泡沫の夢物語。-男と女の物語。短編集-

久遠 れんり

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譲れない戦い

第4話 品定めと改造

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 連絡先の登録に四苦八苦。

 使い慣れないスマホは面倒だ。
「だー。これ買って何年だ?」
 思わず聞く。

「仕事をしだしてからだから、二年です」
 二年。なら多分丁度だな。

「こだわりはあるのか?」
「いえ別に、一番安かっただけですから」
 そう言って、彼女はきょとんとした顔をする。

「よし、買いに行くぞ」
 昼間のビールが、痛み止めと良い感じに混ざり、少しふわふわとした感じで気持ちが良い。ちょっとこの酔い加減が危ないと思いながら、テンションの上がった俺は、強引に彼女の手を引いていく。

 スマホを買って、うーんと考え、美容院へ。
 その後エステ、そして服から靴まで一式。
 手を入れるごとに、変わっていく彼女が楽しい。
 ついつい、あれもこれもと、手を尽くす。

 もう、夜の八時。
「だあ疲れた」
 個室の焼き肉屋。
 買い込んだ服とかは、一度家に置いてきた。

 彼女はもう少し、お肉をつけた方が良いですよね。
 エステでそう言われて、やっぱりとなっとく。

 だから、肉。
 分かりやすく。

「はい、お疲れ、出逢いに乾杯」
 疲れで、少し投げやりな乾杯。
「えっ、あっはい。出逢いに乾杯。これからよろしくお願いします」
 そう言って、彼女はおどおどしている。

 携帯の時から、「えっなんで」とか、そんな事しか言わないので、つい宣言をしてしまった。

「俺の物になったのだから、見合う女になれ、そして従え。お前は誰もが振り返る美人となるんだ。いいな」
「えっはい。俺の女? 美人?」
 半信半疑だったが、美容院からエステ辺りで表情が変わってきた。

 服を買いに行って、きちんとした下着と、付け方を習い、褒め殺されながら服を選んで買ってきた。
 当然靴も、あわせるために買って、小物にアクセサリー。

 軽く、今日だけで二百万ほど使った。
 アイツのことがあったので、下品だが使った金額をすべて彼女に認識をさせた。

 もう少し安かったが、アイツにもたしか同じようなことは、したんだけどなぁ。

 まだだ、アイツととはまだ会うな。
 会うなら、こいつをもう少し磨いてからだ。
 ついでに、普段適当な格好をしていたが、俺の方も見繕った。

 バカみたいにぼーっと待つのもいやだから、同じコースを受けたんだよ。

 そう、ため続けていた金の、本当に一部を使った。
 途中で、彼女が金額で引っくり返りそうになっていたので、口座を見せたら腰を抜かされた。
「なんで、何十万単位のお金を使ったのに、数字が変わらないんですか?」
「ああ、今の一瞬で、含み益が戻った」
 当然嘘だ。だか彼女の驚く顔がおもしろく、揶揄ってしまう。

「えっ?」
「買い物をしている間に、二百万稼いだ」
「へっ??」

 もう彼女の思考は、その辺りで壊れたらしい。
「十万円で、死のうとか色々思っていたのに…… 仁さん変です」
 そう言って、結構高いワインを飲み干す。

「今飲んだので十万だ」
「ひっく」
 驚いてしゃっくりがついた。

 まあまあ、あれもこれも驚きながら満足をした様だ。

 明日は休みだから、家に泊まる事になった。
 ご機嫌で、多少ふらつきながら家へ帰る。

 そして、彼女の計略かも知れないが、一緒の風呂へと引っ張り込まれる。

「もう、離れませんからね。きちんと最後まで飼ってください」
「まだやめられるぞ、それで良いのか?」
 そう言うと、彼女は首を振る。
「もう無理です、すでに返せません。体で払います」

 そう言って、彼女と繋がった。

「だあぁ、やっぱりもう少し太れ、骨が刺さる」
「ええっ!!」
 しかし、知らなかったが、風呂場で見ると、彼女は全身脱毛していた様だ。
 つるつるなのが少し新鮮。フルコースだとそうなるのか……

 
 私は朝、見慣れない天井を見ながら目が覚めた。横には彼が寝ている。
 夢のような一日だったけれど、夢じゃなかった。
 借金分は、結局全部払って貰った。
 まあ、そうは言っても残っていたのは、あわせて二十万円程度。
 少し頑張れば返せる金額。

 だけどその後よ……
 のろのろとベッドから這い出して、見つめるのは大きな姿見に映る自分。

 確かに、体は貧相だけど、髪の毛とエステのおかげか顔が変わった。
 眉とかをそろえるだけで、全然変わってしまった。
 お店の人達も、言ってくれた。
「彼氏さんが言うように、美人になりますよ。良いですよね。あんな太っ腹な彼氏」
 そう彼まで、褒められるとなんだか嬉しい。

 おっといけない、鏡に魅入って漏らしそう。

 リビングには、脱ぎ飛ばしたバスローブが散乱。
 昨夜の事を思いだして、つい恥ずかしくなる。
 お母さんが、騙されても騙されても男の人を頼るのがいまなら分かる。
 誰かと抱き合い、肌を重ねるのが、あんなにも安心ができることだと、私は知らなかった。

 彼には、お金が欲しくて、声をかけた。
 でもその後、この人は豹変。
「おい、俺のために働け」
「へっ?」
「良いから来い」
 そう言って色々なところを連れ回されて、私は変わっていった。

 高そうな美容院。謎の施設だったエステも経験をして、服を買いに行った頃には、今までなら、きっと相手にしてくれなかった店員さんが、三人もつきっきりで着せ替え人形状態。

 下着はもちろん、靴まで。
 その時、当然の様に店員さんは聞く。彼氏さんこれは如何でしょう? などと言われて、幾度も下着姿を見られた。

 そのどれもが、ビックリするような値段。
 うちに帰って、どうやって保管をするのか、悩んでしまう。

 そう下着も、今までと全然違う。
 補正が入り、体型も随分変わるのだが、よせる肉がない。もう少しお肉をつけましょうと言われる。

 そして胃がビックリするようなお肉を、強引に食べさせられ、「もう無理です」そう言っても、「食え、太れ」彼はそう言って、ビックリするような値段のワインで流し込む。

 初めては当然だし、あげたけど、やっぱり太れと言われた……
 骨が刺さるんだ……
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