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一月二日は、初日の出ではない
第3話 攻撃あるのみ
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「お邪魔します」
彼女はついに、部屋へと侵入をした。
憧れ、夢にまで見た……
「普通ですね」
「そうか? あまり他の奴の部屋とか行かんからな」
彼のお部屋は、シンプルというか何もない。
テレビすらない。
パソコンと、モニター。それとゲーム機。
そして本棚には、びっしりとビジネス書?
ファンダメンタルズって何?
それに四季報?
歳時記?
何か季節絡みの行事表かしら?
結構古風なの?
そして、蛇が書かれた本とか、Linuxってなに?
「適当に座って、椅子じゃなくて座椅子で生活をしているんだが、座布団が」
「お構いなく、このラグがふわふわなので、気持ちが良いです」
「そう良かった」
そう言いながら、彼がカセットコンロを持ってくる。
「お手伝いします」
「もう切って下ごしらえはしたから、持ってくるだけ、飲んでていいよ」
そうすでに、グラスとチューハイは準備されている。
「じゃあ、すみません」
そうして、任せてしまった。
うちのお父さんなんか、座ったら動かないのにすごい。
彼と一緒なら、楽ちんだろうなぁ……
ああ、いけない。
そんな事をしていたら、立ち位置が。
男の人は、料理で、胃袋を掴めとお母さんが言っていたわ。
だけど……
小さなガスコンロがまた。
小さな七輪のような。
「これが美味いんだけどな、煙が結構出るんだよ」
そう言って、窓を少し開けて、そちらに向けて扇風機が回る。
でもまあ、エアコンとホットカーペットで、そんなに寒くはない。
そして、小さなコンロの上に、塩胡椒を振った鶏モモと、ソーセージがのる。
煙は言うほど、そう思っていたがある程度焼けて、油が落ち始めると、結構バフッと上がる。
「あっこの匂い、時たま匂う美味しそうな匂い」
「あっ、下でも匂った? 悪い」
「いえ美味しそうだから、どこから匂うのかと思って、そうかそうだったんだ」
そう言うと、準備が出来たのか隣へ座ってくる。
「あっ、注ぎます」
「うん? ありがとう。それじゃあ…… お互いに家族に置いて行かれて淋しい年末に乾杯」
「そうですね。でも同士がいて良かったです。うちで何日も一人なんて」
ふと考える。
「大掃除するしかなくなるね」
「そうですね。全部引っくり返す勢いで。ははっ」
そして静かに、宴会は始まっていく。
これが、Day1。
チッチッチと、時は過ぎ。
何も出来ずに、私は帰ることになる。
だって……
慣れていないし、恥ずかしいし……
洗い物はした。
「それでは、ごちそうさまでした」
明日こそは、もっと飲まねば。
状態を進めるには…… そう理性を飛ばそう。
だけど、最初っから襲うのは違うわよね。
勝手に言い訳を考えてしまう。
でも襲ってくれないのはどうなの?
私って、魅力がない?
明日は、服装ももう少し考えよう。
Day2。
「お買い物、行きません?」
強制デート作戦。
「悪い、昨日言っていて、気になりだしたんで掃除を始めてしまって」
「そうですか、それじゃあ」
帰り始めてから、思いついた。
手伝えや私。
彼が大変なんだから……
もう……
「お疲れ様です。飲みません? 家にいても淋しくて……」
「ああ良いけど、それ寒くないの?」
「ええまあ」
あまり持っていないミニスカートに、もこもこセーターのオフショルダー…… は流石にちょっと、なのでワンショルダータイプ。
気合いを入れすぎて上着を忘れた。
ただ、昨日の膝、ぶつけたところにまっすぐ線が入って青くなっている。
そして、飲めなかったワイン。
買い直してきた。
美味しくて、グビグビいけるらしい。
今日こそは……
「あっ、昨日の? 膝の所、青くなっているね」
「そうなんですよ」
そう言いながら、片膝を持ち上げる。
ふふっ、見るが良い。
もう勢いしかない。
見せるつもりだから、パンツくらい見て。
クロのスケスケ、通販で買ったの。
そう、ぺったんと座っていて、片膝をあげる。
彼は膝を見ていたから、この状態……
―― 彼…… 見てないし……
ああ、おつまみを取りに行くの、マメね。
彼女が来るのは良いのだが、慣れていないせいか、それとも一人が長かったせいか、目のやり場とか、奇妙に近い距離感とか困ってしまう。
だが調子に乗ると、昨今はすぐにセクハラとなる。
一度の間違いで人生が終わる。
気を付けねば。
そう彼は彼で、理性と戦っていた。
ハラスメントは確かに悪いが、昨今の風潮がここまで来ると、まともな恋愛が出来にくくなる。
男的には、ミスイコール社会的な死なのだ。
一夜干しのスルメを焼きながら、ぼーっと考える。
味は、三杯酢と別皿にマヨ七味。
ベースで塩味が効いているし、幾らでも飲める。
別皿で、鶏皮のパリパリ焼きと、身の方はそぎ切りにしてとり天を作る。
鳥胸だからヘルシーだ。
安いときには、ササミを使う。
ササミの筋は、すこし切り開いてフォークを使い引っ張ると比較的簡単に取り除ける。
後は、せせりを少し細かくして、塩胡椒で炒めたのも美味い。
せせりは、たまに骨が残っているので、気を付けて下ごしらえが必要。
ああ料理をしていると、癒やされる。
キャベツを、ざく切りにして、ポン酢。
「あの…… 糸綯さん」
「はい?」
「私といて、楽しくありませんか?」
「いや…… そういう訳じゃなく、そうだなプライベートで人が居ることに、慣れていないせいなのかな、こう…… 距離感が判らないだけだから」
距離感が判らない?
どういう事?
確かに、じわじわ近寄ると、じわじわと逃げる。
私の方も距離感が判らない。
でも、なんとなく行けと、背後のご先祖様が囁いている気がする。
「あの、女の方から言うのもあれなんですが…… す……」
「ああこれ、三杯酢。イカにはこれを使ってね」
「はい、ありがとうございます」
そして……
「ごちそうさまでした」
なぜなのか……
彼女はついに、部屋へと侵入をした。
憧れ、夢にまで見た……
「普通ですね」
「そうか? あまり他の奴の部屋とか行かんからな」
彼のお部屋は、シンプルというか何もない。
テレビすらない。
パソコンと、モニター。それとゲーム機。
そして本棚には、びっしりとビジネス書?
ファンダメンタルズって何?
それに四季報?
歳時記?
何か季節絡みの行事表かしら?
結構古風なの?
そして、蛇が書かれた本とか、Linuxってなに?
「適当に座って、椅子じゃなくて座椅子で生活をしているんだが、座布団が」
「お構いなく、このラグがふわふわなので、気持ちが良いです」
「そう良かった」
そう言いながら、彼がカセットコンロを持ってくる。
「お手伝いします」
「もう切って下ごしらえはしたから、持ってくるだけ、飲んでていいよ」
そうすでに、グラスとチューハイは準備されている。
「じゃあ、すみません」
そうして、任せてしまった。
うちのお父さんなんか、座ったら動かないのにすごい。
彼と一緒なら、楽ちんだろうなぁ……
ああ、いけない。
そんな事をしていたら、立ち位置が。
男の人は、料理で、胃袋を掴めとお母さんが言っていたわ。
だけど……
小さなガスコンロがまた。
小さな七輪のような。
「これが美味いんだけどな、煙が結構出るんだよ」
そう言って、窓を少し開けて、そちらに向けて扇風機が回る。
でもまあ、エアコンとホットカーペットで、そんなに寒くはない。
そして、小さなコンロの上に、塩胡椒を振った鶏モモと、ソーセージがのる。
煙は言うほど、そう思っていたがある程度焼けて、油が落ち始めると、結構バフッと上がる。
「あっこの匂い、時たま匂う美味しそうな匂い」
「あっ、下でも匂った? 悪い」
「いえ美味しそうだから、どこから匂うのかと思って、そうかそうだったんだ」
そう言うと、準備が出来たのか隣へ座ってくる。
「あっ、注ぎます」
「うん? ありがとう。それじゃあ…… お互いに家族に置いて行かれて淋しい年末に乾杯」
「そうですね。でも同士がいて良かったです。うちで何日も一人なんて」
ふと考える。
「大掃除するしかなくなるね」
「そうですね。全部引っくり返す勢いで。ははっ」
そして静かに、宴会は始まっていく。
これが、Day1。
チッチッチと、時は過ぎ。
何も出来ずに、私は帰ることになる。
だって……
慣れていないし、恥ずかしいし……
洗い物はした。
「それでは、ごちそうさまでした」
明日こそは、もっと飲まねば。
状態を進めるには…… そう理性を飛ばそう。
だけど、最初っから襲うのは違うわよね。
勝手に言い訳を考えてしまう。
でも襲ってくれないのはどうなの?
私って、魅力がない?
明日は、服装ももう少し考えよう。
Day2。
「お買い物、行きません?」
強制デート作戦。
「悪い、昨日言っていて、気になりだしたんで掃除を始めてしまって」
「そうですか、それじゃあ」
帰り始めてから、思いついた。
手伝えや私。
彼が大変なんだから……
もう……
「お疲れ様です。飲みません? 家にいても淋しくて……」
「ああ良いけど、それ寒くないの?」
「ええまあ」
あまり持っていないミニスカートに、もこもこセーターのオフショルダー…… は流石にちょっと、なのでワンショルダータイプ。
気合いを入れすぎて上着を忘れた。
ただ、昨日の膝、ぶつけたところにまっすぐ線が入って青くなっている。
そして、飲めなかったワイン。
買い直してきた。
美味しくて、グビグビいけるらしい。
今日こそは……
「あっ、昨日の? 膝の所、青くなっているね」
「そうなんですよ」
そう言いながら、片膝を持ち上げる。
ふふっ、見るが良い。
もう勢いしかない。
見せるつもりだから、パンツくらい見て。
クロのスケスケ、通販で買ったの。
そう、ぺったんと座っていて、片膝をあげる。
彼は膝を見ていたから、この状態……
―― 彼…… 見てないし……
ああ、おつまみを取りに行くの、マメね。
彼女が来るのは良いのだが、慣れていないせいか、それとも一人が長かったせいか、目のやり場とか、奇妙に近い距離感とか困ってしまう。
だが調子に乗ると、昨今はすぐにセクハラとなる。
一度の間違いで人生が終わる。
気を付けねば。
そう彼は彼で、理性と戦っていた。
ハラスメントは確かに悪いが、昨今の風潮がここまで来ると、まともな恋愛が出来にくくなる。
男的には、ミスイコール社会的な死なのだ。
一夜干しのスルメを焼きながら、ぼーっと考える。
味は、三杯酢と別皿にマヨ七味。
ベースで塩味が効いているし、幾らでも飲める。
別皿で、鶏皮のパリパリ焼きと、身の方はそぎ切りにしてとり天を作る。
鳥胸だからヘルシーだ。
安いときには、ササミを使う。
ササミの筋は、すこし切り開いてフォークを使い引っ張ると比較的簡単に取り除ける。
後は、せせりを少し細かくして、塩胡椒で炒めたのも美味い。
せせりは、たまに骨が残っているので、気を付けて下ごしらえが必要。
ああ料理をしていると、癒やされる。
キャベツを、ざく切りにして、ポン酢。
「あの…… 糸綯さん」
「はい?」
「私といて、楽しくありませんか?」
「いや…… そういう訳じゃなく、そうだなプライベートで人が居ることに、慣れていないせいなのかな、こう…… 距離感が判らないだけだから」
距離感が判らない?
どういう事?
確かに、じわじわ近寄ると、じわじわと逃げる。
私の方も距離感が判らない。
でも、なんとなく行けと、背後のご先祖様が囁いている気がする。
「あの、女の方から言うのもあれなんですが…… す……」
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「ごちそうさまでした」
なぜなのか……
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