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真夏の夜にありそうな話し
第2話 軽い男と軽い女
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啓博は、翔に連絡を始める。
最初はいけなくなったと伝える。
「いやあ、だけど仕方が無いっしょ」
「俺はどうすんだよ」
「先輩も女を現地調達で、そしたらウインウインすね」
適当なことを言って切ろうとするが、切ってくれない。
「馬鹿野郎、なんだよそれ。此処でナンパしろって?」
うーんまあ、仕方が無い。ばらす。
「わりい先輩、そっちへ行く途中に飲みに誘われちゃって」
「お前、先約は俺だろ」
「いやあ、やっぱり飲むなら女の子の方が。そんじゃあ」
ぶちっ。ツー。
適当な応対で、翔が好美を脅かしてしまった頃、紀子も適当な文を好美に向けて垂れ流す。
今から行くのは、あそこのビアガーデンだけど、好美の性格なら帰るでしょう。
そう思っていた。
自分と相手がブッチした相手が、両方とも顔を突き合わせて隣の席になるなど考えてもいなかった。
そして、紀子の好みが、翔のような真面目タイプだから少しややっこしくなる。
「あー。ここか?」
啓博はまさかここへ来るとは思っていなかった。
翔はきっと中で飲んでいるだろう。
自分に腹を立てながら。
まあ会場は大きいし、大丈夫だろ。
会場は大きくとも、時間と共に席は埋まる。
忖度されたテント下から、順に埋まっていき、見通しの悪い端の方まで。
当然一見さんの、二人席。
位置は近い。
すでに、翔は飲んでいた。
ちょっと影のありそうな女と……
「えっ。なんでやばっ」
好美があわてる。
ビールの泡でつけた髭では、変装にならなかった様だ。
「紀子ぉ、偶然ねぇ。デートでわざわざここに来たのね」
すでに酔いから、口の暴走が少し始まっていたようだ。
その時、翔は悩んでいた。
入ったときは、暗い感じの女の子だった。
飲む度にテンションが良い感じとなり、結構話もしやすいぞ…… と。
風に吹かれた髪を、彼女がさらっとなで上げる時、わずかに顔が上を向く。
普段の俯いたときの顔は暗いが、上を向いた二重の目は、顔立ちをはっきりとさせて、そう美人に見える。
さっき、啓博が軽そうな女を連れてきたのは見た。
だけど、二十分前とは違い、少しだけ感謝をしていた。
ふーんこの子良いかも。
外でモテなくても良い。
誰かと付き合っているんだろうか。いや無いだろう。
そんな失礼な考察に沈んでいる頃。
この二人。
うーん。フラれたのと、生理前でついムラッときて啓博を誘ったけど、先輩さん良いかも。
真面目そうだし、体が結構しっかり?
特別に運動をしているわけでは無く、納品トレーニング。
ただで出来るし、感謝もされる。
荷物を持って階段ダッシュとか、健康に良いぞぉ。
きっと、機嫌の良いときの翔なら、そんな馬鹿な説明をしてくれただろう。
だが今は、好美の前で世話を焼いている。
そう、こっちのテーブルとは逆。
と言うか、何もしないもの同士だと、牽制のしあい。
「なんか持って来てよ」
「んあっ。おまえ取ってくるなら、俺の分も持って来りゃ良いだろ。ビールもお代わり」
これだよ。使えない男。
エッチは気合いを入れるんだけど、それ以外は駄目なんだよね。
それに比べて、楽しそうに話しながら、それなら今度は少し甘めの物をとか、タンパク質と野菜をとかって…… いいなあぁ。
そう思いながら、スマホを操作。
『席変わろ。OK?』
んらーい。
着信音は確かにした。
だが、無視をされる。
それどころか、好美の顔が色っぽく見える。
んまっ。何ということざましょ。
女って、男で…… それも一瞬で顔が変わるんだ……
それに気が付き驚愕をする。
『その男、何者? 情報送れOK?』
んらーい。
当然無視。
それどころか、サイドボタンをスライド。
マナーモードに。
さらにバッグイン。
見ませんの意思表示がすごい。
それによく見れば、椅子同士までなんか距離が近くなってる。
うーん。
このテーブル、予約の問題で二人掛けだが、元々は、四人までいけるはず。
好美め、生理現象にはかなわなかったようだ、さっきまでもじもじしながらも、彼の隣を離れまいと頑張っていたが、流石にそれは駄目だろう。
席を立ってトイレへと急ぎ足。
このすきに、声をかける。
「あのー。好美とどういう知り合いですか?」
思い切って声をかける。
とーぜん、よそ行きオクターブ。
「ああ。君の前で座っている馬鹿に、デートだからとドタキャンされてね。同じくドタキャンされた彼女が困っていたから誘ったんだ。まさか君らが知り合い同士で、それもここに来るとは思っていなかったが」
ああ駄目だ、声が尖ってらっしゃるぅ。
それに、こんな方との約束をブッチするなんて、啓博めぇ。
「……」
あたいが誘ったんだっけ?
「何か持って来ましょうか?」
「いや大丈夫。せっかくのデートなんだろう。楽しんで」
いやあぁ、尖ってらっしゃるぅ。
はっそうだ。
アイス、確かここにはアイスが……
探したが棒タイプのアイスも、フランクフルトも無かった。
そうおバカなことに、彼女はテクを見せて誘おうと考えていた。
さて、そんな変な行動を見せる紀子。
それと同時に、気がつけばいなくなっていた、啓博。
おやあぁ、翔さんの連れている女。結構良いなあ。
そんなことを考えて、トイレに行く彼女を追いかけた。
だが人目は多い。
追いかけて、トイレとか絶対無理だな。
出てきたところを連れて、外へ出るかぁ?
そう、彼はそんな不埒なことを考えた。
だが、酔っ払い。テンションの上がった彼女は、危なかった。
そう躊躇をしなくなる。
トイレから出て、幸せな席に戻ろうとするのをジャマする奴。
きっと相手が、警備員や警官でも彼女は躊躇をしなかった。
手を引かれるままに回転し、的確に眉間へと肘を撃ち込む。
手が離れれば、鼻歌交じりに席へと戻っていく。
そこには、躊躇、ためらい、手加減。そんな物は一切無かった。見事な無駄の無い動き。
頭の中、その思いは一つ。あの席に帰ろう。
そうその時、彼女の中では、他のすべてが塗りつぶされて、幸せという言葉が花開いていた。
最初はいけなくなったと伝える。
「いやあ、だけど仕方が無いっしょ」
「俺はどうすんだよ」
「先輩も女を現地調達で、そしたらウインウインすね」
適当なことを言って切ろうとするが、切ってくれない。
「馬鹿野郎、なんだよそれ。此処でナンパしろって?」
うーんまあ、仕方が無い。ばらす。
「わりい先輩、そっちへ行く途中に飲みに誘われちゃって」
「お前、先約は俺だろ」
「いやあ、やっぱり飲むなら女の子の方が。そんじゃあ」
ぶちっ。ツー。
適当な応対で、翔が好美を脅かしてしまった頃、紀子も適当な文を好美に向けて垂れ流す。
今から行くのは、あそこのビアガーデンだけど、好美の性格なら帰るでしょう。
そう思っていた。
自分と相手がブッチした相手が、両方とも顔を突き合わせて隣の席になるなど考えてもいなかった。
そして、紀子の好みが、翔のような真面目タイプだから少しややっこしくなる。
「あー。ここか?」
啓博はまさかここへ来るとは思っていなかった。
翔はきっと中で飲んでいるだろう。
自分に腹を立てながら。
まあ会場は大きいし、大丈夫だろ。
会場は大きくとも、時間と共に席は埋まる。
忖度されたテント下から、順に埋まっていき、見通しの悪い端の方まで。
当然一見さんの、二人席。
位置は近い。
すでに、翔は飲んでいた。
ちょっと影のありそうな女と……
「えっ。なんでやばっ」
好美があわてる。
ビールの泡でつけた髭では、変装にならなかった様だ。
「紀子ぉ、偶然ねぇ。デートでわざわざここに来たのね」
すでに酔いから、口の暴走が少し始まっていたようだ。
その時、翔は悩んでいた。
入ったときは、暗い感じの女の子だった。
飲む度にテンションが良い感じとなり、結構話もしやすいぞ…… と。
風に吹かれた髪を、彼女がさらっとなで上げる時、わずかに顔が上を向く。
普段の俯いたときの顔は暗いが、上を向いた二重の目は、顔立ちをはっきりとさせて、そう美人に見える。
さっき、啓博が軽そうな女を連れてきたのは見た。
だけど、二十分前とは違い、少しだけ感謝をしていた。
ふーんこの子良いかも。
外でモテなくても良い。
誰かと付き合っているんだろうか。いや無いだろう。
そんな失礼な考察に沈んでいる頃。
この二人。
うーん。フラれたのと、生理前でついムラッときて啓博を誘ったけど、先輩さん良いかも。
真面目そうだし、体が結構しっかり?
特別に運動をしているわけでは無く、納品トレーニング。
ただで出来るし、感謝もされる。
荷物を持って階段ダッシュとか、健康に良いぞぉ。
きっと、機嫌の良いときの翔なら、そんな馬鹿な説明をしてくれただろう。
だが今は、好美の前で世話を焼いている。
そう、こっちのテーブルとは逆。
と言うか、何もしないもの同士だと、牽制のしあい。
「なんか持って来てよ」
「んあっ。おまえ取ってくるなら、俺の分も持って来りゃ良いだろ。ビールもお代わり」
これだよ。使えない男。
エッチは気合いを入れるんだけど、それ以外は駄目なんだよね。
それに比べて、楽しそうに話しながら、それなら今度は少し甘めの物をとか、タンパク質と野菜をとかって…… いいなあぁ。
そう思いながら、スマホを操作。
『席変わろ。OK?』
んらーい。
着信音は確かにした。
だが、無視をされる。
それどころか、好美の顔が色っぽく見える。
んまっ。何ということざましょ。
女って、男で…… それも一瞬で顔が変わるんだ……
それに気が付き驚愕をする。
『その男、何者? 情報送れOK?』
んらーい。
当然無視。
それどころか、サイドボタンをスライド。
マナーモードに。
さらにバッグイン。
見ませんの意思表示がすごい。
それによく見れば、椅子同士までなんか距離が近くなってる。
うーん。
このテーブル、予約の問題で二人掛けだが、元々は、四人までいけるはず。
好美め、生理現象にはかなわなかったようだ、さっきまでもじもじしながらも、彼の隣を離れまいと頑張っていたが、流石にそれは駄目だろう。
席を立ってトイレへと急ぎ足。
このすきに、声をかける。
「あのー。好美とどういう知り合いですか?」
思い切って声をかける。
とーぜん、よそ行きオクターブ。
「ああ。君の前で座っている馬鹿に、デートだからとドタキャンされてね。同じくドタキャンされた彼女が困っていたから誘ったんだ。まさか君らが知り合い同士で、それもここに来るとは思っていなかったが」
ああ駄目だ、声が尖ってらっしゃるぅ。
それに、こんな方との約束をブッチするなんて、啓博めぇ。
「……」
あたいが誘ったんだっけ?
「何か持って来ましょうか?」
「いや大丈夫。せっかくのデートなんだろう。楽しんで」
いやあぁ、尖ってらっしゃるぅ。
はっそうだ。
アイス、確かここにはアイスが……
探したが棒タイプのアイスも、フランクフルトも無かった。
そうおバカなことに、彼女はテクを見せて誘おうと考えていた。
さて、そんな変な行動を見せる紀子。
それと同時に、気がつけばいなくなっていた、啓博。
おやあぁ、翔さんの連れている女。結構良いなあ。
そんなことを考えて、トイレに行く彼女を追いかけた。
だが人目は多い。
追いかけて、トイレとか絶対無理だな。
出てきたところを連れて、外へ出るかぁ?
そう、彼はそんな不埒なことを考えた。
だが、酔っ払い。テンションの上がった彼女は、危なかった。
そう躊躇をしなくなる。
トイレから出て、幸せな席に戻ろうとするのをジャマする奴。
きっと相手が、警備員や警官でも彼女は躊躇をしなかった。
手を引かれるままに回転し、的確に眉間へと肘を撃ち込む。
手が離れれば、鼻歌交じりに席へと戻っていく。
そこには、躊躇、ためらい、手加減。そんな物は一切無かった。見事な無駄の無い動き。
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