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第六章 星の救済
第91話 まさか
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それはたしか、あらゆる災難の中で、一番最初で最も大変な物と、かの有名な Ambrose Gwinnett Bierce(アンブローズ・ビアス)著。The Devil's Dictionary(悪魔の辞典)において、そう表現されたもの。
「そんな、まさか」
ラウラはテレザの様子を見て焦る。
「でもあの感じ、テレザはそんなに飲んでもいなかったし、食べてもいなかった」
お姉様や、私に比べて彼女達はお相手する機会も多い。
おかしくはない。
「でも、テレザさんですもの。道ばたで何かを拾い食いをしていてもおかしくありませんわね。もう少し様子を見ましょう」
ラウラの記憶に残るのは、木イチゴや桑の実を見つけては食べていた姿。
魔人族は、主に肉食のため、細かな樹の実などは気にしない。
少しの葉の違いで食べられないものもあるし、毒を持つ物も在る。
つまり面倒な割に満足感が少ない。
だが、テレザ達は主要な物は税として取られるため、子どもの頃から食べられるものは何でも食べてきた。
その違いが、道ばたでの拾い食いという認識となる。
テレザはテレザで困惑をしていた。
匂いなどに敏感になり、好きだったものがいやになる。
だが、何故かあまり食べなかったものが、無性に食べたくなった。
「チトセに帰るならお母さんに聞いてみよう」
そう言いながら、あまり好きではなかった、グミの実を見つけて集めていたものを口へ放り込む。
「あー渋い」
準備を二から三日かけて行い。宰相監視の下仕事を纏めて終了させた面々。
いざ記憶のあるチトセに向かい転移をする。
当然、飛んだのは道照にとって記憶の残る自分の部屋。
現れた瞬間。自分のベッドで匂いを嗅いで、恍惚としているヴァネサとヴィオラを見つける。
「「あんた達、何をしているの?」」
シルヴィとテレザの声がかぶる。
「へっ、シルヴィとテレザ。あっ神乃様」
二人が飛びつき、匂いを嗅ぎ始める。
「狼族は、こういう風習があるのか?」
「ええまあ。主様の匂いは特別なもので、さらにすこし独特ですし」
「独特? 」
「そう、すごく気持ちが良いの。落ち着くし」
何故か、テレザが答えてくれる。
そんな騒ぎの後、背後に立つ異様な雰囲気を持つ五人を見つける。
特に、炎呪は自分もしたいという態度が前に出ている。
忙しくて、道照と触れ合っていない。
ないはずのしっぽが揺れる。
だが、ヴァネサとヴィオラは魔人族を初めて見る。
一番近い似たものはモンスターのオーガ。
恐怖を感じながらも、腰の後ろからナイフを抜き放とうとした瞬間、いつの間にか目の前に来た、シルヴィとテレザに手を止められる。
「あわてないで、彼らは魔人族。道照。主様の部下だから」
それを聞き、ヴァネサとヴィオラは何故か、シルヴィとテレザの股間に向けて突進する。
「やっぱり。神乃様の匂いがする」
「良いわね。付いて行けば良かったぁ」
そう言われて、シルヴィとテレザは赤くなる。
「まあその。長達に挨拶をしたいし。案内をして」
そう言って、そそくさと部屋を後にする。
「さて、来た早々お騒がせだな。他にも部屋はあるから案内をしよう」
四天王たちに声をかけて、案内を始めるが。
だがまあ、そう簡単には行かず。
道照の姿を見るたびに、騒ぎは大きくなり町中へと広がっていく。
当然、城へは主たる者達が集まり宴会が始まる。
町中でもそれは同じ。
その日チトセは、狂乱の様相を見せる。
何故か、翌年の出生率が上がったそうだ。
「ほう。王国の方からもう一回来たのか?」
「ええ瞬殺でした」
「警告は、きちんとしたんだろ」
「むろんです。マニュアル通りに実行しました」
「なら、仕方が無い」
いまは、獅子族のヴァルトルが議会代表をやっているそうだ。
代表を中心とした、議会政治。
各種族、犬、狼、猫、虎、獅子、兎、狐と変わりはないようだ。
「今は盗賊達も来なくなりまして、平和です。それと、時たまメリディウムポーツムから、神乃様からお誘いいただいたと亜人が来るだけです」
「ああ。迫害されているのを見るとついね」
「神乃様のほうは、あれからどうなされたので?」
「まあ今は、色々あって、魔王だ」
「魔王というと、どこかの国の王様で?」
「まあ。そうだ」
「ではこの地も、治めてくだされば、荷が下ります」
そう言われて、少し悩む。
この大陸での魔道具の作製と販売をすれば、チトセの生活は安定する。
さすがに、王国にしろ、メリディウムポーツムも魔王の存在は知っている。
魔王の飛び地として、宣言すれば、安全となるか、逆に危険になるか。
悩むなぁ。
「少し周囲の国と話し合ってからだな」
メリディウムポーツム側は前回門前払いだったが、今回俺には肩書きがある。
前とはさすがに違うだろう。
見栄は大事か? 馬車? いや車でも作るか?
いや。ゴーレムのコアがある。
金属の、馬が引く馬車。
それも、漆黒で纏めれば、魔王らしいか?
ついそんな事を考える。
そんな事を、思いぼーっとしていると、人がやってくる。
「初めまして、神乃様。いえ魔王様。デルフィーヌと申しまして、テレザを妃として迎えていただけると夫婦共に喜んでおります」
横に付いてきているのは、お義父さんかな?
「いえこちらこそ。ご挨拶が、遅くなりまして、申し訳ありません」
「やめてくださいぃ。頭を下げられたら困ります。我らを助けて貰い。町を与えて貰い、精霊に命じて、安定的暮らしを与えてくださった。そして、今は王という御立場。我らに頭を下げられては困ります」
「娘に子どももできたようですし、安定するまでは家で様子を見ますので、ご安心ください」
「は?」
「「はっ??」」
「「「「「はあっ???」」」」」
驚きは、一瞬でその場に伝播した。
「そんな、まさか」
ラウラはテレザの様子を見て焦る。
「でもあの感じ、テレザはそんなに飲んでもいなかったし、食べてもいなかった」
お姉様や、私に比べて彼女達はお相手する機会も多い。
おかしくはない。
「でも、テレザさんですもの。道ばたで何かを拾い食いをしていてもおかしくありませんわね。もう少し様子を見ましょう」
ラウラの記憶に残るのは、木イチゴや桑の実を見つけては食べていた姿。
魔人族は、主に肉食のため、細かな樹の実などは気にしない。
少しの葉の違いで食べられないものもあるし、毒を持つ物も在る。
つまり面倒な割に満足感が少ない。
だが、テレザ達は主要な物は税として取られるため、子どもの頃から食べられるものは何でも食べてきた。
その違いが、道ばたでの拾い食いという認識となる。
テレザはテレザで困惑をしていた。
匂いなどに敏感になり、好きだったものがいやになる。
だが、何故かあまり食べなかったものが、無性に食べたくなった。
「チトセに帰るならお母さんに聞いてみよう」
そう言いながら、あまり好きではなかった、グミの実を見つけて集めていたものを口へ放り込む。
「あー渋い」
準備を二から三日かけて行い。宰相監視の下仕事を纏めて終了させた面々。
いざ記憶のあるチトセに向かい転移をする。
当然、飛んだのは道照にとって記憶の残る自分の部屋。
現れた瞬間。自分のベッドで匂いを嗅いで、恍惚としているヴァネサとヴィオラを見つける。
「「あんた達、何をしているの?」」
シルヴィとテレザの声がかぶる。
「へっ、シルヴィとテレザ。あっ神乃様」
二人が飛びつき、匂いを嗅ぎ始める。
「狼族は、こういう風習があるのか?」
「ええまあ。主様の匂いは特別なもので、さらにすこし独特ですし」
「独特? 」
「そう、すごく気持ちが良いの。落ち着くし」
何故か、テレザが答えてくれる。
そんな騒ぎの後、背後に立つ異様な雰囲気を持つ五人を見つける。
特に、炎呪は自分もしたいという態度が前に出ている。
忙しくて、道照と触れ合っていない。
ないはずのしっぽが揺れる。
だが、ヴァネサとヴィオラは魔人族を初めて見る。
一番近い似たものはモンスターのオーガ。
恐怖を感じながらも、腰の後ろからナイフを抜き放とうとした瞬間、いつの間にか目の前に来た、シルヴィとテレザに手を止められる。
「あわてないで、彼らは魔人族。道照。主様の部下だから」
それを聞き、ヴァネサとヴィオラは何故か、シルヴィとテレザの股間に向けて突進する。
「やっぱり。神乃様の匂いがする」
「良いわね。付いて行けば良かったぁ」
そう言われて、シルヴィとテレザは赤くなる。
「まあその。長達に挨拶をしたいし。案内をして」
そう言って、そそくさと部屋を後にする。
「さて、来た早々お騒がせだな。他にも部屋はあるから案内をしよう」
四天王たちに声をかけて、案内を始めるが。
だがまあ、そう簡単には行かず。
道照の姿を見るたびに、騒ぎは大きくなり町中へと広がっていく。
当然、城へは主たる者達が集まり宴会が始まる。
町中でもそれは同じ。
その日チトセは、狂乱の様相を見せる。
何故か、翌年の出生率が上がったそうだ。
「ほう。王国の方からもう一回来たのか?」
「ええ瞬殺でした」
「警告は、きちんとしたんだろ」
「むろんです。マニュアル通りに実行しました」
「なら、仕方が無い」
いまは、獅子族のヴァルトルが議会代表をやっているそうだ。
代表を中心とした、議会政治。
各種族、犬、狼、猫、虎、獅子、兎、狐と変わりはないようだ。
「今は盗賊達も来なくなりまして、平和です。それと、時たまメリディウムポーツムから、神乃様からお誘いいただいたと亜人が来るだけです」
「ああ。迫害されているのを見るとついね」
「神乃様のほうは、あれからどうなされたので?」
「まあ今は、色々あって、魔王だ」
「魔王というと、どこかの国の王様で?」
「まあ。そうだ」
「ではこの地も、治めてくだされば、荷が下ります」
そう言われて、少し悩む。
この大陸での魔道具の作製と販売をすれば、チトセの生活は安定する。
さすがに、王国にしろ、メリディウムポーツムも魔王の存在は知っている。
魔王の飛び地として、宣言すれば、安全となるか、逆に危険になるか。
悩むなぁ。
「少し周囲の国と話し合ってからだな」
メリディウムポーツム側は前回門前払いだったが、今回俺には肩書きがある。
前とはさすがに違うだろう。
見栄は大事か? 馬車? いや車でも作るか?
いや。ゴーレムのコアがある。
金属の、馬が引く馬車。
それも、漆黒で纏めれば、魔王らしいか?
ついそんな事を考える。
そんな事を、思いぼーっとしていると、人がやってくる。
「初めまして、神乃様。いえ魔王様。デルフィーヌと申しまして、テレザを妃として迎えていただけると夫婦共に喜んでおります」
横に付いてきているのは、お義父さんかな?
「いえこちらこそ。ご挨拶が、遅くなりまして、申し訳ありません」
「やめてくださいぃ。頭を下げられたら困ります。我らを助けて貰い。町を与えて貰い、精霊に命じて、安定的暮らしを与えてくださった。そして、今は王という御立場。我らに頭を下げられては困ります」
「娘に子どももできたようですし、安定するまでは家で様子を見ますので、ご安心ください」
「は?」
「「はっ??」」
「「「「「はあっ???」」」」」
驚きは、一瞬でその場に伝播した。
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