泡沫の夢物語。-男と女の物語。短編集-

久遠 れんり

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偶然の出逢い

第2話 コイツは本当に……

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 しばし見て、寒くなってきたためワインを温める。

 寒い体を温めるため、白ワインの甘口。
 さらに、ハチミツを少し。
 まあ沸かすだけで簡単だし、アルコールも半分程度になる。
 シナモンを入れたり、レモンスライスを入れたりするが、外で飲むならそこまでしない。

 またいきなり声がかかる。
 ビクッと驚く。

 彼女は寝ていたかと思ったのだ。
「それ、なんですか?」
「ホットワイン、白の甘口だけどね」
「それ、まだあります?」
「ああ、まあ作れば…… 分かった」
 暗いが、彼女の欲しそうな雰囲気が分かる。

「トイレに行きたくなっても知らないぞ」
「大丈夫です」

「―― ごめんなさい」
 おれは、無言でテーブル上においた、LEDランタンを彼女に渡す。

 だが彼女はそれを受け取って、固まっている。
「えーと、一人で? ですか?」
「なに? 放尿を見せる趣味とかあるの?」
 少しイラッときて聞く。

 何しろ彼女は、 言っては悪いがジャマな存在。
 そう関わったが、見ず知らずの存在なのだ。

「見たいですか?」
「はっ?」
「いえ、男の人って、結構そんなビデオとかあるし……」
「拾う知識がマニアックすぎ、普通はそんな趣味はない」
「えっ、そうなんだ?」
 一度彼女から、じっくりと男に対しての見識を聞いてみたい。

「じゃ、じゃあ、無理矢理咥えさせてみたりとか……」
「それは少し興味があるかもな」
 安心したようだから、突っ込む。

 ライトの明かりの中、嫌そうな顔が見える。
「飲むとまずいけど、美容的にも良いらしいよ。ほら、元々下からだって吸収するし、出入りするところは粘膜だから、口と一緒。お酒とかも、下から入れると吸収が早いから、良い感じで酔うらしいし」
 これは本当、たまにそれで急性アルコール中毒にもなるとか。
 何かで読んだ。

 それにしても、大丈夫なのか?
「トイレ大丈夫?」
「いえ、我慢できないから、早く行きましょう」
 そう言って、強引に手を引かれる。

 そして、公衆トイレがあるが、当然過疎施設。
 真っ暗である。
「はやく、漏れるから」
 そのまま引っ張って行かれて、個室まで連れ込まれる。
「いやさすがに」
「怖いんです。そこにいて。耳は塞いでください」
「えー」
「でも手を……」
 彼女が、手を出してくる。

 おれは、左手でランタン。
 右手で彼女の手を繋ぎ、どうやって耳を塞げと……

 目の前には、しゃがみ込んでいる彼女。
 和式はあまり使わないのかふらふらしている。

 意外と勢いのいい音が聞こえる。
 そしてだ、本当に使い慣れていなかったらしく、下着とスカートを汚す。

「もっと勢いよくおろすべきだったし、スカートも捲るべきだったね」
 多分俺がいたから、流石に躊躇をしたのだろう
「どうしましょう?」

「バスタオルは流石に無いけれど、スポーツタオルなら車に」
「貸してください」

 そして、ランタンを照らし、スカートと、パンツを洗う様子を見ることに。
 そんな間に時間は過ぎ、天体ショーは終了となる。

「三時、もう終わりだな。俺はもう寝るけど…… 判った」
 彼女も入るなら、機材は積めない。
 カメラだけは、助手席にいれ、彼女は中へ。

「うわあ、結構広いですね」
 喜ぶ彼女。

 俺は仕方なく運転席の座席を倒す。
 本当なら、もう帰りたいが、ホットワインのおかげで帰れない。
 色々考えると、飲むんじゃ無かった。

 寒いので、エンジンを掛けて、エアコンをつける。
「もう寝ました?」
「いいや……」
 そう答えると、彼女は話し始める。

「私って、小学校の頃、皆より早く成長したんです」
「ふーん」
「なんですその興味なさそうな」
「興味ないから」
「ぐっ。いじわる。で…… でっそう、早く成長が終わっちゃって」
「そうなんだ」
 そこから無言。

「でも、成長が早いからか、エッチなことに興味があって、色々と調べたんです」
「ふーん」
 ガサゴソと寝返る音がする。

「でね、一人エッチとか、皆より多分早くて」
 思うところはあるが、適当に相づちをする。

「そうなんだ」
「ほら、中学校の最後くらいで、皆そんな話で盛り上がってくるでしょう」
「そうかなあ、もちょっと早くない?」
「そうなんですか?」
「たぶん」
 記憶では、中二くらいだった記憶がする。

「えーと、そうそう。それで調べて、エッチビデオとかも沢山見たんですが、なぜか、私モテないんです」
「そうなんだ」
 原因は、色々ありそうだが、あえて突っ込まない。

「そうなんです。男の子も、なんか、高校の時も、なんだか子ども扱いで、恋愛対象から外れて、妹とかそんな感じで」
「ふーん」
「それで結局、今まで相手がいなくって、親からはぼちぼち何とかしないといけないから、見合いでもって、一度はしたんですけどね」
「見合い? 今時、珍しいね」
「そうですかね? でもまあ、実際に会ったら、えーって言う感じでご破算になって、それで今回、マッチングアプリとか登録して、まあ、私の体に興味を持ってくれたのは嬉しいんですけれど、あんな感じで強引だと怖くって」
「まあ、そうだろうねえ」
「その…… 星野さんて、彼女とか…… います?」
 気が付けば、後ろから運転席横に顔が来ている。

「いや居ないけれど、どうして?」
「いやあ、星を一人で見に来るって、淋しいでしょう。付き合ってあげても良いなあって」
 うん、コイツは無し。

「残念だが、喧嘩でも売ってる? 歩いて帰る? 太陽が出てる方向が南だから、そっちに行けばきっと帰れるよ。山も谷も真っ直ぐ突っ切って。がんばれ」
 しばし無言。

「そんなこと言うなら、警察に行きますよ」
 考えた結果、この台詞だよ。

「はっ?」
「襲われたって」
「襲ったのは別の奴だろう」
「あの人より、星野さんの方が優しいし…… 好み的にも」
 なんか小声でブチブチ言い始めた。

 しかし、えん罪はこうやって作られるのか。
 今の会社に未練は無いが、再就職できないのは辛いな。
「だから…… ねえ……」
 そう言って、彼女は俺の手を取る。

 湿ったところへ……
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