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第五章 混沌の大陸

第70話 出陣

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「そうだな、命の恩人。道照殿のために一肌脱ごうではないか。むっむろん本当に望まれるなら、まことに脱ぐのもやぶさかではないぞ。道照殿はきっと今代の魔王よりお強いし、心も広いようだし」
 最後はぼそぼそ言ったが、シルヴィとテレザの方から殺気が出る。

「お姉様、なにを仰っているのです。婚約者のいる身で」
「ああ、あやつは、腐れ縁。どうでも良い」
「あの方も四天王のお一人。粗末に扱って良い方ではありません。道照さまは私がご面倒を見ますので」
「なっ。ラウラ。いや、やはり私も自ら手助けせねば駄目だろう。ささ、参りましょう」
「まあ、ありがとう。じゃあ行こうか」
 そう言って、転移をする。

 宿へ戻り、フィーデ=ヨーシュに連絡を頼む。
 何故か部屋で、「連絡を頼む」と言うだけで届くようだ。
 普通にしていたら、仕切りは板戸一枚。他の壁も薄いからな。
 普段は、シールドを張っている。

 さて日課になった、板前に出汁の取り方と天ぷらなどを教えて、他にも蒸し物を教える。
 ただ昆布がない。

 鰹節は、入手が難しそうだし、乾燥椎茸や、小魚の煮干し、軽く炙った川魚の骨等色々と試す。スルメが美味い。

 米も、もう少し精米することを教えて、炊き方を教えた。

 当然大豆があったので豆腐は存在する。
 油揚げや、揚げ出しを教える。
 養鶏もおすすめする。

 そして、温泉で乱入騒動が起こり、寝るときにも騒動が起こる。

 最終的に、魔族姉妹は布団で包み、縛った。

 翌朝、二人を見て、フィーデ=ヨーシュが引きつることになる。

「これは一体?」
「面識はあるのか? 炎呪と妹のラウラだ」
「どうして、簀巻きにされて」
「ああ、こうしないと、少し質が悪くてな」
 そう言って、紐をほどく。
 すると、二人してあわてた感じで、部屋を出て行く。

「どうしたんだ、あれ?」
「本当に、もれそうなのでは」
「ああ、そう言えば。でも途中で幾度も人を騙すから」
 そう幾度となく、トイレと言って、紐をほどくと二人がかりで襲いにきた。
 そのため、その後は無視をしたが、時間的に厳しかったのか?

 しばらくすると、威厳を保ち炎呪とラウラが帰ってきた。
「大丈夫だったか?」
「何がでしょう? 何も問題などありません」
「そうかなら良い。この方は、この国の王になるのかな? ディベス家当主フィーデ=ヨーシュ殿だ」
「炎呪様。そしてラウラ様。ディベス家当主フィーデ=ヨーシュと申します。以後お見知りおきをお願いいたします」
 そう言って、頭を下げる。

「うむ。承知をした。それで、この者達に手助けとは、何をすればよろしいのでしょうか?」
 期待し、キラキラした目が向けられる。

「近くに、ノーブル=ナーガと言うものが当主のテクセレアーグロ家が治める国がある。そこが最近新型魔道具を入手して、今日明日にでも、こちらに向けて進軍してきそうだという話だ。少し縁があって、助けようかと思ってね」

「それは、よい話し。隣国を焼き払えば良いのですね」
「いや国は、焼き払わないで。軍だけで良いから。戦闘にならなければそれが一番良いけれど、少し難しそうだし」
 そう言うと、少しつまらない顔をする炎呪。
 そう言えば、出会い頭に攻撃をしてきたし、基本脳筋なのか?

「どうする? 国境で待てば良いのか?」
「お力添え頂けるのなら、こちらでお待ちください。動きがあればお迎えに上がります」
「分かった。そういう事だ。炎呪もそれで良いな?」
「こちらで待機ですか。承知しました。その間に、何とか本懐を遂げましょう」
「本懐?」
「いいえ何も」
 そうは言ったが、炎呪とラウラの顔が悪代官のそれだ。

 そこから、ノーブル=ナーガの動きは遅く、二週間を要した。
 フィーデ=ヨーシュの話だと、魔石の輸入に手間取ったのではないかという事だ。


 その予想は当たりで、ノーブル=ナーガは焦っていた。
「予想以上に、魔石の消耗が激しい。今回短期決戦で行くぞ。せかしたが、調達が難しいようだ。分かったな。殲滅ではなく脅せば良い。心をおれば下るであろう。それでは出立」
「「「「「おおっ」」」」」

 その動きは、間者により速やかにフィーデ=ヨーシュに届けられる。

「姉さん出番です」
「では行こうか」
 炎呪とラウラに、この一週間料理を教えたり、創作時代劇を語っていた。
 あまりにも、暇だったようだ。

 最初は、桃太郎辺りから教えていたが、思ったより食いついてくるのでどんどんネタがなくなり、惑星と宇宙についてとか教えたが、全く納得をせず、物語の語りに戻った。
 その中で、偉い人が身分を隠して旅をして、悪者を退治する話を気に入ると、自分もすると言い始めた。
 魔族領で、世直し旅が流行るかもしれない。

「では、私も仮面を作らねばならないな。偽名を考えて」
 送って行かれる馬車での会話。

「では、父親を殺され、仮面をつけ復讐の途中に、木馬に乗った好敵手ア○ロと出会うということだな。木馬というのは、ゴーレムなのか?」
「そうだな」
「ふむ。魔力で動けば餌も必要ない。今度カイライに教えてみよう。カイライというのは、無機物を操作できる。一度に数百の軍団を操れる。四天王の一人だ」
 そう言えば、他の四天王のこと、聞いていなかったな。

「へー。他には?」
「四天王か? 他には精神支配が得意なウチョウと、召喚者サンゼンだな」
「召喚者サンゼンと言うのが、お姉様の婚約者。幼馴染みなんですよ。せっかく召喚したモンスターを、お姉様に焼かれまくって強くなったの。あれはかわいそうだった」
「むっ、あれは奴が召喚する者が、ひ弱だっただけ。私のおかげで強くなり四天王になったのだ」
「そう言えば、魔王様もお姉ちゃんに泣かされて強くなったのよね」
「そうだな、あのすべてを跳ね返すシールドは面倒だった。だが今なら負けん。私に勝てるのは、その、道照だけだ」
 そう言って、しなだれかかってくる。
 テレザが尻が痛いと言って、膝の上に座っているせいで、隣が空いたら滑り込んできた。
 
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