泡沫の夢物語。-男と女の物語。短編集-

久遠 れんり

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人の縁とは不思議なもの

第2話 お試しからの、奇妙な関係

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 横の席で、お酒の匂いを匂わせている逸道さん。
 同期で入ってきて、隣に座っているが業務以外で話する事は無かった。
 他の人とは違い、若いのに性的な目でも見てこない。
 少し妙な余裕がある。

 まあ見られないなら見られないで、魅力が無いのかと少しヘコむがそこは良い。

 だけどまあ、彼も色々とあるようだ。
 勢いで、お願いをして、週末食事に行くことになった。

 だけど、デートじゃないよね……
 勢いで決めたけど、どうしよう。

 最近実家に帰ると、親の目が何かを物語る。
「年頃になると、かわいくなるし、そんな話はまだ無いのか?」
「おとうさん。最近は三十くらいまでは焦らないみたいよ」
「そうなのか? 昔は三十を越えると、子供を産むのに危険だとか言っていたのに」
 わざとらしい会話が、家の中で繰り返される。

 弟は、気ままに遊び歩いているのに。
 だが、そんな弟にも彼女がいることを知る。
「姉ちゃんが結婚しないと、名前とかも困るなあ。彼女は一人っ子だから、養子にとか言われているんだよね」
 ですって。

 私だって、弟がいるから、お嫁さんとか思っていたのに。
 周りは動き始め、いつまでも同じままではいられないようだ。
 生生流転せいせいるてん諸行無常しょぎょうむじょう。共に、世のすべてのものは、移り変わり元とは違ってくる。昔から言われている言葉。

 それを思い、私も今悩んでいた。

 子供の時から、絵が好きだった。
 見る所から入り、描き始める。

 それが、丁度高校の頃。
 それをジャマされるのは嫌だった。

 その後、才能の無さに、おのれを顧みるが、無駄ではなかったとおもう。

 大学でのデザインも楽しかった。
 就職して、かえって力が抜けた。

 配属部署は、普通の営業部。
 数字は、不得意。
 まあ数年ごとに、異動はあるから頑張ることにする。


 まあそれで、週末。
「いくか。金は無いから安いところな」
「判っています」
 でまあ、安い居酒屋だけど、チェーン店ではないけれど、評価が良いところ。

 お魚と、お肉のメニューが満遍なくある。
 まあ当然、乾杯から始める。
「彼女さんから、連絡来ました?」
「ああ。あった。開口一番、もう説明しなくても分かると思うけど、好きな奴が出来た。と言う事だ。淋しくてどうしようもなくて、頼ってしまったという言い分だ」
「そうですか」
 なぜか、彼女が落ち込む。

「どうした?」
「よく言われた言葉で、思っていた関係と違うとか、つまらないとか……」
「ああ。よく言われるな」
 そう言うと、じっと見られる。

「逸道さんて、地元なんですか?」
「いや違う。生まれは、高知の方。市内だ」
 そう言うと、彼女が鼻からピーチサワーを噴き出す。

「どうした大丈夫か?」
「大丈夫です。方言がないですね」
「まあ日常はな。でも時たま、言葉が分からないとか言われるぞ。のうがわるいとか」
「あー言いますね」
 彼女もなんだか納得をしている。

「しょう、めったとか?」
「めったは言わんな、めったに……」
「あー。はい」
 場が凍る。

「高知の人間だったのか?」
「そう。みかづき地区出身です」
「おれもそうなんだが……」
「えっ?」

 話をすると、実家は二キロほどしか離れておらず、ご近所さんだった。

「じゃあ、中学校も?」
「城の北」
「へー。まあそうなるよな。高校は? 追手門か?」
「無理。東」
「そりゃ遠い所へ」
 そう、あの学校があるのは、市内の外れになる。

「勉強しなかったんです。その頃、絵に興味があって」
 その後、したい事を我慢して付き合うのが無理とか、二人で言い合い、河岸を変える。

 さすが、地元の子。酒が強かった。
 ジョッキを、各自十杯以上空けた。

 ふらふらと歩くが、話もあるので、ショットバーはまずい。
 パブリックバーへと行く。
 そこで、いくつかショットを飲んで考える。
「時間が時間だし、うちへ来るか?」
 誘うと少し悩んだようだが、返事はオーケイだった。

「うーん。よし。私が、大成さんの生活チェックをしてあげましょう」
 そうして、うちへ来る。

 酒は常備しているが、彼女が飲むチューハイ系がない。
 コンビニで買って、家に向かうのだが、あやしい箱が、下着とかと一緒に放り込まれる。
 彼女は、ニヤニヤと笑うだけ。
 まあ良いか。

 そうして、少し飲む。
 入った瞬間に、別れた彼女が残していたものを見つけ、いきなりおとなしくなった。

「もう吹っ切れました?」
 缶を咥えながら聞いてくる。
 グラスは横にあるんだが。

「いやさすがに、いきなりは無理だろう」
「そうですよね。でも、私考えたんです。思考が似ている。実家が近い。酒が強い。私たち無敵じゃありません?」
「まあ、そうかな」
「こんな遠く離れた、大坂で隣り合う。運命でしょ」
「まあ。そうかな」
 うーん。という感じで彼女は悩む。

「まともに付き合ったことが無いんです。もし駄目でも、仕事はビジネスライクなお付き合いに戻すという事で、お試し…… お友達になりましょう」
「なんだ? セフレか?」
「違います。そっちがメインじゃなく。友達がメインでそれも有り。良さそうなら、結婚しましょう。もう親がチクチクと鬱陶しいんで」
「まあ、それで良いなら」
「じゃあ、お風呂へ行きましょ。必然が無いと、恥ずかしいので」
 話が飛んでるようだが、いきなり脱ぎ合いというのが恥ずかしいようだ。

 求められて、手順一。
 キスから始め、風呂場へ行った。
 まあ、少し。奇妙な関係が始まった。
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