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伝え方色々
第1話 伝え方色々 その1
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前書きです。
若いとあまりないでしょうが、ある程度の年になると、年賀状が帰って来なかったり、子供さんから返信が来たり。
特に、地元を離れて就職するとよくあります。
条件が違うと、こんな事もあるかもという話です。
当然フィクションですよ。
--------------------------------------------------------------------------------
その日珍しく、スマホが着信を知らせる。
「珍しい」
最近は、通知アプリばかりで、電話などついぞ掛かってこない。
「はい」
「おひさ。わかる?」
年は感じるが、声の判断はできる。
まだ現役。二五から二六くらいだったか、その頃に仲の良かった女。
なんとなく、話が合い。
酒も好きなので、よく飲みに行った。
俺の知り合いと仲が良くなり。結婚して、県外へと出て行った。
幾度かその中で、体の付き合いもあった。
だが、彼女が結婚してから、さすがに付き合いはない。
年賀状も、幾年かは来ていたが来なくなり、こちらもPCの住所録から削除した。
「どうした? 久しぶり」
「今実家に帰ってきているんだけどさ、昔行っていたパチンコ屋まだあるんだよ」
「そうなのか? もうずいぶん前にやめたから、気にもしていなかったよ」
「それでさ、スロット。南側、パチンコとの境側の角台。今結構出ててさ。来る?」
「もうやめるのか?」
「私も久しぶりで疲れてさ。キープしておくから」
「おい。ちょ……」
言う事だけ言って、電話は切られる。
「何だよ一体?」
昔は、そんな事も時々あった。
大体、ピークは終わり、打ち手が変わると回収される。そんな噂を、幾度も実証した。
車で、二〇分。
馬鹿みたいだが、来てしまった。
だが、俺の顔を見ると、悲しそうな顔で手を振り。
「がんばれ。それじゃあね」
それだけ言って、彼女は帰って行ってしまった。
案の定負けて、やはり来るんじゃなかったと思う。
わざわざ呼び出して、顔だけ見て帰る。
どういう心境か?
ふと、夜に酒を飲みながら考える。
確かに、昔と違い老けていた。
だがそれは、お互い様だ。
顔を突き合わせ、話をするくらいはできたはずだ。
だがその理由は、再び電話の着信により理解ができた。
相手は旦那。
向こうは、出入りの営業だったため、担当が変わると会うことはなくなった。
「スマホの履歴を見ていたら、名前があってね」
「ああ。何十年ぶりかに、電話でパチンコ屋に呼び出された。でも顔を見ただけで帰られたぞ。一言も交わさずだ。何があった?」
そう言うと黙り込む。
「あー。――今晩。じゅ…… 十八時から。……通夜だ」
「はっ? ……だれの?」
「彼女だ。無くなる前。幸せそうだったのは。……そうか。連絡はしたが、家族葬だ。じゃあな」
そう言って、電話が切れた。
彼は何を言って……。あっ。そうなのか?
その当時、俺の嫁さんだが、付き合っていた。
その後、彼女は現れた。
まあその時、お互いに思いはしたが、否定し別の道を選んだ。
死んだ原因くらいは、言ってくれても良いのに。
まあ、病気だろうな。
あの時、話をすれば、きっと。
彼女は、踏みとどまれなく。いや、どうだろう? すぐ死ぬ自分。分かっていたなら俺への遠慮か?
「どっちかは分からんが、お休み。――またな、俺も遠くは無いぞ。たぶんな」
そう言って、乾杯する。
あの頃と違い、ストレートは駄目だ。
薄めた、バーボンをあおる。
思いながら、偲ぶのは浮気じゃないよな。
若いとあまりないでしょうが、ある程度の年になると、年賀状が帰って来なかったり、子供さんから返信が来たり。
特に、地元を離れて就職するとよくあります。
条件が違うと、こんな事もあるかもという話です。
当然フィクションですよ。
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その日珍しく、スマホが着信を知らせる。
「珍しい」
最近は、通知アプリばかりで、電話などついぞ掛かってこない。
「はい」
「おひさ。わかる?」
年は感じるが、声の判断はできる。
まだ現役。二五から二六くらいだったか、その頃に仲の良かった女。
なんとなく、話が合い。
酒も好きなので、よく飲みに行った。
俺の知り合いと仲が良くなり。結婚して、県外へと出て行った。
幾度かその中で、体の付き合いもあった。
だが、彼女が結婚してから、さすがに付き合いはない。
年賀状も、幾年かは来ていたが来なくなり、こちらもPCの住所録から削除した。
「どうした? 久しぶり」
「今実家に帰ってきているんだけどさ、昔行っていたパチンコ屋まだあるんだよ」
「そうなのか? もうずいぶん前にやめたから、気にもしていなかったよ」
「それでさ、スロット。南側、パチンコとの境側の角台。今結構出ててさ。来る?」
「もうやめるのか?」
「私も久しぶりで疲れてさ。キープしておくから」
「おい。ちょ……」
言う事だけ言って、電話は切られる。
「何だよ一体?」
昔は、そんな事も時々あった。
大体、ピークは終わり、打ち手が変わると回収される。そんな噂を、幾度も実証した。
車で、二〇分。
馬鹿みたいだが、来てしまった。
だが、俺の顔を見ると、悲しそうな顔で手を振り。
「がんばれ。それじゃあね」
それだけ言って、彼女は帰って行ってしまった。
案の定負けて、やはり来るんじゃなかったと思う。
わざわざ呼び出して、顔だけ見て帰る。
どういう心境か?
ふと、夜に酒を飲みながら考える。
確かに、昔と違い老けていた。
だがそれは、お互い様だ。
顔を突き合わせ、話をするくらいはできたはずだ。
だがその理由は、再び電話の着信により理解ができた。
相手は旦那。
向こうは、出入りの営業だったため、担当が変わると会うことはなくなった。
「スマホの履歴を見ていたら、名前があってね」
「ああ。何十年ぶりかに、電話でパチンコ屋に呼び出された。でも顔を見ただけで帰られたぞ。一言も交わさずだ。何があった?」
そう言うと黙り込む。
「あー。――今晩。じゅ…… 十八時から。……通夜だ」
「はっ? ……だれの?」
「彼女だ。無くなる前。幸せそうだったのは。……そうか。連絡はしたが、家族葬だ。じゃあな」
そう言って、電話が切れた。
彼は何を言って……。あっ。そうなのか?
その当時、俺の嫁さんだが、付き合っていた。
その後、彼女は現れた。
まあその時、お互いに思いはしたが、否定し別の道を選んだ。
死んだ原因くらいは、言ってくれても良いのに。
まあ、病気だろうな。
あの時、話をすれば、きっと。
彼女は、踏みとどまれなく。いや、どうだろう? すぐ死ぬ自分。分かっていたなら俺への遠慮か?
「どっちかは分からんが、お休み。――またな、俺も遠くは無いぞ。たぶんな」
そう言って、乾杯する。
あの頃と違い、ストレートは駄目だ。
薄めた、バーボンをあおる。
思いながら、偲ぶのは浮気じゃないよな。
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