泡沫の夢物語。-男と女の物語。短編集-

久遠 れんり

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冷子の秘密と楽しみ

第一話 冷子という女の子

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 ご注意。
 この話、『もし、レイプ魔がシリアルキラーに捕まったら』と、いうテーマで書いています。ご注意をしてください。
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「あらあら駄目よ、大きな血管は切っていないし、まだ生きていられるはずよ」 
 男はこの町へふらっと現れた、仲間内ではケンジと呼ばれる男。
 目の前には、目下もっか笑顔でケンジを解剖している女の子。
「もう、やめてくれぇ……」
「さっき、私がやめてと言っても、やめなかったじゃない。それに、人間は初めてなの。楽しみ」

 ********

 ケンジは、幾人かの女の子と付き合ううちに、その束縛と要望にうんざりした。

 気に入るタイプにそういう子が多いのか、以外と優しい彼に対する甘えなのか?
 とにかく彼は、もううんざりしていた。

 何人目かの彼女と別れた後、夜中にふらついていると、疲れたような様子で歩いている女の子? を発見。

「うーん。三〇は過ぎているな」
 そう思って、見過ごそうとしたが、ふと彼は思う。
 したいだけなら、付き合わなくていいんじゃねえか?
 顔を見られなければ大丈夫? 今着ているのは特徴の無いスエット。

 都合の良いことに、その女は、公園を突っ切ることにしたようだ。
「物騒だねえ」
 足早だが、振り切られるようなことはない。
 すると、とんでもない事に、公衆便所へ入って行く。

 女子トイレだが、こんな時間。
 人だって来ない。

 中へ入ると、個室から声が聞こえる。
「馬鹿な男ねえ、二百万もぽんと出すなんて」
 笑い声まで。
 思わずケンジは、声を出して笑いそうになった。

 なんという幸運。
 相手は、悪い奴だ。
 遠慮しなくていい。

 となりの個室へ潜む。
 ドアは内開き。
 面倒だな。
 だが、出た音がする。

 すっと、背後に立つと襟首を掴む。
 首が絞まり、声が出せ無くなる。

 そのまま個室へ押し込み、背後からさっき拾った木の枝を押しつける。
「おとなしくしろ。声を出すな」
 だが相手はしたたか。

「ふざけん、ぎゃ」
 声を出した瞬間、壁に顔面から押し当てる。

「日本語が分からないのか?」
「おぼえて、ぎゃ」
 もう一度ぶつける。
 鼻血でも出たのか、血が滴る。

 流石におとなしくなる。
 便座に、押しつけるようにして、一気に脱がす。

 疲れていたのは、これのせいか。
 きっと二百万のために、体は張ったんだな。
「ちょっと、やめ」
 ゴンという音。

 相手を痛めつけ、嫌がる奴を屈服させる。
 心の中で、何かが芽生えた。
 楽しい。
 気を使わなくて良い。
 面倒な手順も。

 一応、病気とかは怖いし、財布に入れているゴムを付ける。
 そして、泣き始める声を聞きながら、行為を自分の好きなように行う。

 ついでに小遣いも貰った。
 その日、一人の屑が誕生した。

 ********

 冷子は父親不明で、生まれてから、母の愛も感じたことのない。

 物心ついてから、定期的に家の外に放り出される生活。
 そう、母の恋人が来たときだ。
 小さな頃、行為をのぞき見していた。
 その視線に気がついた母が、追い出し始めた。

 当然、外へ出ても、やる事など無い。
 ある日、列をなす蟻が、何かを一生懸命運んでいた。
 しばらくは、それを眺めていたが、ジャマをしてみることにする。
 他愛のない遊び。

 列の前に指で線を書く。
 そうすると、アリたちはフェロモンを見失い、少し彷徨い列は乱れる。
 だが、すぐに復活をする。

 何か気に食わなかったのか、拾った木の棒で蟻を突っつき始める。

 その内、指で潰す。
 だが簡単には死なない。
 その生命力に、興味を覚える。
 自分より弱い生き物。
 黙って攻撃を受け、頑張るが死んでしまう。

「ふふっ。おもしろい」
 それからしばらくは、蟻で遊んだ。
 巣の中に水を入れてみたり。

 掘り返してみたり、埋めてみたり。

 それから、他の虫も興味の対象となっていく。
 何せ時間はある。朝まで帰らなくても母親は何も言わない。

 この頃、とうに小学校へ入学する歳だったが、冷子はそんな事は知らない。
 少し田舎だったため、見かねた人が食べ物や飴をくれる。
 ただし、それ以上は踏み込まない。
 
 たぶん、五月のある日、男の子が魚を捕って火にかけ、食べる食べないでもめていた。
 男の子達は普通の家の子。

 おもしろがって魚を捕り、生かすすべを知らず。
 遊んでいるうちに魚が死んでしまった。
 その辺の草や枝を集めて、誰かが持っていたライターで火を付け、テレビか何かで見たのか、魚に棒きれを突き刺して、焼き始める。

 当然、はらわたも鱗も取っていない。
 ただ焼く。

 魚は多分、独特の色も付いていなかったので、タカハヤ辺りだろう。

「どうしたの?」
 冷子は声をかける。

 男の子達は、この子。
 冷子のことは知っていた。
「見かけても、一緒に遊んじゃ駄目」
「どうして?」
「何でも良いの。駄目よ」
 この辺りの家では、みんな子供達はそう聞かされていただろう。

 ただ初めて見ると、冷子は表情が乏しいし、薄汚れ匂いもする。
 髪も伸び放題で、母親が適当に切った感じ。
 だが、かわいかった。

 まだ少年達は、恋愛がどうこうは、まだ意識しないが、美醜の判断と恥ずかしさ。その辺りは異性に関して感じることができる。
 幼いながらの、好き嫌いである。

「それ、焼いたの?」
「そう。でもこの川の魚だからな」
 一人の男の子がそう言う。

 グループの中で、多少ガキ大将的なところがある、その子はしょうちゃんと呼ばれていた。
 冷子が来なければ、しょうちゃんは立場の弱い引っ込み思案な男の子に「食ってみろよ」そう言って、けしかけるつもりだった。

「食べれないの?」
「食べない方が良いよ。何、お腹すいているの?」
 ちょっと聞きかじった情報。

「あの子は、ご飯も満足に食べさせられていないみたいよ」
 そう、奥様達の立ち話に話題として、しょっちゅう出てくる。
 先生なら、ここは頻出。試験に出るぞ。
 そんなことを、言いそうなくらい出てくる。

「お菓子が少しあるよ。食べる?」
 そう聞くと、こくんと頷く。

 与えると、むさぼるように食べ始める。
 その姿を見て、小年達の心に何かが芽生える。
 自分たちより弱いもの。

 話し合いが行われ、絶対の秘密として、冷子を飼うことにする。
 ご飯やおやつを分け与える。

 まだ少年達は幼いが、人間は社会的行動を取る。
 群れの中に弱者がいれば、保護をしようとする。
 そんな精神的な働きが、冷子を飼うという行動を起こさせた。

 だが、あまり続くことのなかったこの行為。もし、続いていれば、冷子も、もっと違った人生を送ったかも知れない。
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