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ある巡り会い
第3話 彼女との縁と、運の好転
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「へー。こっちへ来てからずっと?」
「そう。お前に会ってから消えた」
「お前ってねえ。あー名前言っていないか。まあ良いや。あたし清水真魚」
ちょっと嫌そうに答える彼女。
だが、その名前にひっかかる。
「まお? どんな字だ?」
「真の魚。変でしょ」
自分の名前が嫌いなのか、彼女は嫌そうに答える。
だけど、その字で確信をした。
「付けたのはじいさんか?」
「そう、かな?」
「真魚は、空海の幼名だ」
「へー」
今まで知らなかったようだな。
だが史跡巡りが趣味。
縁がありそうだけどな。
「それは良いとして、あんたは?」
「なにが?」
ため息を付くと、彼女聞いてくる。
「な、ま、え」
「ああ、源泉 泰範って言うんだ。じいさんみたいだろ」
「そうだね。家のおじいちゃんと同じ名前だ」
「はっ?」
後で調べると、泰範と書いて、たいはんと読む、空海の弟子がいた。
なぜか、彼女はまだ横に乗っている。
人のことを、おじいちゃんと言いながら。
「いい加減、おじいちゃんはやめろ。さっきも食いもんやで、変な目で見られたぞ」
「やすのりって言いにくいんだもん。おじいちゃんを呼び捨てみたいで」
ちなみにおじいちゃんは、まだ生きているらしい。
『お父さんに会ったらきっと引きつるよ。二人。仲が悪いらしいから』そう言って笑っていた。なぜ彼女の家族に、俺が会いにいくのか不明だが。
「みなもとで良いじゃ無いか」
「えー苗字呼びぃ。なんか距離感じる。やっぱり名前を呼び合うって良いじゃ無い」
「そんな関係になった記憶は無い」
そう言うと膨れる。
「薄情もの。私の心を、こんなにもかき回しておいて」
「おまえなあ」
「じゃあ離れるよ。きっと頭痛がするよ。ご先祖辺りからの警告だよ。いいのお」
「そんな馬鹿な」
そう言って、次の寺第十四番 盛寿山、常楽寺で彼女を車へ置き、境内に入る。
喧嘩をして別れたとか、そんなわけじゃ無い。
試そうと言って、試しただけ。
「そんな馬鹿な」
つい、膝から崩れ落ちてしまった。
その時彼女も、様子を見ていて驚いたらしい。
それに、何かが囁いた様だ。
離れるなと。
彼女はあわてて、俺の元へやって来る。
「大丈夫?」
「ああ。訳がわからねえ」
「良いじゃん。一緒にいるから」
そう言って、自然に伸ばされたその手を取り、立ち上がる。
嘘のように、痛みが消える。
「消えた。訳がわからねえ」
彼女と何故か手を繋いだまま、お参りに行く。
「地蔵菩薩像は、寝小便が止まるってさ」
そう言うと、彼女がなぜか必死で拝んでいた。
まさかな。
だがそんなかわいいものではなく、フラッシュバックが起こると体が動かなくなるらしい。
第十五番 薬王山、国分寺や第十六番 光耀山、観音寺は一キロ二キロの道のり。
四キロ離れて第十七番 瑠璃山、井戸寺。
「ここは、かの大○洋がいぼ痔と言っていた所だな」
「受けるけど、罰が当たりそうね」
そして、第十八番 母養山、恩山寺。ここへは、二十キロほど離れている。
ナビの案内で、徳島南環状道路を抜け、小松島方面へ抜ける。
だが案内された道は、途中からちょこちょこ狭く、焦ってしまう。
「あんまり、運転がうまく無いんだよな」
前から車が来ると、すれ違うのに苦労する。
だけどそんな区間は何とか過ぎ、対面だがまともな道になる。
そして、安心をすると何かが起こる。
対面から来ていたトラックがさ、トンネルの中でガンゴンと両壁面にぶつかり道を塞いでくる。
何とか止まって安心をしていると、彼女が叫ぶ。
「止まっちゃ駄目。右の車線へ逃げて」
あわてて車を寄せると、その横。本来いた左車線を、ノーブレーキでトラックが突っ込む。
おれは、あわてて、バックをする。
それはなぜか。
ぶつかった後、荷台がこっちを潰しに来るのが、なぜか頭の中で見えたから。
バックしているから俺は見えなかったが、彼女はボンネットすれすれを、荷台が横滑りして、さっきいた右車線を潰すのが見えたそうだ。
その後車が通らない。
もう一度切り返し、右側車線にまともな方向に向けて停車をする。
電話をかけて、事故の報告をする。
幸い火も出なかったが、後から突っ込んだ運転手さんは重体で、運ばれていった。
警官が、言っていた。
「どちらにしろ、挟まれたら軽ならぺちゃんこでしたね。お遍路さんだから守られましたか」
そう言って笑っていた。
笑い事じゃねえよ。
真魚の助言と、あのビジョンが無けりゃ二人絶対死んでいた。
処理が終わって、別の道へ迂回をするが、その日は疲れて宿へ止まる。
なぜかツインでも無くダブル。
彼女の『あたしら、離れるとやばくね』その言葉が、妙にストンと入った。
そしてこいつは、途中で寄ったドラッグストアで、なぜか五ダースのあれを買っていやがった。
「一緒にいるなら先ずは仲良くなる。一度すれば、悶々としなくて良くなるし」
これまた、なぜかストンと納得できた。
そして、ゆっくりと抱き合う。
言ったら怒られるが、前の彼女がスローなのが好きだった。
「信じられない」
朝一番に彼女から驚きの声。
「悪夢も無く、朝までぐっする寝た。何これ?」
彼女があわあわしている。
第4話へ続く。
「そう。お前に会ってから消えた」
「お前ってねえ。あー名前言っていないか。まあ良いや。あたし清水真魚」
ちょっと嫌そうに答える彼女。
だが、その名前にひっかかる。
「まお? どんな字だ?」
「真の魚。変でしょ」
自分の名前が嫌いなのか、彼女は嫌そうに答える。
だけど、その字で確信をした。
「付けたのはじいさんか?」
「そう、かな?」
「真魚は、空海の幼名だ」
「へー」
今まで知らなかったようだな。
だが史跡巡りが趣味。
縁がありそうだけどな。
「それは良いとして、あんたは?」
「なにが?」
ため息を付くと、彼女聞いてくる。
「な、ま、え」
「ああ、源泉 泰範って言うんだ。じいさんみたいだろ」
「そうだね。家のおじいちゃんと同じ名前だ」
「はっ?」
後で調べると、泰範と書いて、たいはんと読む、空海の弟子がいた。
なぜか、彼女はまだ横に乗っている。
人のことを、おじいちゃんと言いながら。
「いい加減、おじいちゃんはやめろ。さっきも食いもんやで、変な目で見られたぞ」
「やすのりって言いにくいんだもん。おじいちゃんを呼び捨てみたいで」
ちなみにおじいちゃんは、まだ生きているらしい。
『お父さんに会ったらきっと引きつるよ。二人。仲が悪いらしいから』そう言って笑っていた。なぜ彼女の家族に、俺が会いにいくのか不明だが。
「みなもとで良いじゃ無いか」
「えー苗字呼びぃ。なんか距離感じる。やっぱり名前を呼び合うって良いじゃ無い」
「そんな関係になった記憶は無い」
そう言うと膨れる。
「薄情もの。私の心を、こんなにもかき回しておいて」
「おまえなあ」
「じゃあ離れるよ。きっと頭痛がするよ。ご先祖辺りからの警告だよ。いいのお」
「そんな馬鹿な」
そう言って、次の寺第十四番 盛寿山、常楽寺で彼女を車へ置き、境内に入る。
喧嘩をして別れたとか、そんなわけじゃ無い。
試そうと言って、試しただけ。
「そんな馬鹿な」
つい、膝から崩れ落ちてしまった。
その時彼女も、様子を見ていて驚いたらしい。
それに、何かが囁いた様だ。
離れるなと。
彼女はあわてて、俺の元へやって来る。
「大丈夫?」
「ああ。訳がわからねえ」
「良いじゃん。一緒にいるから」
そう言って、自然に伸ばされたその手を取り、立ち上がる。
嘘のように、痛みが消える。
「消えた。訳がわからねえ」
彼女と何故か手を繋いだまま、お参りに行く。
「地蔵菩薩像は、寝小便が止まるってさ」
そう言うと、彼女がなぜか必死で拝んでいた。
まさかな。
だがそんなかわいいものではなく、フラッシュバックが起こると体が動かなくなるらしい。
第十五番 薬王山、国分寺や第十六番 光耀山、観音寺は一キロ二キロの道のり。
四キロ離れて第十七番 瑠璃山、井戸寺。
「ここは、かの大○洋がいぼ痔と言っていた所だな」
「受けるけど、罰が当たりそうね」
そして、第十八番 母養山、恩山寺。ここへは、二十キロほど離れている。
ナビの案内で、徳島南環状道路を抜け、小松島方面へ抜ける。
だが案内された道は、途中からちょこちょこ狭く、焦ってしまう。
「あんまり、運転がうまく無いんだよな」
前から車が来ると、すれ違うのに苦労する。
だけどそんな区間は何とか過ぎ、対面だがまともな道になる。
そして、安心をすると何かが起こる。
対面から来ていたトラックがさ、トンネルの中でガンゴンと両壁面にぶつかり道を塞いでくる。
何とか止まって安心をしていると、彼女が叫ぶ。
「止まっちゃ駄目。右の車線へ逃げて」
あわてて車を寄せると、その横。本来いた左車線を、ノーブレーキでトラックが突っ込む。
おれは、あわてて、バックをする。
それはなぜか。
ぶつかった後、荷台がこっちを潰しに来るのが、なぜか頭の中で見えたから。
バックしているから俺は見えなかったが、彼女はボンネットすれすれを、荷台が横滑りして、さっきいた右車線を潰すのが見えたそうだ。
その後車が通らない。
もう一度切り返し、右側車線にまともな方向に向けて停車をする。
電話をかけて、事故の報告をする。
幸い火も出なかったが、後から突っ込んだ運転手さんは重体で、運ばれていった。
警官が、言っていた。
「どちらにしろ、挟まれたら軽ならぺちゃんこでしたね。お遍路さんだから守られましたか」
そう言って笑っていた。
笑い事じゃねえよ。
真魚の助言と、あのビジョンが無けりゃ二人絶対死んでいた。
処理が終わって、別の道へ迂回をするが、その日は疲れて宿へ止まる。
なぜかツインでも無くダブル。
彼女の『あたしら、離れるとやばくね』その言葉が、妙にストンと入った。
そしてこいつは、途中で寄ったドラッグストアで、なぜか五ダースのあれを買っていやがった。
「一緒にいるなら先ずは仲良くなる。一度すれば、悶々としなくて良くなるし」
これまた、なぜかストンと納得できた。
そして、ゆっくりと抱き合う。
言ったら怒られるが、前の彼女がスローなのが好きだった。
「信じられない」
朝一番に彼女から驚きの声。
「悪夢も無く、朝までぐっする寝た。何これ?」
彼女があわあわしている。
第4話へ続く。
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