異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり

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第六章 星の救済

第89話 複雑な心

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「いい加減にしましょう」
「んあ?」
 あきれかえった面々。

 とっぷりと、日が暮れていた。
 途中で無意識に、目を強化していたようだ。

「ありゃ。もう真っ暗か。早く止めて…… 止めたけれど聞こえなかったんだな」
 周りを見回し、俺がぼやく。

「聞こえなかった? まぁ、そうかもな」
 珍しく炎呪が苦笑い。

 晩飯ねえ。
「久々にカレーにするか」
 俺がそう言うと、二人の顔が曇る。

「あれですね」
 シルヴィとテレザが嫌そうな顔をする。

 鬼の湯でカレーを作るため、三日三晩作り続けた。
 むろん食い続けた。いや収納しておけば良かったんだが、こちとら、郷愁もあるしついね。

 彼女達と俺の間に、埋められない深くて暗い谷があるのを感じた。
「おいしいのです。ですが、三日ずっとはさすがに」
 そう言って拒まれた。

 三日目は、オークのカツカレーだったのに。

「まあ外では、やはりカレーだよ。自家製ルーもできたし」
 そう言いながらすでに、鍋と竈を用意する。
 肉と野菜を刻み、肉じゃがと同じように肉から炒め始める。

 なれた感じでどんどん作っていく。
 四天王達は興味芯々。
 ついでに、評判が良かった翼竜の唐揚げも作る。

 酒を出し、盛り上がっていく。

 シルヴィとテレザにねだられて、魚の燻製を出す。
 この世界へ来て、最強の武器。
 二人のしっぽが嬉しそうに揺れる。

 そんな中。地下では、自分の力が異様なスピードで喰われ、眷属が消えていく。
 倒されるのではは無い。文字通り消えていく。
 誰も訪れる事のない孤島で、随分長い事存在している。

 たまに他の精霊に請われ出張をするが、此処が居場所。

 だがいま、その異変が発生し、金属を喰らう化け物を、つい覗いてしまう。
 そう、それはそこにいた。
 精霊は、特に彼女達四精霊は四大精霊と呼ばれ地、水、風、火は生き物に敬われ祭られてきた存在。
 そんなプライドもある。

 だが、興味本位で覗き、驚く。
 恐怖ではない。そこには、この地に存在してはいけない存在が、ちっぽけな生き物たちとともに居た。

 立ちのぼる金色の光。
 あれは、大昔に見た神。この世界の管理者と同じ物。
 精霊の中でも、火と地は一番存在として古い。
 火がまだ荒れ狂い意識としてなかった頃でも、地は静に世界を見つめていた。

「何故あのようなお方がこの地に、こちらからご挨拶に赴くべきではないだろうか」
 地の精霊が苦悶する。
 周りを囲むは下賎の者達。

 悩んだ末、行動にでる。

「そこの者達、場を開けろ」
 突然、地面から精霊が生えてきた。

「うおっ」
「きゃあ」
 きゃあと、かわいく悲鳴を上げたのは、信じられないだろうが炎呪だ。
 もう一度言う、炎呪がかわいい悲鳴を上げた。

 その影響は大きく、精霊など一瞬で忘れられ、皆の視線が炎呪に向かう。
「なに? 何だその目は。私とて驚く事はある」
 赤い顔がさらに赤くなる。
 いやそれは、燃え上がるたき火のせいか?

「いやまあ、かわいいよ。炎呪」
 調子に乗って、道照がそんな事を言ってみる。
 明らかに、赤くなり。今度こそ俯いてしまう。

 その姿は他の四天王三人には衝撃。いや良く見れば、実の妹ラウラですら驚愕の表情を見せている。

 ぽつんと取り残された、地の精霊。
 だが年の功。すべてをなかった事にする。
「神とお見受けします。この世界の地を司る精霊にございます」
 その言葉に、今度は皆の視線が道照に向かう。
 だが先ほどとは違い、やっぱりなという諦めの視線。

「まあ神とは違うが、丁度お前に会いに来た所だ」
「ほう、どのようなご用件で?」
 表情が、一瞬変わる。

「他の精霊に言われて、力を与えてくれと頼まれた」
 さっきまでの事を思い出す。ちぐはぐな行動。

「先ほどまで、私の眷属が消され、力を奪われたのはあなた様のお力では?」
 嫌みをさらっと混ぜる。

「そうなのか? そりゃすまない。まあ契約をして、力を与えよう」
「力とは? 名付けは司る力に連想する言葉を糧に、力を増すもの。とても重要でございます」
「そうなのか?」
「ええ、気分的なものですが」
 それを聞いて、がっくりと力が抜ける、道照。

「地、または土。あー。以外とないな。つくし、みのり、めぐみ」
 反応を見ながら、名を言って行く。
 するとめぐみが一番反応が良かった。

「良しお前は、大地。めぐみの象徴。めぐみだ」
 その瞬間に、金色の光が、地の精霊に流れ込んでいく。

 それに加えて、活性化するための力まで押し込んでいく。
「おおおおっ。これは素晴らしい」
 歓喜に震える、地の精霊。
 いやめぐみ。

 一面、いきなり緑の草原が茂り始め、緑の絨毯が枯れていた地に広がっていく。
「「「おおおっ。すごい」」」
 たき火の光と、皆身体強化が使えるため、かなりの所まで見える。

 一瞬で、枯れていた島は緑豊かな地になり、何故か谷へと、細い水が滝のようになって降り注ぐ。
 高さがあるため霧となり、下では木々が生え潤っていく。

 シルヴィとテレザは最初に地図を見ている。
「ねえ、これって景色としては幻想的だけど、元のを考えると、道照に力を貰って女を取り戻した感じがしない?」
「する。ひょっとして、精霊達って、道照に力をもらいに夜這いしに来るとか?」
「実体はないから無理じゃない?」
 二人がごにょごにょと妄想する中、用事は済んだようだ。

 歓喜に震えるめぐみを余所に、宴会を満喫し。
 夜明けとともに、一同は魔王城へと帰還した。
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