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春の一日
第2話 春の日
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「ごめんなさい。結局買って貰って」
「気にしないで、単なる気まぐれだから。なんとなく似合いそうだし、勿体ないなと思って」
多分あの一言で、お金がないから諦めたと理解されたのだろう。
買って貰ってしまった。
それに、やはり彼女はいない。
やっぱり私のことが好き? なの、かしら。
うわー。告白されたらどうしよう。
ドキドキが止まらない。
「あー、それじゃあまたね。時間取らせてごめんね」
だけど彼は、いきなり帰ろうとし始める。
照れ隠し? ちょっと待ってよ。買って貰って即バイバイじゃ、なんだか私的によくない。
夕ご飯には早いし、月末で厳しい。
「時間があるなら、その辺でお茶でも。そのお礼がてら」
「いや、時間はあるけれど。いいの」
よーし良し。乗ってきた。彼はきっと私に気があるけれど、恥ずかしいのね。
告白するなら、して貰おうじゃない。
段々気分が乗ってきた。
春野さんは、かわいい系の女の子。
まあ好みでは有るが、本来もうちょっと、美人系が好きなのだが。
まあ良いか、お茶くらいなら。
つい勢いでコートを買ってしまったが、仲良くなって、今度友人でも紹介して貰おう。
そうは言っても、この辺り。ああそうだ、前に行っていた洋菓子店の併設店舗がある。
そこへ行くか。
昔幾度となく来た、店。
前の彼女が好きで来ていて、別れてからなんとなく、一年くらいは来ていない。
だがまあ、良いか。
良くなかった。
店に入ると、元彼女の友人達がいた。
今では縁が切れたが、向こうはこっちを覚えていたようだ。
店に入ってから、すぐに気がついたようで、僕の後ろにいる春野さんを見て何かを言っている。
なるべく離れた奥側に座る。
「この店気になっていたんです。よく来るんですか?」
「いや、最近は来ないな」
ものすごく嬉しそうに、メニューを見ている。
この時間なら、ケーキと飲み物だと八〇〇円。
アイスクリームなどのデザートを付けると千円。
ディナーだと、ちょこっとオムライスやフレンチトースト、サラダなどがつき始める。お値段も千五百円から二千円近くなる。
おれはザッハトルテとコーヒーのセット。
彼女は、チーズケーキと紅茶を頼みそうになるので、聞いてみる。
「本当は何が食べたいんだ?」
「えっ。あっ」
じっと見つめる。
彼女の指が、パンケーキにフルーツとクリームが乗った物の写真で止まる。
そちらと、紅茶で注文する。
ちなみに、パンケーキのセットは、一千五百円だ。
「本屋さんて、給料安いの?」
ぶしつけだが聞いてみる。
「いえあの。うち妹がまだ大学生で、自分の奨学金を支払って、仕送りでちょっとだけ厳しくて」
すごいな。
仕送りなんぞ、ついぞしたことが無い。
「えらいなあ。俺なんか、好き勝手使っているから、本の購入も減らすか」
つい反応が面白くて、虐めてしまう。
「だめです。減らさないでください。いい加減ネット販売を視野に入れてという話があるんですから。これから電子書籍化が進むと、一般書店は生き残れないんです」
「そうだよね。出版社かどこかが共通プラットフォームにしないと。大手以外無くなっちゃうね。でもそれはそれで、小売店が必要なくなるのか。問題だね」
二人で思わず、書店の未来に向けての展望が開けないことに絶望する。
「あの、中山さんて、何をされている方なんですか?」
「あーまあ。大学の職員。単なる事務系」
「えっ、普段パソコン関係の本を買っていますよね」
「ああ。この前買ったプログラミング言語? あれは色々に使うんだよ。流行は一応抑えておかないと話ができないから。知識は広く浅く読みあさる。まあ今は情報部とかもあるから」
そう上から、中期計画とか色々降ってくる。
できないと評価が下がり、交付金が減る。
うわー。思ったよりも当たりの人?
確か大学法人試験とか募集があった気がする。
「給料は安いんだけどね」
「多分、うちよりはましだと思いますよ」
「うん、どっちも沈み行く職業だね」
「あっ、少子化とか」
「そうそう」
ああ、聞きたい。
自惚れだけど、だんだんと好きですと言って欲しい。
少しの時間だけど、優しくて大人。
いい人だとわかる。
幾つなんだろ? 若く見えるけれど、昔からの常連さんと言っても学生だった可能性はあるし。
うーん。だんだんかわいく見えてきたぞ。
なんだろう、この小動物感。
微妙に好みからは外れているのが新鮮かな。
今まで、付き合ったタイプと違うのが、いいのか?
すっごく嬉しそうに、イチゴをほおばっているし。
「本当に今彼氏とか居ないの?」
「えっ。はい」
なんで嬉しそうに。
うわ。さりげなくもう一度確認された。
告白されたら、はいって言うから聞いて。
待っていたけれど、パンケーキはなくなり、紅茶がなくなる。
ええっ。言ってくれないの。あっそうか。まともに話したのは、今日が初めてだし、仕方ないのかな。
そう言えば、今日会うまで何も思っていなかったのに、なんだろう。ものすごく気になる人になってしまった。お店で会った時、普通にできるのかが不安。
店長目ざといから、きっと気がついて、何か言われそう。
「気にしないで、単なる気まぐれだから。なんとなく似合いそうだし、勿体ないなと思って」
多分あの一言で、お金がないから諦めたと理解されたのだろう。
買って貰ってしまった。
それに、やはり彼女はいない。
やっぱり私のことが好き? なの、かしら。
うわー。告白されたらどうしよう。
ドキドキが止まらない。
「あー、それじゃあまたね。時間取らせてごめんね」
だけど彼は、いきなり帰ろうとし始める。
照れ隠し? ちょっと待ってよ。買って貰って即バイバイじゃ、なんだか私的によくない。
夕ご飯には早いし、月末で厳しい。
「時間があるなら、その辺でお茶でも。そのお礼がてら」
「いや、時間はあるけれど。いいの」
よーし良し。乗ってきた。彼はきっと私に気があるけれど、恥ずかしいのね。
告白するなら、して貰おうじゃない。
段々気分が乗ってきた。
春野さんは、かわいい系の女の子。
まあ好みでは有るが、本来もうちょっと、美人系が好きなのだが。
まあ良いか、お茶くらいなら。
つい勢いでコートを買ってしまったが、仲良くなって、今度友人でも紹介して貰おう。
そうは言っても、この辺り。ああそうだ、前に行っていた洋菓子店の併設店舗がある。
そこへ行くか。
昔幾度となく来た、店。
前の彼女が好きで来ていて、別れてからなんとなく、一年くらいは来ていない。
だがまあ、良いか。
良くなかった。
店に入ると、元彼女の友人達がいた。
今では縁が切れたが、向こうはこっちを覚えていたようだ。
店に入ってから、すぐに気がついたようで、僕の後ろにいる春野さんを見て何かを言っている。
なるべく離れた奥側に座る。
「この店気になっていたんです。よく来るんですか?」
「いや、最近は来ないな」
ものすごく嬉しそうに、メニューを見ている。
この時間なら、ケーキと飲み物だと八〇〇円。
アイスクリームなどのデザートを付けると千円。
ディナーだと、ちょこっとオムライスやフレンチトースト、サラダなどがつき始める。お値段も千五百円から二千円近くなる。
おれはザッハトルテとコーヒーのセット。
彼女は、チーズケーキと紅茶を頼みそうになるので、聞いてみる。
「本当は何が食べたいんだ?」
「えっ。あっ」
じっと見つめる。
彼女の指が、パンケーキにフルーツとクリームが乗った物の写真で止まる。
そちらと、紅茶で注文する。
ちなみに、パンケーキのセットは、一千五百円だ。
「本屋さんて、給料安いの?」
ぶしつけだが聞いてみる。
「いえあの。うち妹がまだ大学生で、自分の奨学金を支払って、仕送りでちょっとだけ厳しくて」
すごいな。
仕送りなんぞ、ついぞしたことが無い。
「えらいなあ。俺なんか、好き勝手使っているから、本の購入も減らすか」
つい反応が面白くて、虐めてしまう。
「だめです。減らさないでください。いい加減ネット販売を視野に入れてという話があるんですから。これから電子書籍化が進むと、一般書店は生き残れないんです」
「そうだよね。出版社かどこかが共通プラットフォームにしないと。大手以外無くなっちゃうね。でもそれはそれで、小売店が必要なくなるのか。問題だね」
二人で思わず、書店の未来に向けての展望が開けないことに絶望する。
「あの、中山さんて、何をされている方なんですか?」
「あーまあ。大学の職員。単なる事務系」
「えっ、普段パソコン関係の本を買っていますよね」
「ああ。この前買ったプログラミング言語? あれは色々に使うんだよ。流行は一応抑えておかないと話ができないから。知識は広く浅く読みあさる。まあ今は情報部とかもあるから」
そう上から、中期計画とか色々降ってくる。
できないと評価が下がり、交付金が減る。
うわー。思ったよりも当たりの人?
確か大学法人試験とか募集があった気がする。
「給料は安いんだけどね」
「多分、うちよりはましだと思いますよ」
「うん、どっちも沈み行く職業だね」
「あっ、少子化とか」
「そうそう」
ああ、聞きたい。
自惚れだけど、だんだんと好きですと言って欲しい。
少しの時間だけど、優しくて大人。
いい人だとわかる。
幾つなんだろ? 若く見えるけれど、昔からの常連さんと言っても学生だった可能性はあるし。
うーん。だんだんかわいく見えてきたぞ。
なんだろう、この小動物感。
微妙に好みからは外れているのが新鮮かな。
今まで、付き合ったタイプと違うのが、いいのか?
すっごく嬉しそうに、イチゴをほおばっているし。
「本当に今彼氏とか居ないの?」
「えっ。はい」
なんで嬉しそうに。
うわ。さりげなくもう一度確認された。
告白されたら、はいって言うから聞いて。
待っていたけれど、パンケーキはなくなり、紅茶がなくなる。
ええっ。言ってくれないの。あっそうか。まともに話したのは、今日が初めてだし、仕方ないのかな。
そう言えば、今日会うまで何も思っていなかったのに、なんだろう。ものすごく気になる人になってしまった。お店で会った時、普通にできるのかが不安。
店長目ざといから、きっと気がついて、何か言われそう。
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