泡沫の夢物語。-男と女の物語。短編集-

久遠 れんり

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好きって何?

第1話 おかしな俺

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 俺は、好きとか愛しているが分からない。

 物には、拘ることは有るし、好きな食い物もある。
 だけど、どうやっても人に執着ができない。

「あなたは、私の事が好きじゃ無いんでしょ」
「あなたは、私を見てくれていない」
「あなたは……」

 中学校の時から、なんだか告白された。
 優しそうだから、とかおもしろいから。

 だけど最後は、『私を見てくれない。』

 それを言われて、気にするようにしたら、縛らないでときたもんだ。

 そう俺は、ある程度自由に暮らしたい。
 だから相手を縛らない。
 すると淋しいとか、見てくれないとか……

 おかげで、二〇歳の頃には、女という生き物に、もううんざりしていた。

「女が欲しいぃ」
 ぼやいているのは友人のユージン。
 嘘だ、れっきとした日本人裾野 裕樹すその ひろき
 彼は普通だが…… 普通だ。

 幾人か、紹介をしたがすぐフラれる。
 彼の場合、決め言葉は、普通すぎるとフラれるらしい。
 裏を返せば、つまんないと言う事だろう。

峡弥きょうやぁ、何とかしてくれぇ」
 そう俺は、狭間 峡弥はざま きょうや
 タイトでピーキーな男。

「おまえ、彼女が欲しいのか? やりたいだけか?」
「―― どっちだろう?」
「知るか!!」

 普通の男がやかましいから、安い居酒屋さんへ俺達は出て行く。
 仕事? 大学生。

 店内に入り、生活に疲れた感じのお姉さんを探す。
 なるべく、ストレスに醸され、やさぐれた感じも見える方がいい。
 今日は金曜日、たぶん落ちていると思うが……
「いないな。次行くぞ」
「えっめし。酒」
「鮭の躍り食いするから、我慢しろ」
「えー。生臭くない?」
「生臭い」
 そう言うと、嫌そうな顔になる。

 結局、腰を落ち着けず二時間くらい。
 リア充達が引けた頃、鞄を持ち疲れた人を発見。

 近くの席に陣取る。

「かんぱーい。やっとだよ」
 ふつおが文句を言う。
 もう裕樹じゃなくていい、これからふつおと呼ぼう。

「結構積もっているな。チューハイ三杯目」
「んあ、そんなに飲んでないぞ」
「お前は別にいい」

 そうターゲットを見ている。
 カップルを見つめて、ため息。
 当たりかな?

 出る様なので追いかける。
 残りの唐揚げを、ふつおの口に詰め込む。

 スナックかショットバーへ……
 駅かよ、積もっているんだから、もっと飲めよ。

「仕方ない」
 背後から近寄る。
「そこのお嬢さん」
「はい?」
 俺は目一杯の笑顔。

「もう帰るの?」
「えっええ」
「俺達見ての通り、男二人でさ、時間があるなら一軒行きません?」
「キャッチ? ですか?」
 ジト目を頂く。

 だが、そのくらいではめげない。
「そう見える? 単にお気楽大学生です。ただ、せっかくのかわいい顔、そして、美しい瞳がストレスで潤んでいるのが見過ごせなくて…… その、魅力的な瞳の下。しがみついてる子熊を退治できるのに。きっとそうすれば、君はもっと魅力的になれる」
 真顔でじっと見つめる。

「変な人」
 変な人いただきました。

「一軒だけでいいですから、俺らもあまり金がないし」
 そう言うと、じっと見てくる。

「良いわよ、自分の分くらい、自分で出すわ、どこへ行くの? ホストなら帰るわよ」
「明朗会計のパブです。ささ、お嬢様お手をどうぞ」
 手を差し出す。

「えっ?」
「鞄、重そうですし」
 そう言うと、ちょっとむっとする彼女。

「ああ良いの。慣れているから」
「そうですか」
 まあ逃げられても困るだろうし。
 務めて常識的、良い感じ。

 でまあ、行きつけのパブへ。

「いらっ…… おまえらか、つけ払え」
「へーい。出世して払います」
「何時出世するんだよ?」
「さあ、そんな事俺に聞かれても? 上司に聞いてください」
 肩口で、両手を広げる。

「おま、まだ就職もしてないだろうが」
「そうですね。困ったもんだ」
 そう言うと、呆れた顔をされる。

「いつもので良いのか?」
「ええ。ボックス良い?」
「ああ、適当に座れ。予約なんぞ無いから」
 一応決まりは守る。

 バーとかパブ。
 案内をされるまで座ってはいけない。
 ボックスはチャージが少し高め。
 予約とかの事もあるので、一応使っていいかを聞く。

「そちらは初めてかな、いらっしゃいませ。何になさいます?」
「ええと、初めてでよく分からなくて」
「甘口とか、フレッシュ系とか、キリリと大人のダイキリとか?」
「おい、キョウ、じゃますんな。まあ初めてだと好みが分からないから聞くんだけど、どんな感じが良いですか?」
「悩むなら、トニックでも飲んで考えれば良いさ」
「トニック?」
 何それな感じ、本当に知らない様だ。

「ちょっと苦いソーダ、きなこの粉がベース」
「また嘘を教える。キナから作るキニーネだが国産には入っていないはずだ。きなこは大豆粉だ」
 そう言われて、彼女がおどろく。

 日本の古来の物は、ほぼ大豆や小豆だ。
 豆腐やなんやかや。
「俺らも最初は、ジントニックからはいるんだよ」
「じゃあそれで」
 そう注文をして、席に座る。

「基本、グラスのロングはゆっくり飲んでも良いけどカクテルグラスなどのショートはすぐに飲むこと、カクテルは混ぜてあるからバランスが崩れる。せっかく口当たりが良いように空気を含ませても抜けるとキツくなる」
「へえ、大学生なのに、どんだけ飲み歩いたの」
「飲むのは此処くらいだから、一軒」
「違うわよバカね」

「キョウと真面目に話すと、頭が痛くなるから、適当に流した方がいいよ」
「ひどいなマスター」
 よし、笑っていただきました。

「ではまあ、出逢いに乾杯……」
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