泡沫の夢物語。-男と女の物語。短編集-

久遠 れんり

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ある朝、パンを咥えた女に撥ねられた

第4話 相談

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「事故かぁ」
 ノートパソコンを見ながら、二人で悩む。
 ここは俺の部屋。
 彼女は落ち込んだ感じで、画面を見ている。
『ケガをさせた側が、過失傷害罪・刑法209条に問われる可能性があります』
 そんな文面が描かれたページ。

「えー。訴えます?」
「でもまあ、傷害だけど」
「はうぅ」
「痛いし、突っ込んできたのは君だし」
「はうぅっ」
「空手黒帯だって?」
「はぅぅ? あっ、そうです。昔変質者ホイホイだったので」
 明るく答えるが、わかる気がする。彼女って仕事柄で化粧をほとんどせず、ショートヘアで少し尖った顎がボーッシュで、かわいくてかっこいい。くりっとした二重。

「そうだよな。美保さん美人だしかっこいいし、三年も隣に住んでいたのを知らなかったのが残念だ」
 そういうと、「やだぁ」という言葉に似つかわない速度で、掌底が飛んでくる。

「ぐわあっ」
 急に避けたら激痛が。
「ああ。すみません。冗談でも、聞き慣れていない言葉だったので、つい手が」
「いや冗談じゃ無いから。もうど真ん中。大好きと言って良い。はっ、ごめん。いきなりこんな」
 普段の俺からすると考えられない言葉が、ペラペラと吐かれた。
「頭打ったせいかな」
 そう言ったらまた彼女が落ち込む。

「すみません」

「いや」
 少し無言の後、彼女がしゃべり始める。

「本当に変態さん以外からはモテなくて。その後、仕事は籠もりっぱなしで出会いはないし。やっぱり基本的に、初見の人は怖いし」
「あー俺もそうだな。なぜかモテないんだ」
 そう言うと、彼女の目が丸くなる。
 そのあと、すぐに細くなりこんなことを言い出す。

「幾ら何でも、うそっぽ過ぎます。その体躯で、その顔その声。どう聞いても嘘です」
「君だって、知り合いになれば、男も大丈夫なんだろう。君のその顔と雰囲気でモテないなんて言うのはおかしすぎるよ」
「えーまたー。本気にしちゃいますよ」
「いや、本気だけど。もう三十二歳歳だし、冗談を言う歳でもないさ」
「私もです。あの本気なら、ちょっと、耳元で美保好きだよって言ってもらえます」
 口を寄せ、彼女の耳元で囁く。

「美保好きだよ。本気で愛している」
「ひゃう。本気なら嬉しいです。出会ってすぐに、実は気になっていました」
 そうして、ぎゅっと抱き合い俺は悶絶をする。


 そして俺達は、現状でお互いの不自由なところを、補いながら生活を始めることにした。

 ただ彼女の後ろ側で何かをしていると、不意に攻撃が来る。
「なるべく、後ろ側に立たないようにしてください」
「今はそれで良くても、子供が出来たら蹴っちゃうよ」
「はっ、そうですね。直します。子供。うふぅ」

 彼女は真っ直ぐで、どうしてモテなかったのか理解できない。

 大輔さん本当にステキなのに、今までどうしてモテなかったのか理解ができない。
 でも少し、衝撃的な出会いだったけれど、出会えて良かった。


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お読みくださり、ありがとうございます。
運命と必然を、組上げてみました。
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