泡沫の夢物語。-男と女の物語。短編集-

久遠 れんり

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ある恋愛の話

第3話 再会

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 翌朝彼女は、晴れやかな顔をして、にこやかに帰って行った。
 まだ挟まっている気がすると言いながら、少し変な歩き方で。
 俺が下手だったから、ダメージを与えたのかもしれない。

 結局インスタントの味噌汁と、目玉焼き、ソーセージに千切りキャベツと無難な朝食で、彼女はお代わりまでして帰ったから元気は出たのだろう。

 そして、お互いに…… なんとなく、名乗るのを控えたんだろうなあ。

 会うことはないだろうが、会うことがあればどうしよう。
 どういう行動が、正解だろうか。

 そう思いながら、今日も、人の検体を分析する。
 僕は、臨床検査技師。
 病院でとられたサンプルを分析して、病状の把握や、病原体の有無を調べる仕事。
 最近、病院側も人員削減で依頼は増えてきた。

 意外と忙しく、まあ、ストレスのたまる仕事。
 ミスれば、僕だけの責任では終わらない。
 取り違えで単なる腫瘍が癌と診断されることもある。
 その場合もう一人の患者は良性だと判断され死ぬ事だってある。

 そう。良くあるミスは、検体の取り違え。
 絶対あってはならない。
 幾度も確認し間違いないことを確認し、チェックの印鑑を押す。

 ただ、たまに病院側でのスピッツの間違いもあるから、まあ色々と大変。
 
 そして今日も、仕事帰りに、飲みに行く。
 そう。げっそりとくるんだよ。
 中には平気そうな奴もいるが、どうなっているんだろう。

 そして、あれから三日。酔っ払って、多少ふらつきながらの帰り道。
 ついカラオケがある店に行ったら、久しぶりだと捕まってしまい。帰らせてくれなかった。どうしても、赤い糸が歌いたかったんだよ。

 でだ、何故かこの前のバス停。
 見たことのある背中。
「あー何をしてるんだ?」
 今は、夜一時。

「あの。すみません。会えるかなと思って」
 彼女はうつむき加減にそう言う。

「会いたければ、家の場所は知っているんだ。来れば良いだけだろ」
 そう言うと。
「どうしても、出会い方があれでしたし。ご迷惑なお願いもしちゃったし。ちょっと行きづらくって」

「あーまあ。そうかな? こっちは気にしないけれど」
 そう言うと、暗いところでも分かるくらい彼女の顔が赤くなる。
 
「あの私、服飾関係で、この前まであるメーカーのお針子さんをしていました」
「お針子さんて、今でもそう言うの? 縫製を担当とか」
「そうです。お針子さんの方が通りがいいかと思って」
「俺は、臨床検査技師で、多田仁史。二七歳。今更だけど」

 それを聞いて彼女は焦る。
「名前。この前見て知っていましたけれど、私。名乗っていない」
「そうだね」
「ごめんなさい。わたし、安穏 遙(あんのん はるか)と言います」
 まあ。名は体を表すだね。

 それでまあ、お持ち帰り。

 そして、彼女の話を聞く。
 気になった彼女は、彼氏の消息を探ったようだ。
 そして驚愕の事実。

 今彼は、大学で愛と導きの伝道師。神ノ前導人(かみのまえ みちひと)と呼ばれているそうだ。
 だがその内容は、最悪への伝道者。

 彼は善意で、人を救う。だが、お金があれば人は幸せという友人の助言により困った人を風俗へ沈める導き手へとジョブチェンジしていた。

 彼の見た目から相談者はいるようで、それを嗅ぎつけ彼は説得をする。
「僕はこんなにも、君のことを思って。手を差し伸べたのに。君は目の前の小さな事に拘り、手を払うんだね。どん底だと言いながら、まだ君は人を見下し、差別している。過去から未来。人間はずっと続けてきた営み。それを悪と否定している。君のご両親だって、それをしなければ、君は生まれていない。それを。人間の生物としての根本なのに…… 否定をするんだ」

 まあ大体そんなことを言って、紹介して上前をはねる。

 どこからどう言っても、人を食い物にする駄目な奴になっていたようだ。

 まあ連れが、悪い奴で、『困っている人がいたら連れてきて、悪いようにはしない』
 そんなことを言ったようだが、彼もそこまで馬鹿ではないだろう。
 実は刺されたこともある様だ。

「もう。びっくりしちゃった」

 そう言いながら彼女は、バクバクと買ってきた物をぱくつき、一気にチューハイをあおる。

 そして、酔った頃に言うんだ。
「この前ね。私初めてだったの。責任取れとは言わないけれど、付き合わない?」
 うつむき加減で赤い顔。

 そうなんだよ。
 好みなんだよ。
 目の前にいるんだよ。
 男なら、手を出すよね。

 そうして、三年後。僕たちは結婚した。
 食費と、突然発生する暴走さえ目をつぶれば良い子だ。
 彼女は、腰が軽く。暴走癖がある。

 でもあまあ。良いんだ。
 好みなんだ。仕方が無い。
 繰り返しそれを唱える自分。

 職業柄、ミスは絶対認めてはならないと先輩に言われた。
 ミスは、大きなリスク。
 賠償金は数千万円。
 今、僕は幸せと言い聞かせ、バージンロードを共に歩いて行く。

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 職業によって色々あります。
 知り合いの、臨床検査技師は、学位を取って、今某大学の教授となっています。
 ですが、フィクションです。
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