泡沫の夢物語。-男と女の物語。短編集-

久遠 れんり

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ある朝、パンを咥えた女に撥ねられた

第2話 鈍い奴ら

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 私は、能勢麻純のせ ますみ村上大輔むらかみ だいすけ君が好きで、事あるごとに彼の周りをうろうろして手伝ったり声をかけたり。

 彼は今風のイケメンより、少し前のハンサムと呼ばれるタイプ。
 身長もそこそこあり、きっと顎クイができるわ。

 そんな妄想を友人に伝えて、ガードもしていたある日、彼が来た。
 向こうから。
「麻純。彼がこっちへ来たきたよぉ」
 正面にいた、美穂から視界に入ったのだろう。
 横にいた、由里まで口の前に拳で「きゃー」とか「うひゃー」とか言っている。

 そして、声をかけられる。
 でっデートの誘い? 友人の前で? こまるわぁ…… はあっ? 亀井? 何それ?

 彼に…… そんな、しょうもないことを頼むんじゃないわよ。
 おかげで…… 私の存在が…… 彼にとって…… アウトオブ眼中だと判ったじゃない。
 私は何とか、出てきそうな涙を気合いで抑えて、気力を振り絞り、何とか笑顔で対応をする。
 私のこと嫌いですか? そんな言葉が出かかったけれど、怖くて聞けなかった。

 でも、その後泣いちゃった。
 美穂と由里が人を集めて、亀井をボコってくれたけれど気分は晴れない。
 そのまま卒業まで、その事を聞くことができずに終わってしまった。
 彼と、高校の同級生でいる関係を、選択しちゃった。



 最近目に付く男の子。村上大輔むらかみ だいすけ君。
 だが彼の周りには、おこぼれ目当ての男どもが、バリケードになっている。
 行き着くまでには、周りの男に与える餌を、数人用意せねば彼には到達できない。

 そんな時、伝統の学部コンパなるものを知る。
「彼は暇だから来るよ」
 そんな囁きが、耳に入る。
 ダメ元で出かけたら、本当にいた。
 だが、モテない面々に囲まれ、何か楽しそうに話している。

 席は少し離れているが、私は目一杯聞き耳を立て、彼の興味を聞き取ろうとした。

 なんと言うことでしょう。
 彼は自身ががモテないと思っている。
 それはね、あなたの周りにいる。自称大輔のダチだよという奴がジャマをしているのよ。逃げてーと心の中で叫ぶ。

 おっといけない、嬉しくて鼻の穴が広がってしまった。
 総合的な判断をすると、彼が一人の時に到達をすれば、告白だけでいけるかもしれないわ。
 そうしてその日。私は人生最大の失敗をした。

 嬉しすぎて飲み過ぎ、お持ち帰りをされてしまった。
「やあハニー。昨夜はステキだったよ」
 誰こいつ? あっ痛い。本気でこいつやりやがった。
 私は、あわてて服を着て部屋を飛び出す。

 だけど、その馬鹿は、彼のいる前で私とやったことを言いやがった。
「もうだめ。死にたい」
 だけど、そいつは彼の友人ではあった。
 心は守る。
 彼に会うために体を売る。
 
 適当なところで、別れて彼に慰めて貰い、なし崩しに…… えへっ。
 そんな矢先に、私は妊娠をした。このゴミは、避妊さえまともにできないのよ。

 放心状態のまま、あれよあれよと結婚が決まり、学生結婚。
 意外とこいつの親は金持ちだった。
 適当に、図に乗らせながら貢がせる。
 そうよ私は悪の華。きっと神には近寄れない。

 大輔様お許しください。
 現実かねというものに、魂を売ってしまいました。
 わたしは、悪い女です。


 北村美保きたむら みほ二十八歳。
 私は昔からモテなかった。

 なぜか小学校の前では、おじさんがコートを広げて喜ぶところに遭遇をする。
 最初の頃には、怖がって逃げたが、最近は慣れてしまい。
 見た瞬間に、蹴りを入れ。
 先生を呼んできて貰うのが、ルーティーンとなっていた。

 そのせいで、中学校になってから、大人になってきた男の子達が、気持ち悪かった。

 その頃でも、神速の美保と呼ばれていたし、男の子も私の前では、股間を隠して逃げる。

「見せなきゃ蹴らないわよ」
 そう言っても信じてくれない。
 うん、女の子には頼られたわ。
 でも、私はフェミじゃないのよ。

 単純に異性としての男の子には、興味があるの。でも…… 変にニヤけながら、お嬢ちゃんほうらって言うおじさんも男。
 でもお父さんも男だし、お母さんと付き合わないと私は生まれていない。

 色々考えて、確かにその頃不安定だった。
 体育祭で手を繋いだときも気持ち悪かったし、いやだった。
 そうね。中学校の時は嫌がる子も多かった。と思う。
 でも、高校に入ってから様子が変わってきた。

 男も女も異性を求める。
 一部否定する子もいたけれど、そういう子は、否定もされていた。
 美醜や体型。お互いにある程度の許容範囲と言うものがあり、その平均値から外れたものは淘汰される人間。
 私がそうだった。

 未だに、神速という二つ名は通っていたし、その頃空手もやっていた。
 おかげで、実際に蹴ることはできなくなった。
 道場の決まりね。喧嘩御法度破れば破門。

 でも実際、その頃の蹴りは、ガードを抜け先輩を吹っ飛ばした。
 先生が、不思議がっていた。

 そんな頃に、声をかけてきた後輩。
「先輩、先輩に憧れています。付き合ってください」
 そう言われて、私はきちんと付き合い。道場を紹介した。

「修練を積んで、憧れだけではなく。越えていけるまで頑張りなさい」
 そう言ったら彼は、涙をこぼしながら誓ってくれた。

「きっと、乗り越えその時こそ」
「いいわ、相手になってあげましょう」
 また泣いていた。
 男の子って、涙もろいのね。

 結局高校時代、彼は私に勝つことはできなかった。

 ほぼモーション無しで視界外から蹴りが来るらしく、その特殊性は、師範も認めてくれた。
 幼少期からの、必殺の攻撃。それは実戦で培われた私だけの技らしい。
 その頃、『神速』のほかに、『クラッシャー』とも呼ばれていたらしい。
 あと、『ハートブレイカー』とも。

 それは師範も認めていたようだが、私には理由が分からなかった。
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