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恋は突然降ってくる
第4話 教育と包囲網
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到着すると、ものすごく歓迎されて、お母さんまでお出迎え。
娘に似ず、実に落ち着きのあるご婦人だった。
ただ、品定めされるような視線が、妙に心をかき乱す。
そして娘の登場。
ストッキングを通して見える、膝小僧の絆創膏や、左ほっぺの湿布と肘などのドレッシング材。
ドレッシング材は、擦り傷などの湿潤環境を保ち傷なく早期修復に使われる。
昔と違い、擦り傷などは綺麗に洗い、表面の保湿でケアする。
消毒して乾燥をさせると、完治まで時間がかかるし傷も残る。
ただ異物が入っていたり、皮下にまで傷が達している場合は、病院へ行くこと感染症の危険がある。
「えーと、江西様。おはようございます。これから一週間ご指導をよろしくお願いします」
そう言って、頭を下げてくる。
つい。
「誰だお前?」
口に出してしまった。
「昨日の言動。申し訳ありませんでした」
又頭が下がる。
社長と奥様はニコニコ顔だ。
訳が分からない。
「じゃあ。こちらも短期間ですが、よろしくお願いいたします」
調子が狂うが、頭を下げる。
早速で、今日の予定と納品リスト。
それを、社長監修の元チェックをする。
依頼は、ホームページやメールなどからも来ている。
それを、表計算ソフトに落とし込み納品計画を、まさかだが、今立てる。
結局、午前中を潰し、品物をチェック。
やっと昼から、配達に回る。
基本は、俺が対応して、顔を知っている担当者から驚かれる。
だが一週間だけというと、何故か残念がられる。
速やかに、外回りを終え、帰り着くと翌日分をチェックリスト化。
確認をしながら、車に積み込む。
当然配達の順を考えながら。
翌日からは、午前に配達と、午後からのリスト作業。
ここに来て、やっと急な依頼が来ても、対応ができるようになった。
妙におとなしいと思ったが、この年になって、泣くまでお母さんに尻を物理的に叩かれた様で、少し伸び上がった鼻をへし折られたようだ。
今日までの流れを、リストにして彼の世に渡す。
そして、表計算ソフトの使い方を教える。
規定の品目は、プルダウンで表示できるように作り込んでいく。
本当なら、某会社のデーターベースソフトが良いのだが組んでいる暇がない。
ランタイムで実行ファイルを作れれば良いのだが、あれは確かなくなったはず。
まあいい。
水曜日。
折り返しという事で、彼女に任せる。
基本のビジネス用語集と、対応文例も覚えさせる。
ものすごくいやそうだが、仕方が無い。
そして彼女。自社の製品を覚えていなかった。
これは、ご両親共々絶句をした。
でだ、水曜日には、まるでロボットのような応対をしながら、仕事を進める。
後ろでみながら、チェックをして、適宜指導。
苦情が出るが、ご両親からの許可がある。
パワハラ上等。
叱りつける。
そして、木、金と問題なく仕事を達成。
まだ、業務フローを見ないと危なっかしいが、期間が短い。
そして、土曜日にお呼ばれして、お別れ会とお礼のはずだった。
だが、会場には何故か、我が社の社長。
優社精機の社長が来ており、親しそうに多田野社長と話をする。
「いやあ、江西くんおめでとう」
「はい? ありがとうございます」
なんとなくお礼を返す。
「いやあ、多田野の所を気にはしていたんだ。彼と私は出自が一緒でね」
「そうなんですか?」
「むろん、機械屋としてだが、うちの汎用と違い妙に拘るから、いつまでも小さいし」
「良いんだよ」
「だがまあ、跡継ぎもできたし、技術的なことはこれからだな」
「はっ?」
驚いたのは俺だけ。
美乃まで、もじもじしている。
「どど、どういう事でしょうか?」
「何だ、言っていなかったのか?」
社長が、全員が見回す。
「私は営業の手伝いだと」
「何だ? 今誰か付き合っている方でもいるのか?」
「いえ、いません」
「じゃあ、良いじゃないか。美乃さんも利発そうで、かわいいし」
社長は、こいつの本当を知らないだけだぁ。
そう思いながら、この場に社長を呼んだ真意を理解する。
多田野社長、恐るべし。
ここで言えるのは、時間稼ぎ。
「まだ彼女とも、知りあったばかりですし。少しお時間を頂いて」
「まあ、今時はそうなのかな。良いんじゃないか多田野」
「そうですね。お互いに」
まあ、逃げられないよね。
がっしり固められた周り。
月曜から元に戻ったが、昨日の夜には親から電話が入り、そんな話があるなら報告しなさいと叱られる始末。
そしてだ、よほど両親からの教育が怖かったのか、彼女は変わった。
幾度目かのデートで帰りにうちへ来て飲んでいて、襲われた。
彼女は、親のスケジュールに乗っただけだという。
と言うことは、すべてを把握。
既成事実という事だな。
ここで、俺の心は折れた。
「ああ、もう、いいか」
俺がそう言うと、彼女は察したのか、ニコッと笑い。
さっぱりした感じで、言い切る。
「よろしく」
「そこは、お願いします。だ」
「ごめんなさい」
そして再び。
--------------------------------------------------------
降って湧いた話し。
整ったようでございます。
お読みくださり、ありがとうございます。
娘に似ず、実に落ち着きのあるご婦人だった。
ただ、品定めされるような視線が、妙に心をかき乱す。
そして娘の登場。
ストッキングを通して見える、膝小僧の絆創膏や、左ほっぺの湿布と肘などのドレッシング材。
ドレッシング材は、擦り傷などの湿潤環境を保ち傷なく早期修復に使われる。
昔と違い、擦り傷などは綺麗に洗い、表面の保湿でケアする。
消毒して乾燥をさせると、完治まで時間がかかるし傷も残る。
ただ異物が入っていたり、皮下にまで傷が達している場合は、病院へ行くこと感染症の危険がある。
「えーと、江西様。おはようございます。これから一週間ご指導をよろしくお願いします」
そう言って、頭を下げてくる。
つい。
「誰だお前?」
口に出してしまった。
「昨日の言動。申し訳ありませんでした」
又頭が下がる。
社長と奥様はニコニコ顔だ。
訳が分からない。
「じゃあ。こちらも短期間ですが、よろしくお願いいたします」
調子が狂うが、頭を下げる。
早速で、今日の予定と納品リスト。
それを、社長監修の元チェックをする。
依頼は、ホームページやメールなどからも来ている。
それを、表計算ソフトに落とし込み納品計画を、まさかだが、今立てる。
結局、午前中を潰し、品物をチェック。
やっと昼から、配達に回る。
基本は、俺が対応して、顔を知っている担当者から驚かれる。
だが一週間だけというと、何故か残念がられる。
速やかに、外回りを終え、帰り着くと翌日分をチェックリスト化。
確認をしながら、車に積み込む。
当然配達の順を考えながら。
翌日からは、午前に配達と、午後からのリスト作業。
ここに来て、やっと急な依頼が来ても、対応ができるようになった。
妙におとなしいと思ったが、この年になって、泣くまでお母さんに尻を物理的に叩かれた様で、少し伸び上がった鼻をへし折られたようだ。
今日までの流れを、リストにして彼の世に渡す。
そして、表計算ソフトの使い方を教える。
規定の品目は、プルダウンで表示できるように作り込んでいく。
本当なら、某会社のデーターベースソフトが良いのだが組んでいる暇がない。
ランタイムで実行ファイルを作れれば良いのだが、あれは確かなくなったはず。
まあいい。
水曜日。
折り返しという事で、彼女に任せる。
基本のビジネス用語集と、対応文例も覚えさせる。
ものすごくいやそうだが、仕方が無い。
そして彼女。自社の製品を覚えていなかった。
これは、ご両親共々絶句をした。
でだ、水曜日には、まるでロボットのような応対をしながら、仕事を進める。
後ろでみながら、チェックをして、適宜指導。
苦情が出るが、ご両親からの許可がある。
パワハラ上等。
叱りつける。
そして、木、金と問題なく仕事を達成。
まだ、業務フローを見ないと危なっかしいが、期間が短い。
そして、土曜日にお呼ばれして、お別れ会とお礼のはずだった。
だが、会場には何故か、我が社の社長。
優社精機の社長が来ており、親しそうに多田野社長と話をする。
「いやあ、江西くんおめでとう」
「はい? ありがとうございます」
なんとなくお礼を返す。
「いやあ、多田野の所を気にはしていたんだ。彼と私は出自が一緒でね」
「そうなんですか?」
「むろん、機械屋としてだが、うちの汎用と違い妙に拘るから、いつまでも小さいし」
「良いんだよ」
「だがまあ、跡継ぎもできたし、技術的なことはこれからだな」
「はっ?」
驚いたのは俺だけ。
美乃まで、もじもじしている。
「どど、どういう事でしょうか?」
「何だ、言っていなかったのか?」
社長が、全員が見回す。
「私は営業の手伝いだと」
「何だ? 今誰か付き合っている方でもいるのか?」
「いえ、いません」
「じゃあ、良いじゃないか。美乃さんも利発そうで、かわいいし」
社長は、こいつの本当を知らないだけだぁ。
そう思いながら、この場に社長を呼んだ真意を理解する。
多田野社長、恐るべし。
ここで言えるのは、時間稼ぎ。
「まだ彼女とも、知りあったばかりですし。少しお時間を頂いて」
「まあ、今時はそうなのかな。良いんじゃないか多田野」
「そうですね。お互いに」
まあ、逃げられないよね。
がっしり固められた周り。
月曜から元に戻ったが、昨日の夜には親から電話が入り、そんな話があるなら報告しなさいと叱られる始末。
そしてだ、よほど両親からの教育が怖かったのか、彼女は変わった。
幾度目かのデートで帰りにうちへ来て飲んでいて、襲われた。
彼女は、親のスケジュールに乗っただけだという。
と言うことは、すべてを把握。
既成事実という事だな。
ここで、俺の心は折れた。
「ああ、もう、いいか」
俺がそう言うと、彼女は察したのか、ニコッと笑い。
さっぱりした感じで、言い切る。
「よろしく」
「そこは、お願いします。だ」
「ごめんなさい」
そして再び。
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降って湧いた話し。
整ったようでございます。
お読みくださり、ありがとうございます。
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