泡沫の夢物語。-男と女の物語。短編集-

久遠 れんり

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ある巡り会い

第1話 霊場巡り

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 何をやっても、上手く行かなかった。
 大学も志望校は落ち、滑り止めに何とか滑り込む。
 卒業はしたが、就活は上手く行かず。

 何とか入ったところは、今時珍しい、超絶ブラック。
 噂によると、フロント企業だとか。

 半年で退社。
 無事にやめられたのは奇跡だが、そこでも必要にされていなかったのが、真実だろう。

 部屋で一人悩む。
 貯金などあるわけなく、家賃も来月は払えない。

「そうだ。旅に出よう。バイトでもしながらゆっくりと」
 部屋で一人。
 そんな事を宣言して、荷物をまとめる。
 不要なものは廃棄して、使えるものは格安のレンタル倉庫へ放り込む。

 行き先…… ふと考えて、徳島に渡ってみる。
 行ったことの無い所。
 そう、とりあえずおれは、高速バスに乗り、本州から逃げた。

 そして、やって来た徳島県。

 まず行きたかった美術館へ向かう。鳴門にありバスに乗る。
 意外と遠く、一時間半もかかり、少しぐったりする。

 ある歌手が歌って有名になったが、すべての絵画を焼き物で再現している美術館。
 二千年の耐久性があるらしい。

 そこから半島の反対側へ回り、渦潮を見る。引きと満潮その時間帯を見てから行くと良いだろう。潮が止まっていると、単なる狭い海峡。橋が架かっていて車が通っているが、何も面白くない。コンクリート製の無骨な展望台。その屋上から覗くと、下のベンチでアベックがいちゃついていた。

 男に抱えられていた女の子と、バッチリ目があう。
 だがその子は、にやっと笑うと、俺と目を合わせたまま動作を続ける。
 気持ちが良いのか、たまに目を細める。
 先に負けて、目をそらしてしまった。

 何とか市内に戻り、安い宿を決めると名物らしいので、ラーメンを食べに行く。

 徳島ラーメンは、豚骨醤油で豚バラ肉が乗った白濁系。
 そう思っていたが、茶色系、白系、黄色系がある様だ。
 
 香川県のうどん屋よりは少ないが、大量に店がある。

 こってりかと思ったが、意外とあっさりしていた。
 チャーシューではなく、甘辛い豚バラが乗っている。
 生卵が絡まると、マイルドになっていい。
 思わず、焼きめしを頼んで、少し汁に付けながら食べてしまった。

 翌日。
 宿で聞くと、お四国さんと眉山を進められる。
 第一番札所札所霊山寺は、鳴門市大麻町に在るというので、レンタカーを借りにいく。

 なぜ札所を巡ろうと思ったのか。
 それは、自分でも判らない。

 そもそも、今まで寺など巡ったことなどない。
 いつか、初詣のために神社は行ったかもしれない。鳥居があったから神社だよな。
 
「如何でしょうか?」
 そう言って、案内をされたとき。
 なぜかストンと、良いなと思っただけだ。

 レンタカー屋で、お遍路さんを回ると言ったら、四駆の軽を進められた。
 一〇日間で八万円くらい。
 まだ生きている、クレジットカードで払う。
 いくつかは、もうすぐ停止されるだろう。

 さて、国道11号線を、徳島から香川方面へ向かい。鳴門の手前から山に沿って左。
 昨日行った海方面ではなく。内陸側に霊山寺は建っていた。
 道沿いに、いきなり駐車場が見える。

 流石に用品をすべてそろえる気はしないが、念珠と経本。頭陀袋ずたぶくろ。それに納札おさめふだ。これは、本堂や大師堂などにお参りした証として納める札で、今まで回った回数により、使える色がいくつか決まっているようだ。

 素人さんは白だ。
 五〇回以上回れば、金色が使えるらしい。
 その時、金色のロボットが、サムズアップした姿が頭に浮かぶ。
「いや、百回なんて無理」

 後は、納経帳のうきょうちょう。寺ごとにサインを書いてもらえる。
 五百円らしい。

 まあそれは良いが。
 さっき門をくぐったときから頭が重い。

 何かなこれは?
 飲み過ぎたときくらいしか、こんな事はない。

 ろうそくや線香は、献灯献香台の近くに売っている。
 と、言っても無人販売で小銭を入れる。
 ろうそく一本は専用のケースに収め、と線香三本に火を点け灰に突き刺す。
 運の無い俺は、灰に埋もれていた線香に、指が当たり火傷をする。

 札を納める。
 なんか入れ物があるので、ぽいっと入れる。

 お経を唱え、本当は、祭られている本尊とかを三回唱えるらしいが、よくわからない。
 
 その後、御朱印を納経帳へ書いてもらいに行く。
 その時知ったが、書いて貰う物によって値段が違うそうだ。

 山門を出る時には、手を合わせて一礼しから出るらしい。

 そして、極楽寺へは一・二キロほど。
 そんな感じで回っていく。

 だが、さっき寺の中で感じた頭痛が、山門を出ると収まる。
 また次の寺へ行くと、ひどくなる。

「何だろうなこれ?」
 そう思いながら、十番まではサクサクと回ることが出来る。

 第十一番 金剛山、藤井寺や第十ニ番 魔慮山、焼山寺辺りから山だ。
「ここまでにして、明日にするか」
 ずっと頭が重い。
 鴨島とか言う駅前に、宿があるのでそこへ行く。

 寺にも宿坊があるそうだが、噂によるとお勤めがあるため。
 あくまでも個人的な物だが、雑魚寝だし、ゆっくりと出来そうにない。

 晩飯は、ファミレスで済ませる。


 第2話へ、つづく。
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