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再会は、衝撃と共に
第2話 久美と俊紀
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その後、久美は無意識で、彼を目で追う。
教室で、廊下で、そしてグランドで。
彼は、陸上部にいて、楽しそうに走っている。
この学校は、進学系で、あまり部活には力を入れていない。
そのため、部活動は和気藹々とした雰囲気。
一応地方予選は出場するようだが、インターハイなど、話題になることはない。
その日は、日直で出遅れた。
窓際にある自分の席に座り、片付けを始めた彼を見つめる。
二学期になり、やっと掴んだこの席。
他の部活も片付けを始めて、部室に向かい、姿を消す彼を見つめる。
窓に向いて座った彼女は、彼を見つめながら窓枠の下で、自らの胸と、もっと敏感な所を刺激していた。
遅れたせいで、彼が見えなくなってしまった。
でも、彼の姿を頭の中で、繰り返す。
もどかしい。そう、彼女は、つい外についての警戒を忘れる。
ここは教室。
いつもは、その刹那以外。廊下などの音を気にしていた。
だが、もどかしさに負け、そっち、脳内の彼に意識を集中をしてしまった。
俊紀は部活後。
六限目の教科書とノートを、つい机に入れたことを思い出す。
「ああ、うぜえ」
散々走り込んだ後。
一年生はなぜか三階に教室がある。
ふと見ると、教室に誰かの頭が見える。
「ということは、まだ開いているな」
そうして、階段をトレーニングがてら駆け上がる。
「やるんじゃなかった」
ぼやきながら、教室のドアを開ける。
窓に向き、蹲るような格好の女の子。
「うん? あの子は確か」
クラスでナンバーワン才女の結城久美さん。おまけに美女。
なぜか最近よく会うな。そう思って、教室に入る。
ものすごく真っ赤な顔をして、彼女は固まっていた。
自分の机は、彼女の机から三つ前の右側。
つまり正面に回り、彼女の顔が真っ赤ということが、見えたときには、彼女の手と、スカートの状態が判るということ。
「あー。すぐ出ていくから、ゆっくりして。ごめんなジャマして」
そう言って机から教科書とノートを取り出して、鞄に放り込む。
その時、彼女はガタッと音を立て、背中を丸めていた。
「そんじゃあ」
そう言って教室を出て、静かにドアを閉める。
鈍感というか、経験のない俊紀は判らなかったが、教室のドアが開き、その音に驚き、そっと見た久美だが、そのあまりのことに、息が止まりそうになる。
彼に見られた。
そして声がかかる。
その瞬間に、今までに感じたことのない快感が、全身を襲った。
息ができず、声も出せない。
全身が痙攣して、頭の中で火花がはじける。
それが幾度も襲ってくる。
彼が再び声をかけてくれたが、それどころではなかった。
「くはっ」
ハアハアと肩で息をする。
彼が出て行って数秒後。
「やっと、息ができる」
彼女はさっきのことを思い出す。
絶妙なところでの、絶望と喜び。
それの相乗効果か、とんでもなかった。
全身を襲う倦怠感だが、よろよろと立ち上がり、鞄を抱えて教室を出て行く。
その後、彼女が期待をした彼からのアプローチも、部活後に再び教室に現れることもなく。日は過ぎていく。
その間に幾度も、告白をしようとしたが、アプローチがないということは興味が無いのでは。
そう思って、告白もできない。
ただ、彼を思って、自身を慰めるのみ。
高校での重要行事。
修学旅行の途中、男子が女子の部屋へ入ってきて、大騒ぎをすることもあった。
だが、彼はその中にもいない。
班を組んだ、幾人かの表面的友達。
つまらない。
一人の時間が取れず、日課もできない。つまらない日程をこなして行く。
そんな中で、売店で彼とニアミスをする。
久美が、キーホルダーを選びながら、回転ネット什器を回していると、いきなり逆回転に回り始める。
「すみません。こっちで選んでいて」
「えっ。ああ。結城さん。ごめん」
「あっ。とし、林くん。ええと、どれか良いのがあったの?」
「えっああ。まあ」
そう言って、彼が持ち上げたのは、ご当地キャラのキーホルダー。
「それ買うの?」
「うん。まあ。家族に買おうかと思って」
「家族、兄妹とか居るの?」
「いや、一人っ子」
「そうなんだあ。私もなのよ」
「そうか…… あっ、それじゃあ」
彼は、友人が呼んでいる方へ走っていく。
こちらを見ながら、何か揶揄われているようだ。
悪い事をしちゃった。
でも、久しぶりに話せた。
そんな様子で、奥手な彼女は、歳を重ねた。
当然だが、大学には彼がいない。
高校の卒業式。最後だからと、せめて、連絡先でも交換をすれば良かった。
そんな事を考える。
大学院へは行かず、学部から伝手で、会社へ入る。
だが、彼女の中で何かが足りない日々。
総合職ではなく、一般職を選んだのは間違いだったのか。
でも、同期でも、総合を選んだ人は、とても忙しそう。
会社で仕事だけが生きがいというのも、少し違う気がする。
ふと思い出す彼。
一体何処で、何をしているのだろう?
「――はっ。なに人?」
あわてて急ブレーキを踏む。
発進即急ブレーキ。
問題なく止まれたが、あの人。
一瞬ブレーキが緩む。
ハザードを付け、しっかりパーキング&サイドブレーキ。
「やっぱり。でも、元気そうではないわね」
彼女は、すぐに救急車を呼ぶ。
教室で、廊下で、そしてグランドで。
彼は、陸上部にいて、楽しそうに走っている。
この学校は、進学系で、あまり部活には力を入れていない。
そのため、部活動は和気藹々とした雰囲気。
一応地方予選は出場するようだが、インターハイなど、話題になることはない。
その日は、日直で出遅れた。
窓際にある自分の席に座り、片付けを始めた彼を見つめる。
二学期になり、やっと掴んだこの席。
他の部活も片付けを始めて、部室に向かい、姿を消す彼を見つめる。
窓に向いて座った彼女は、彼を見つめながら窓枠の下で、自らの胸と、もっと敏感な所を刺激していた。
遅れたせいで、彼が見えなくなってしまった。
でも、彼の姿を頭の中で、繰り返す。
もどかしい。そう、彼女は、つい外についての警戒を忘れる。
ここは教室。
いつもは、その刹那以外。廊下などの音を気にしていた。
だが、もどかしさに負け、そっち、脳内の彼に意識を集中をしてしまった。
俊紀は部活後。
六限目の教科書とノートを、つい机に入れたことを思い出す。
「ああ、うぜえ」
散々走り込んだ後。
一年生はなぜか三階に教室がある。
ふと見ると、教室に誰かの頭が見える。
「ということは、まだ開いているな」
そうして、階段をトレーニングがてら駆け上がる。
「やるんじゃなかった」
ぼやきながら、教室のドアを開ける。
窓に向き、蹲るような格好の女の子。
「うん? あの子は確か」
クラスでナンバーワン才女の結城久美さん。おまけに美女。
なぜか最近よく会うな。そう思って、教室に入る。
ものすごく真っ赤な顔をして、彼女は固まっていた。
自分の机は、彼女の机から三つ前の右側。
つまり正面に回り、彼女の顔が真っ赤ということが、見えたときには、彼女の手と、スカートの状態が判るということ。
「あー。すぐ出ていくから、ゆっくりして。ごめんなジャマして」
そう言って机から教科書とノートを取り出して、鞄に放り込む。
その時、彼女はガタッと音を立て、背中を丸めていた。
「そんじゃあ」
そう言って教室を出て、静かにドアを閉める。
鈍感というか、経験のない俊紀は判らなかったが、教室のドアが開き、その音に驚き、そっと見た久美だが、そのあまりのことに、息が止まりそうになる。
彼に見られた。
そして声がかかる。
その瞬間に、今までに感じたことのない快感が、全身を襲った。
息ができず、声も出せない。
全身が痙攣して、頭の中で火花がはじける。
それが幾度も襲ってくる。
彼が再び声をかけてくれたが、それどころではなかった。
「くはっ」
ハアハアと肩で息をする。
彼が出て行って数秒後。
「やっと、息ができる」
彼女はさっきのことを思い出す。
絶妙なところでの、絶望と喜び。
それの相乗効果か、とんでもなかった。
全身を襲う倦怠感だが、よろよろと立ち上がり、鞄を抱えて教室を出て行く。
その後、彼女が期待をした彼からのアプローチも、部活後に再び教室に現れることもなく。日は過ぎていく。
その間に幾度も、告白をしようとしたが、アプローチがないということは興味が無いのでは。
そう思って、告白もできない。
ただ、彼を思って、自身を慰めるのみ。
高校での重要行事。
修学旅行の途中、男子が女子の部屋へ入ってきて、大騒ぎをすることもあった。
だが、彼はその中にもいない。
班を組んだ、幾人かの表面的友達。
つまらない。
一人の時間が取れず、日課もできない。つまらない日程をこなして行く。
そんな中で、売店で彼とニアミスをする。
久美が、キーホルダーを選びながら、回転ネット什器を回していると、いきなり逆回転に回り始める。
「すみません。こっちで選んでいて」
「えっ。ああ。結城さん。ごめん」
「あっ。とし、林くん。ええと、どれか良いのがあったの?」
「えっああ。まあ」
そう言って、彼が持ち上げたのは、ご当地キャラのキーホルダー。
「それ買うの?」
「うん。まあ。家族に買おうかと思って」
「家族、兄妹とか居るの?」
「いや、一人っ子」
「そうなんだあ。私もなのよ」
「そうか…… あっ、それじゃあ」
彼は、友人が呼んでいる方へ走っていく。
こちらを見ながら、何か揶揄われているようだ。
悪い事をしちゃった。
でも、久しぶりに話せた。
そんな様子で、奥手な彼女は、歳を重ねた。
当然だが、大学には彼がいない。
高校の卒業式。最後だからと、せめて、連絡先でも交換をすれば良かった。
そんな事を考える。
大学院へは行かず、学部から伝手で、会社へ入る。
だが、彼女の中で何かが足りない日々。
総合職ではなく、一般職を選んだのは間違いだったのか。
でも、同期でも、総合を選んだ人は、とても忙しそう。
会社で仕事だけが生きがいというのも、少し違う気がする。
ふと思い出す彼。
一体何処で、何をしているのだろう?
「――はっ。なに人?」
あわてて急ブレーキを踏む。
発進即急ブレーキ。
問題なく止まれたが、あの人。
一瞬ブレーキが緩む。
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