異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり

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第六章 星の救済

第85話 魔王城の地下

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 ダンジョンは、魔王城の地下にあった。
 底からあふれる魔素を利用して、魔王城で使う魔道具の運用に使っているようだ。

 仕事? 俺はシルヴィの献身により終わったよ。
 四天王はまだのようだ。
 そして今、久しぶりに、三人だけでここへ来ている。

 シルヴィは、何か誇らしく俺の横に立ち、テレザは少し後ろを付いてくる。
 珍しくお小言が、シルヴィからテレザへと伝えられた結果らしい。

 奇妙なオブジェへ魔王の紋章をかざすと、部屋が光に包まれ。すぐにぶわっと吹く風が体に感じる。
 これが、ダンジョンに施されたシールドの解除。
 魔道具が、常時シールドを張っている。
 ダンジョンから漏れ出る魔素を使って、シールドをはる。とってもエコな設計だ。

 大きく不気味な彫像が彫られ、口の部分が、入り口になっている。
「趣味悪いな。誰の趣味だ?」
 ちょっと、おどろおどろしい悪魔のようだが、魔人族の誰かがモデルなのだろう。

 奥へ入ると、いつもの様に何かを抜ける感じがする。
「ここからが、ダンジョンだな」
 正面から来る、涼やかな風。
「聞いていた話と違いますね」
 シルヴィが首をひねる。ベネフィクスが確かに、階層により世界が違うと言っていた。

 一階は、火だったはずだが、ただ荒涼とした大地に、風が舞う状況だった。

 二キロメートルほど進むと、下へ降りる階段が見つかる。
「サラマンダーとか言うモンスターも、いませんでしたね」
「そうだな。終わった世界ぽいな。テレザ? 大丈夫か、元気がないようだが?」
 後ろから、とぼとぼと元気がなく付いてくる姿が気になる。
「はい大丈夫です」
 そう言って、にへっと。引きつった笑いを見せてくる。

「体調が悪いなら言えよ」
 昨日、調子が悪いと言って、別の部屋で寝た。
 普段なら、何かと理由を付けて、潜り込んでくるのに。

「うん。あっ。はい」
 うーん。調子が狂う。

 テレザは、昨夜叱られた言葉を思いだしていた。
「テレザは、どうしたいの? どうなりたいの?」
「えっ何が?」
「今日だって、道照のお役に立てるのに一目散に逃げるなんて」
「いやほら、事務的なお仕事なんて不得意だし」
「不得意だと言って、逃げたら一生できないじゃない。いいの?」
 じっと見つめてくる、シルヴィ。そして。

「今日は、何の役にも立っていないテレザは遠慮しなさい。務めを果たした私が愛して貰うから。良いわね」
「あっ。えっ」
 その晩、ベッドに転がり、彼女なりに悩んだ。
 シルヴィは一人だから、存分に愛して貰うだろう。
 炎呪たちは、缶詰で居ないし、本当に久しぶりのゆっくりできる時間。
 
 シルヴィに言われたとおり、この所、役にはたっていない。
 三人旅の時には、戦闘で少しは役に立ったが、今は強力な力を持つ炎呪達がいる。
 この所、目立つような出番はない。

「テレザは、どうしたいの? どうなりたいの?」
 その言葉。
 現状では、ただついて回り、ご飯を食べさせて貰い、エッチして貰うだけ。
 それにしたって、子どもの頃から本格的に習っているシルヴィにはかなわない。

「どうしたいんだろう? ただ幸せって言うのは、だめなのかなあ?」
 奴隷で、先の見えない絶望だった。
 獣人の持ち主の言うことには、皆のために逆らえない。
 そんな所から、助け出して貰い、ビクビクしなくて良い街が創られた。

 救世主の道照。種族は違うけれど、関係ないほどの力を持っていた。
 作った本人は、あの時、理解していなかったけれど、誰でも。力が無くても敵を倒せる道具。
 あれは、すごかった。

 実際、軍と戦っても、一方的な蹂躙が、力のない亜人一人でできた。
 それをくれたのが、道照。
 出ていくときに、見つけて追いかけた。この人と一緒に居たい。胸の中はそれだけだった。何とか抱いて貰ったときは、これ以上ない幸せだった。

 確かに役に立ちたいとも思ったけれど、道照は万能過ぎる。
 でも、私、事務仕事はできない。料理と同じ、美味しいものをまずくする天才だと言われた私。

 そんな事を思いながら、とぼとぼ歩く。
 前を歩く二人の後ろ姿。
「楽しそう」
 堂々と、道照の横を歩くシルヴィ。
「いいなあ」
 ぼそぼそと、心が、言葉としてあふれる。
 本人は、聞こえていないつもりだったが、道照のぶっ壊れ性能の体は、そんな事を許してくれない。

 道照は、ぼそぼそと聞こえる台詞から、何かあった事を感知する。
 そう言えば、シルヴィが機嫌が良いのは、昨夜のせいだと分かる。
 だが、あのテレザの昨夜からの態度は、こちらの調子が狂う。

 テレザは、賢くは……ないが、でも力も…… 最近負けているな、料理をすれば炭を作るし、味見をしない。あれ? まあそうだな、元気のないテレザはテレザじゃない。何かが、抜けた気がするし。
 
 今晩聞いてみよう。言わなければ、言うまで超振動を使って。
 脳裏に、炎呪の惨劇が浮かぶ。
 ちょっと控えめに、しよう。
 
 この妙な優しさにより、テレザは地獄を見る事になる。
 道照の気遣いにより、ずっと刺激されるが、いざとなると、止められる。
 そんな地獄を味わう。
 語り継がれる伝説の責め苦として、共有された。

 ちなみに、テレザは何とか無理矢理いってしまい、気を失う。テレザは口をきけなくなったので、理由を知りたがった道照は、シルヴィにも同じ事をした。この時は、テレザは失神していたので知らないが、理由を知った道照により、シルヴィはつまらない事はするなと、叱られ、意図的に最後までいかせてもらえず。地獄を見た。
 自分でしても満足できず。翌日ゾンビのようになっていた。これは、共有されていない。

 そして、時は戻り二階。
 湖面を渡る風は、強く。時に渦を巻く。
「こりゃ危ないな。時たま、かまいたちが発生している。気を付けろ」
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