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ある朝、パンを咥えた女に撥ねられた
第1話 出会いは突然に
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「ごめんなさい」
頭を下げている女性は、二十八歳の北村美保と言う女性。
今病院にいる。
時間は少し戻り、今朝のこと。
俺はいつもの様に玄関を出た。
そしてエレベーターに向かう途中、忘れ物に気がつき、引き返した。
いつもと違った、わずかな行動。
いきなり目の前のドアが開き、パンを咥えた女性が飛び出してきて、最終奥義的な技を食らった。
彼女の右膝は俺の股間に突き刺さり、左肘は俺の肋骨にヒビをいれた。
そして彼女自身は、右手首の捻挫と、お互いの歯のぶち当たる熱烈なキス。
お互いに、唇を切って血を流し、俺は後頭部を強かにぶつけて、こぶができた。
俺の意識が飛んでいたので、救急車が来らしい。
彼女は、股間に刺さった膝が、俺にとどめを刺したと思い。かなり焦ったようだ。
一応断裂も、破裂もしていなかったらしいが、意識があったらきっと悶絶をしていただろう。
「昔何かで、死ぬ事があると聞いていたので」
「いや断裂とか、精巣破裂とかはしていないらしくて、ただしばらく疼痛とか、出血はあるかもしれないとのことですが、そっちより、お互いに唇が。大丈夫ですか?」
そう聞くと、その時のことを思いだしたのだろう。彼女の顔が赤くなる。
「まだ違和感がありますが、大分腫れも引きましたし。それより奥様とかに叱られそうですが、大丈夫でしょうか?」
「事故ですし、まだ独身ですから、そちらこそ、その……」
「――私も、独身ですから大丈夫です」
少し言いづらそうにそう言って、少し恥ずかしそうに俯く。
会社には連絡を入れて、三日ほど休むことを伝える。
上手く休日に繋がるからだ。
股間の鈍い痛みと、呼吸をするだけで肋骨に響く。
体をひねって、痛みでうずくまり、蹲ったことにより、痛みがくる。
先生は、『数日でましになりますよ。それにしても肘ですか。お相手は女性とか? 強烈なのを食らいましたね。私も私生活に気を付けましょう。わっはっは』と、まあ。
カルテに書かれた股間への一撃と、切れた唇。肋骨にヒビ。
痴話げんかと、邪推されても仕方が無い。
会社でも、『出会い頭に女性とぶつかり吹っ飛ばされた? そりゃあれだな。よほどふくよかだったのか? お前彼女が欲しいって言っていたじゃ無いか。これをネタにゆす、いやきょうは、いや、お願いでもしたらどうだ。休みはやるから、介護して貰え』そんな教唆、いや、ハラスメントもどきな言葉を貰う。
そう、おれは、村上大輔三十二歳。昔からモテたことが無い。
「大輔。能勢さん。あの子かわいいよな。俺気になるんだけど、仲良くしたいんだけど、ちょっと聞いてきてくれないか?」
あれは高校一年の時だったか? 悪友からそんな事を頼まれた。
実は、そんな頼まれ事が多い。
俺は、その頃確か一七〇センチくらいで、運動が好きだったので細マッチョ的な感じ。
目は奥二重だが、目が怖いとよく言われる。少し丸い感じで愛らしいと自分では思うのだが、ちょっと薄めの阿部 寛とか将軍様とか影で呼ばれているらしい。
能勢麻純は、ミドルの髪でかわいい系。結構明るくフランクだ。
たまに、先生の手伝いの時とか、手伝ってくれたりする。
「能勢さん」
声をかけると、友人と談笑中だったが、こちらをあわてた感じで振り向き和やかに微笑む。
「村上君。何かな?」
「話し中に悪い」
「ううん。だいじょぶよ」
彼女の友人達も、なぜか口元を手で被い、和やかに頷いてくれる。
「別にたいした事は無いんだが、剛。あー亀井が君と仲良くなりたいらしくて、なぜか頼まれてね」
そう言うと、和やかな顔から、一瞬表情が消え剛の方を向く。
なぜか、それを見た剛はビクッとする。
いや、向き直った顔は普通だったよ。
「うーん。ありがとう。彼と少しお話をしてみるね」
そう聞いて、俺は礼を言う。
「ありがとうな」
そう言うと、にっこりと彼女も笑い返してくる。
立ち去ろうとしたら、「あっ、あのね……」といわれて向き直る。
だが。
「あっうん。ありがとう」
そう言われて、変な感じがしたが、席の方へもどる。
なぜか、笑いが彼女の連れから出ていたが、楽しそうでいい。
翌日、なぜか亀井は学校休んだ。
高校在学中はそんな感じだったし、大学へ入ると、今度は、よく飲み会に誘われた。
「頼むよ。お前も来るって言っちまったんだ」
「なんで毎度毎度、本人の許可取り前に言うんだ?」
「良いじゃ無いか。どうせ暇だろ」
何かが刺さる。
「ああ、彼女もいなくて暇だよ」
そう、全く彼女ができない。
大体、講義中は俺の席の周りには男が集まり、その外周を女の子が埋める変な形が出来上がる。
意図的に、女の子から隔離をされている気がする。
でもさ、コンビニとかだったりすると、女の子ががっしりと手を掴んでおつりをくれたりするから、嫌われている感じじゃないんだよな。
友達に言うと、誰でもそうだよと馬鹿にされたが。
たまに女の子から声が掛かるけれど、映画のタイトルだけ聞いてきて、「見てない」と答えると、なぜか、「見てないんだってー」といって、友人だろう。固まりへと帰っていく。
あれは未だに理由が分からない。
頭を下げている女性は、二十八歳の北村美保と言う女性。
今病院にいる。
時間は少し戻り、今朝のこと。
俺はいつもの様に玄関を出た。
そしてエレベーターに向かう途中、忘れ物に気がつき、引き返した。
いつもと違った、わずかな行動。
いきなり目の前のドアが開き、パンを咥えた女性が飛び出してきて、最終奥義的な技を食らった。
彼女の右膝は俺の股間に突き刺さり、左肘は俺の肋骨にヒビをいれた。
そして彼女自身は、右手首の捻挫と、お互いの歯のぶち当たる熱烈なキス。
お互いに、唇を切って血を流し、俺は後頭部を強かにぶつけて、こぶができた。
俺の意識が飛んでいたので、救急車が来らしい。
彼女は、股間に刺さった膝が、俺にとどめを刺したと思い。かなり焦ったようだ。
一応断裂も、破裂もしていなかったらしいが、意識があったらきっと悶絶をしていただろう。
「昔何かで、死ぬ事があると聞いていたので」
「いや断裂とか、精巣破裂とかはしていないらしくて、ただしばらく疼痛とか、出血はあるかもしれないとのことですが、そっちより、お互いに唇が。大丈夫ですか?」
そう聞くと、その時のことを思いだしたのだろう。彼女の顔が赤くなる。
「まだ違和感がありますが、大分腫れも引きましたし。それより奥様とかに叱られそうですが、大丈夫でしょうか?」
「事故ですし、まだ独身ですから、そちらこそ、その……」
「――私も、独身ですから大丈夫です」
少し言いづらそうにそう言って、少し恥ずかしそうに俯く。
会社には連絡を入れて、三日ほど休むことを伝える。
上手く休日に繋がるからだ。
股間の鈍い痛みと、呼吸をするだけで肋骨に響く。
体をひねって、痛みでうずくまり、蹲ったことにより、痛みがくる。
先生は、『数日でましになりますよ。それにしても肘ですか。お相手は女性とか? 強烈なのを食らいましたね。私も私生活に気を付けましょう。わっはっは』と、まあ。
カルテに書かれた股間への一撃と、切れた唇。肋骨にヒビ。
痴話げんかと、邪推されても仕方が無い。
会社でも、『出会い頭に女性とぶつかり吹っ飛ばされた? そりゃあれだな。よほどふくよかだったのか? お前彼女が欲しいって言っていたじゃ無いか。これをネタにゆす、いやきょうは、いや、お願いでもしたらどうだ。休みはやるから、介護して貰え』そんな教唆、いや、ハラスメントもどきな言葉を貰う。
そう、おれは、村上大輔三十二歳。昔からモテたことが無い。
「大輔。能勢さん。あの子かわいいよな。俺気になるんだけど、仲良くしたいんだけど、ちょっと聞いてきてくれないか?」
あれは高校一年の時だったか? 悪友からそんな事を頼まれた。
実は、そんな頼まれ事が多い。
俺は、その頃確か一七〇センチくらいで、運動が好きだったので細マッチョ的な感じ。
目は奥二重だが、目が怖いとよく言われる。少し丸い感じで愛らしいと自分では思うのだが、ちょっと薄めの阿部 寛とか将軍様とか影で呼ばれているらしい。
能勢麻純は、ミドルの髪でかわいい系。結構明るくフランクだ。
たまに、先生の手伝いの時とか、手伝ってくれたりする。
「能勢さん」
声をかけると、友人と談笑中だったが、こちらをあわてた感じで振り向き和やかに微笑む。
「村上君。何かな?」
「話し中に悪い」
「ううん。だいじょぶよ」
彼女の友人達も、なぜか口元を手で被い、和やかに頷いてくれる。
「別にたいした事は無いんだが、剛。あー亀井が君と仲良くなりたいらしくて、なぜか頼まれてね」
そう言うと、和やかな顔から、一瞬表情が消え剛の方を向く。
なぜか、それを見た剛はビクッとする。
いや、向き直った顔は普通だったよ。
「うーん。ありがとう。彼と少しお話をしてみるね」
そう聞いて、俺は礼を言う。
「ありがとうな」
そう言うと、にっこりと彼女も笑い返してくる。
立ち去ろうとしたら、「あっ、あのね……」といわれて向き直る。
だが。
「あっうん。ありがとう」
そう言われて、変な感じがしたが、席の方へもどる。
なぜか、笑いが彼女の連れから出ていたが、楽しそうでいい。
翌日、なぜか亀井は学校休んだ。
高校在学中はそんな感じだったし、大学へ入ると、今度は、よく飲み会に誘われた。
「頼むよ。お前も来るって言っちまったんだ」
「なんで毎度毎度、本人の許可取り前に言うんだ?」
「良いじゃ無いか。どうせ暇だろ」
何かが刺さる。
「ああ、彼女もいなくて暇だよ」
そう、全く彼女ができない。
大体、講義中は俺の席の周りには男が集まり、その外周を女の子が埋める変な形が出来上がる。
意図的に、女の子から隔離をされている気がする。
でもさ、コンビニとかだったりすると、女の子ががっしりと手を掴んでおつりをくれたりするから、嫌われている感じじゃないんだよな。
友達に言うと、誰でもそうだよと馬鹿にされたが。
たまに女の子から声が掛かるけれど、映画のタイトルだけ聞いてきて、「見てない」と答えると、なぜか、「見てないんだってー」といって、友人だろう。固まりへと帰っていく。
あれは未だに理由が分からない。
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