泡沫の夢物語。-男と女の物語。短編集-

久遠 れんり

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ちょっと大人の、いい加減な恋愛

第2話 バイト先の色男。

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「ありました」
「おう、そうか」

 声の方を、見もせずに答える。
 気配を感じて、そちらを向くと、唇が触れる距離に彼女の顔がある。
「んー。良いですよ。します?」
「なにを? んっ」
「キス。ちなみに私初めてです。随分我慢をしていたんですが。駄目でした」
 あっけらかんと、そんな事を言ってきた。

「良いのか? おれは……」
「良くないです。秘密にしましょう。ばれると、ここへ来られなくなるので」
「秘密ねぇ」
「ええ。二人の……」
 今度は本格的に舌が絡んでくる。

「ぷはっ。これってどう息をすれば?」
「好きにすれば良い」
「そう、なんですね。でも、すごいですね。頭がクラクラして、背中ゾクゾクです。顔も熱いし」
 実際顔が真っ赤だ。

「良かったな」
「むう。クールというか、冷めていますね。少しは…… 魅力ありませんか?」
「あるよ。少し困っているだけで」
「「どうすればいいのか?」」
 声がハモってしまった。

 彼女は、一瞬真顔になると噴き出す。
「あっ、またお邪魔します」
「ああ」
「あっ、秘密ですから」
「ああ」

 そんな感じだった。

 それからも、当然彼女はやって来る。

 クリスマスの時に、なぜか、飲み会を家でやった。
 去年は、外で食事とか言っていたが、あまりの手抜き料理と値段に驚いたようだ。
 店が悪かった様だが。

 適当に、唐揚げとか、料理を作り、ピザを並べ、山盛りパスタ。
 オードブル風の料理を、有名ページを見ながら作った。

 俺の友人を初めて呼んでみた。
 みんな意外と暇だったようだ。

 女の子の方が多く、六対四。
 俺の友人が少ないのが敗因だ。

 帰る奴は適当に帰り、残りは雑魚寝。

 寝静まった頃、栄里がやって来て、キスとプレゼントをくれる。
 かわいくラッピングされた箱の中には、電話番号と、部屋の鍵。
 地図と、ゴム。
 せかして開けさせた後、にまっと笑い、好美の部屋へ帰っていった。
 
「馬鹿だろ。こんなもの貰ったら…… 本気で行くぞ」
 男だからなぁ。

 そこから、秘密の関係が始まる。

 そして、表面上はなにもなく月日は流れる。
 子飼いの、くノ一である栄里から、好美の行動は知らされる。

「バイト先の、イケメン君が懐いてくれて、かわいいみたいよ」
 そんな事を聞いていたから、あれはそいつだろ。

 年下で、唐手暁羅からて あきら二〇歳爽やかと言うより、かわいい系。
 
 記憶を呼び覚ましていると、ガチャガチャと音がして、玄関が空く。

「あれ、起きていたの?」
「まあ、まだ十二時前だしな」
「そうだけど……」
「なんだ? 何か不服か」
 そう聞くと、あわてたように話題を変えてくる。

「ううん? あっ、お風呂へ行ってくる」
「入ったんじゃ無いのか?」
「えっ」
 この顔はどっちの顔かなぁ。

「しようぜ。そっちを向け」
「えっなに?」
 好美はあわてる。

 ソファーに押し倒し、都合良く短めのスカート。
 一気に、下着をおろす。

 多少赤くなって、ぱっくり。
 確定だな。
「なんかしたのか? 赤くなっているぞ」
 そう言うと、あわてたのだろう。
「ちょっと乱暴。やめてよ」
 手を離す。

「もう、一体何?」
「確認をしただけ。していない可能性もあるんでな」
「なに? 何の話よ。いい加減怒るわよ」
「怒っているのはこっち。呆れているのもこっち。荷物を出せよ。ここは、俺の家だ」
 そう言うと流石に理解をしたのか、顔色が変わる。

「えっなに。どうしたの?」
「いやもう三年になるしな。がらにもなく、町中に買い物に行ったんだ」
 そう言って向かい側に座り直して、箱を取り出す。

 プラチナチェーンで、小さいがダイヤの入ったペンダントトップ付き。
 なんかの花の形だ。

「やる。これもだ」
 そう言って、プリントアウトをした写真を並べる。

「だから出ていけ。この、誰だっけ? まあいい。かわいい兄ちゃんとここで暮らされたら、俺でも流石に切れる」
 完全に固まっている。

 だが、写真は一連で、ホテルに入るまで撮っている。
「彼が待っているんだろ、荷物は無理だろうが、出ていくのはすぐで良いぞ」
 せかしてみる。

 一連のものを掴むと、部屋へ走って行く。

 電話をし始めたが、返答は芳しくないようだ。
 段々と言葉がきつく、大きくなってくる。

 うーん聞いていると、一回したからもう良いという感じのようだ。
 モテる男はこれだから。

 まあ、垢抜け、化粧も覚えたが好美は普通だ。
 若いイケメン兄ちゃんからすれば、その他一同。十把一絡じっぱひとからげ

 十把一絡とは、いろいろな種類のものを無差別に一まとめにすることで、よい悪いの区別をしないで、何もかもいっしょくたに扱うことが基本の意味。
  また、数は多くても、価値のないこと。そんな、意味もある。

 まさに好美は、簡単にやれそうな、多数の中にたまたまいた、一人だったのだろう。バイト。どうするのかね。

 まあ話は終わったので、俺は部屋へ戻る。
 それでも、朝には荷物について置き手紙が有り、鍵も置いてあった。

 ぶじに、部屋が決まったようで、三日後には運送屋さんが取りに来た。
 腰に力が入らない様子だが、次に自分が入るため、栄里が一生懸命片付け、見事に好美の痕跡はなくなった。

「いくら何でも、腰が壊れる」
「それはお前が、むきになって片付けたからだろ」
 笑いながらそう言うと、睨まれる。

「どれだけ、むきになっているのか知らないけれど、この二日寝かせてくれず、授業にも行けてないのよ」
「行けば良いのに」
「行けるわけ無いじゃない。自分の顔、鏡で見て」
「見たけど、普通だぞ」
「目の下、熊を飼っているじゃ無い。ちょっと、どうして笑うの? ちょ服。なんで脱ぐの?」

 栄里を小脇に抱えて、俺は言う。
「疲れているなら寝よう」
「違うそう言ってまた、うんっ。素直に寝かせてぇー」

 そうして俺は、体力の限界に挑む。
 なんだか寝られないんだよな。
 意外と、好美の事が応えているらしい。
 栄里には、俺が納得するまで、お付き合いをしてもらおう。

「もう、寝かせてぇ…………」
 
 夜明けに、栄里の声がこだまする。


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読みくださり、ありがとうございます。
若い頃に、本当に良くあるパターンですね。
そうして、みんな経験を積む。と言うことで。
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