった。
色は容赦なく、知り尽くした手際の良さでムーの体を翻弄した。
「や……やめろ……イ……きたくない……」
ムーは泣きながら懇願する。
「1回1人でイった癖に何言ってんのよ、淫乱奴隷が……灯くんにイくところ見てもらいなさい」
「ふっ……ふううっ……」
ムーは嗚咽しながら甘い息を吐く。
一方的な猛攻に、完全に屈服していく……
灯は決意した。
ある「予感」があったから……
ムーの前に俺がイってやろう。
そうすれば、まだムーの屈辱感はマシになるんじゃないか……
「りゅ……りゅうじっ! イきたいっ……イかせて……」
灯は甘い声で龍司に強請る。
「自分で強請るとは……淫乱対決は灯の勝ちかなぁ?」
龍司もまんざらでもない様子で、灯に覆い被さる。
「終わったらお前のうなじを噛んでやる」
そう灯に囁くと、灯の唇に齧り付く。
荒々しいキスに灯は呼吸を忘れる。
強く確実に打ち込まれる熱杭のリズムだけが体を支配する……
「んっ……んあっ……んんうっ……」
これ以上無理なほどに灯の肉壁は収縮して龍司の肉棒を締め付ける。
そして……
一瞬灯の動きが止まる。
その後、身をくねらせながら白濁を腹に吐き出す。
龍司は下半身を打ち付けながら灯のナカに吐精する。
灯はそれを受けながら体をビクビクと震わせる。
「同時にイったな。体の相性もサイコーなんじゃねぇの? 俺たち」
龍司はニヤリと笑って言う。
2人の様子を見ていた色は、さらに激しくムーを攻め立てる。
「ほらっ……早くお前もイけよっ……」
「いやっ……ああっ……」
ムーは色に揺らされながら犯される。
その目から最後の反抗の光が消える。
「ムー……私は……お前のその目が好きよ……絶望に染まったその目が……」
上に覆い被さった色は、キラキラした目でムーを見下ろす。
「ううっ……」
嗚咽しながらも、ムーが快楽に沈んでいくのが灯には見て取れる。
そのときだった。
ある「匂い」がふわりと灯の鼻腔に届いた。
灯は驚いてムーの方を見る。
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