泡沫の夢物語。-男と女の物語。短編集-

久遠 れんり

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日常に潜む出逢い。

第4話 そして……

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 咲良達の家は、小さな商店を営んでいたが、上手く行かず。
 中学生の頃には閉店をして、両親は借金返済のために働き始めた。

 いつも、帰れば両親がいた生活。
 それが一変した。

 生活自体も、それほど裕福では無く、ふとしたときに両親が喧嘩を始める。
 仕事と家事をお母さん一人が担う。当然負担は大きい。

 父さんは、料理も何もできずに、仕事から帰れば疲れたと言って飲み出す。

 咲良は、その様子を嫌い、料理を覚え始める。
 二つ下の美恵は中学校に入ると、両親の帰りが遅いのを良いことに友達と遊び始める。

 そして高校。
 成績は良かったが、はなっから大学は諦めていたし、その頃から、美恵の交友関係が良くない連中と付き合う様になっていき、学校から連絡が来る。

 そして、仲間の一人が、盗んだバイクで人をはねて、大騒ぎになる。
 そこからは、少しましになったが、行けるところは底辺の高校。
 そしてまた、良くない奴らと連み始める。

 咲良は、卒業と同時に伝手のあった小さな工場へと働きに出かける事になったが、他に若い者はおらず、おじさんの集団。
 だが、かわいがられて、皆に勧められて夜間の大学へ通い始めた。コースは、会計の短期だったので、三年で短大卒業資格。

 だが、美恵は高校を卒業後。
 自業自得だが、地元での悪い噂を嫌い。横浜へ逃げた。

 だが就職先や、アルバイト先で問題を起こし、連絡が来て謝りに行く事が増えた。

 そして、数ヶ月後。姿が見えなくなったと思ったら、愛媛県の警察から連絡。事故で入院をしたと。

 だが話は複雑で、撥ねられる前、別の車と問題を起こして、暴力を振るっていたことが発覚。

 訴えられた。

 弁護士に相談をすると、裁判になったのなら、出席をして原告側と示談。被害届を取り下げをしてもらうのが一番良いと聞き、それをするために、はるばる愛媛までやって来た。

 そして、妹の荷物の中にあったメモ。
 一万円の借用。
 どういう伝手なのかは知らないけれど、住所は香川県。
 地図を見ると、同じ四国内だし帰りに寄ろう。

 安易にそう思ったが、地図の中とは違い、小さな香川県だが、現実は意外と遠く。
 駅からタクシーを使い……
 私は放置された……
 後で思えば、スマホでタクシーを呼べば良かった。

 そして出会った、彼。
 妹は、知り合いでも何でもなく、迷惑を掛けた上に借金をしていた。
 でも彼は優しく、ドジな私に優しい時間をくれた。
 お酒の力を借りた、初めてのハグとキス。

 スマホの画面を見ながら、ついそれを思い出す。
 彼女は、無意識に口びるに指を沿わせる。

 そう…… 出会って、たった二日。
 でも、好きになってしまった。
 仕方なくバスに乗ったが、もっと一緒に居たかった。

「こんな気持ち…… 初めて」

 その後、二人はテレビ電話で連絡を取り合い、お互いの寂しさを紛らす。

 妹は、当然だが、実家から出してもらえなくなった。
 まだリハビリもあるし、少し上手く歩けない様で、そうなって、今は少し、反省もしたようだ。

 私は、考える。
 おじさんばかりの職場。
 大学は、この春卒業できる。
 単位はすでに取っている。
 簿記は、二級だが取ったし……

 彼女は気持ちを決めて、聞いてみる。
「おかあさん。私、家を出ても良い?」
 ざっと、両親に説明をして、彼の所へ……

「駄目になったら、戻っておいで」
 母さん達は、黙って頷いてくれた。

「―― ねえ。良人さん。この週末、そっちに行くから」
「ほんと。迎えに行くよ。何時?」
「えっとねえ……」

 彼女は、まるで遊びに来るような、軽く明るい声でそう告げ、やって来た。

「えっ。住む?」
「ええ。良人さんは嫌?」
「そんなわけ無いだろう」
 彼女は、やはりあの妹と姉妹のようだ。決めたときの思い切りの良さは半端じゃない。

 出会うのがおかしいような二人。
 偶然の歯車がかみ合い、出会ってしまった。

 そして、一年後の春。
 二人は、結婚をする事になる。

 幸せそうな顔をした彼女。
 祝福を受ける中で、親族席で杖をつき、妙な笑顔を浮かべるあの顔。あの動物園で出会った、黒ヤギさんとだぶるような微笑みが、かなり不安だが、何とかなるだろう…… たぶん。
 

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 お読みくださり、ありがとうございます。

 今回は、真っ当な恋愛話という事で。

 途中のニュースですが、実は、ありえそうであり得ない日常として、別枠で公開しようとしていたショートシリーズの内容です。
 ですが、恋愛以上に、思いつかず。また短すぎるために、公開せずに没にした経緯があります。
 ですが、捨てきれず、挿入しました。
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