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絶望から始まる幸せ
第3話 予想外
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車を駐め、こそこそと黒のワンボックスへと近付く。
おっ、エンジンが止まっている。最近はドライブレコーダーがあるからGPSが見つかったときに顔が特定される。
エンジンが止まっているなら、衝撃を加えなければ大丈夫なはず。
問題は、取り付け場所。最近は燃料タンクも樹脂のため取り付けられない。
泥が付着しているため両面テープではなく、磁石。ネオジムだが、はがれることはある。磁石は熱に弱い特にオジム磁石は耐熱温度が80度程度。マフラー付近は駄目。
リアバンパーの内側へ、隠す様に貼り付ける。
当然直前に何かを落とし、拾う小芝居も必須だ。
車から離れて、だれかを待つ感じで校庭を覗きつつ、出待ちしている男達をアクションカメラで撮影する。むろんカメラは袖口から時計の上あたりに出してある。
ある程度の解像度と、シャッタースピードが欲しくて大きくなった。そのため苦肉の策。捕まれば盗撮魔だ。ここは高校の校門前。
撮影が済めば、車へ戻り。裏から出てきた未希を乗せ、学校から距離をとる。
監視カメラの付いていない、奇特な立体の駐車場へ車を止める。
狭い後部座席で、未希は制服を着替える。
動きやすいパンツと上はフード付きパーカー。
「どう? 動いた?」
「いやまだ」
「もうっ」
そう言いながら、助手席に移り伊達眼鏡をかける。
長めのウィッグも装備。
「確実に分かれば、警察にも言えるのに」
そう言いながら、さっき撮影したアクションカメラの映像を確認する未希。
「居ないわね。どこか離れた所で見張っている?」
「それとも、車の中に居たかだな。運転席には座っていなかったが、後部座席でお前が来たら、引っ張り込むつもりで待機かもな」
そう言うと、モニターから視線を外し、こっちを向いていやそうな顔をしながら舌を出す。
「げー。やだやだ。示導の優しい手が良い」
そうだよ。こいつ、リハビリと称して、すぐ人に触る。あげく触ってよとお願いだ。
うーん、でも。「気持ち悪くない大丈夫」とか、わざわざ言っているから、本当にリハビリかもしれないが、普通の人ならひどいPTSDとかを煩って、何年も苦しむのが普通のようだ。
未希は愛の力と言っているが、どうかな。
無理をしていないのなら良いが。
ぼーっとしていると、いい加減諦めたのか、動き始めた。
「動いた」
「よし行こう」
「まるっと曝いてやる」
そう言って、拳を突き上げ天井を殴る。
「壊すなよ。壊しても修理代が出せない」
「えーん。手が痛い」
「後で、痛いの痛いの飛んでけって、やってあげるから」
そう言うと、機嫌が直ったようだ。
「うーん。まあ良いか。どっち?」
「市街の方。降ろすのにぐるっと回ったのかね。だとすりゃ賢いが」
そう言って、モニターで方向を見て貰い、追いかける。
「あー。お買い物か」
車が止まったのは、ホームセンター。
「100均が入っている」
「えっ、ホントだ。なら当たりかな?」
モニターに、リア側ドライブレコーダーの映像を出して、後ろを見張る。
「あら、一人だったな」
そう言って未希を見ると、表情がこわばっている。
「あいつか?」
「忘れない。あいつよ。仲間の一人」
「ナンバーも録画したし、顔も撮れている。警察へ出しに行こう」
「追いかけようよ。アジトを見つけないと、余罪もあったんでしょ」
「そりゃそうだが、ばれると面倒になるぞ。そんな怖い顔をするな」
そう言って、こわばっているほっぺをむにむにと解す。
「んもぉ」
「おっ牛か? 上手だな」
「ちぃーがーう。DPS信号を見ながら、離れていれば大丈夫よ。きっと」
「じゃあまあ、シートを倒せるようにしとけよ」
「りょ」
あまりしたくはないが、追跡を始める。
五台から六台ほど離れて追いかける。
だが、行き先が悪かった。
山へ向かい、周りから車が居なくなっていく。
脇道へ少し入り、車を駐める。
「これ以上は駄目だ。目立ちすぎる」
「あーうんそうね。でも止まったわよ」
確かに、移動が止まった。ここから数百メートル先。
「見に行く?」
どうする? どうすればいい。
仲間が居れば、俺だけじゃない。未希が横に居るんだ。
また、危険な目に遭わせることになる。
「俺が見てくる。出たらドアをロックして、警察に電話できる様に準備をしておけ」
「あぶないよ」
「お前と行って、人質に取られたら完全に詰んでしまう。目の前でやられて喜ぶ性癖はない」
「あっ。うん」
納得してくれたようだ。
「行ってくる」
目出し帽その他を、ザックへ詰め込み追いかける。
スマホを出して地図を確認。
「うん? 実写を見ても何もないな」
まあ、そうだよな。相手は警戒をしているんだ。
車が目立ったのか?
前から、奴らの車が引き返してきた。
対向一車線の道路。山側へ避けやり過ごす。
俺の格好はジーンズにラフなパーカー。こんな所に居てもおかしくはない。
行き過ぎろ。心の中で念じる。
山菜でも探している雰囲気を出す。
ありがたい事に、行きすぎてくれる。
車を見ないようにやり過ごしたが、家の車。もっと奥に駐めれば良かった。
「ちっ。気づくなよ」
あわてて戻ると、脇道を塞ぐように駐めてある車。
見つけたのか。用心深い奴だな。
ただのおバカなレイプ犯かと思ったのに。
車が気になり見に行ったようだ。
警戒しながらだから歩みは遅い。間に合う。家の車。エンジンが掛かっているから警戒中か。
未希を怖がらせる結果になってしまったな。
追いかけて、追いついた瞬間になんとなくだが、むかついて躊躇無く後ろからぶん殴った。
人違いなら傷害の犯人。いや本人でもやばいどうしよう。
殴ったあと不安になる。
当たり所が良かったのか、悪かったのか。一発でのびた。
手を、後ろ手に縛り、足も結ぶ。
アイマスクセットアップ。
「さあ、どうしよう。完全に拘束しちゃった。監禁罪だ。参ったな」
財布を見ると、免許が入っていた。
山の麓辺りのマンションかな?
撮影して、元に戻す。他の物も必要そうな情報は撮る。
そして、車を調べに行く。
キーは付きっぱなしで、と言うかエンジンも掛かっている。
ドラレコなし。
カメラが、ビデオ二つ。
後部座席には怪しいバッグ。
中には手錠やら何やら、ごっそり。
他にはない。車検証とかその他も撮影。
もっていたPCへ、急いでSDカードのデータをコピー。
車を移動して、脇道の奥へ駐める。
男を、放り込もうとして気がつく。
スマホ。
ロックは、顔認証で一発。
ついでにデータをコピーする。
USB接続なので、意外と時間が掛かったが、コピーできた。
車に放り込み考える。すると奴が、もそもそと動き始める。
やばい。
とっととドアを閉め、自分の車へ乗り込み、出発する。
「すまない。怖かったな」
頭をなでる。怖かったらしく目に涙がたまっている。
おっ、エンジンが止まっている。最近はドライブレコーダーがあるからGPSが見つかったときに顔が特定される。
エンジンが止まっているなら、衝撃を加えなければ大丈夫なはず。
問題は、取り付け場所。最近は燃料タンクも樹脂のため取り付けられない。
泥が付着しているため両面テープではなく、磁石。ネオジムだが、はがれることはある。磁石は熱に弱い特にオジム磁石は耐熱温度が80度程度。マフラー付近は駄目。
リアバンパーの内側へ、隠す様に貼り付ける。
当然直前に何かを落とし、拾う小芝居も必須だ。
車から離れて、だれかを待つ感じで校庭を覗きつつ、出待ちしている男達をアクションカメラで撮影する。むろんカメラは袖口から時計の上あたりに出してある。
ある程度の解像度と、シャッタースピードが欲しくて大きくなった。そのため苦肉の策。捕まれば盗撮魔だ。ここは高校の校門前。
撮影が済めば、車へ戻り。裏から出てきた未希を乗せ、学校から距離をとる。
監視カメラの付いていない、奇特な立体の駐車場へ車を止める。
狭い後部座席で、未希は制服を着替える。
動きやすいパンツと上はフード付きパーカー。
「どう? 動いた?」
「いやまだ」
「もうっ」
そう言いながら、助手席に移り伊達眼鏡をかける。
長めのウィッグも装備。
「確実に分かれば、警察にも言えるのに」
そう言いながら、さっき撮影したアクションカメラの映像を確認する未希。
「居ないわね。どこか離れた所で見張っている?」
「それとも、車の中に居たかだな。運転席には座っていなかったが、後部座席でお前が来たら、引っ張り込むつもりで待機かもな」
そう言うと、モニターから視線を外し、こっちを向いていやそうな顔をしながら舌を出す。
「げー。やだやだ。示導の優しい手が良い」
そうだよ。こいつ、リハビリと称して、すぐ人に触る。あげく触ってよとお願いだ。
うーん、でも。「気持ち悪くない大丈夫」とか、わざわざ言っているから、本当にリハビリかもしれないが、普通の人ならひどいPTSDとかを煩って、何年も苦しむのが普通のようだ。
未希は愛の力と言っているが、どうかな。
無理をしていないのなら良いが。
ぼーっとしていると、いい加減諦めたのか、動き始めた。
「動いた」
「よし行こう」
「まるっと曝いてやる」
そう言って、拳を突き上げ天井を殴る。
「壊すなよ。壊しても修理代が出せない」
「えーん。手が痛い」
「後で、痛いの痛いの飛んでけって、やってあげるから」
そう言うと、機嫌が直ったようだ。
「うーん。まあ良いか。どっち?」
「市街の方。降ろすのにぐるっと回ったのかね。だとすりゃ賢いが」
そう言って、モニターで方向を見て貰い、追いかける。
「あー。お買い物か」
車が止まったのは、ホームセンター。
「100均が入っている」
「えっ、ホントだ。なら当たりかな?」
モニターに、リア側ドライブレコーダーの映像を出して、後ろを見張る。
「あら、一人だったな」
そう言って未希を見ると、表情がこわばっている。
「あいつか?」
「忘れない。あいつよ。仲間の一人」
「ナンバーも録画したし、顔も撮れている。警察へ出しに行こう」
「追いかけようよ。アジトを見つけないと、余罪もあったんでしょ」
「そりゃそうだが、ばれると面倒になるぞ。そんな怖い顔をするな」
そう言って、こわばっているほっぺをむにむにと解す。
「んもぉ」
「おっ牛か? 上手だな」
「ちぃーがーう。DPS信号を見ながら、離れていれば大丈夫よ。きっと」
「じゃあまあ、シートを倒せるようにしとけよ」
「りょ」
あまりしたくはないが、追跡を始める。
五台から六台ほど離れて追いかける。
だが、行き先が悪かった。
山へ向かい、周りから車が居なくなっていく。
脇道へ少し入り、車を駐める。
「これ以上は駄目だ。目立ちすぎる」
「あーうんそうね。でも止まったわよ」
確かに、移動が止まった。ここから数百メートル先。
「見に行く?」
どうする? どうすればいい。
仲間が居れば、俺だけじゃない。未希が横に居るんだ。
また、危険な目に遭わせることになる。
「俺が見てくる。出たらドアをロックして、警察に電話できる様に準備をしておけ」
「あぶないよ」
「お前と行って、人質に取られたら完全に詰んでしまう。目の前でやられて喜ぶ性癖はない」
「あっ。うん」
納得してくれたようだ。
「行ってくる」
目出し帽その他を、ザックへ詰め込み追いかける。
スマホを出して地図を確認。
「うん? 実写を見ても何もないな」
まあ、そうだよな。相手は警戒をしているんだ。
車が目立ったのか?
前から、奴らの車が引き返してきた。
対向一車線の道路。山側へ避けやり過ごす。
俺の格好はジーンズにラフなパーカー。こんな所に居てもおかしくはない。
行き過ぎろ。心の中で念じる。
山菜でも探している雰囲気を出す。
ありがたい事に、行きすぎてくれる。
車を見ないようにやり過ごしたが、家の車。もっと奥に駐めれば良かった。
「ちっ。気づくなよ」
あわてて戻ると、脇道を塞ぐように駐めてある車。
見つけたのか。用心深い奴だな。
ただのおバカなレイプ犯かと思ったのに。
車が気になり見に行ったようだ。
警戒しながらだから歩みは遅い。間に合う。家の車。エンジンが掛かっているから警戒中か。
未希を怖がらせる結果になってしまったな。
追いかけて、追いついた瞬間になんとなくだが、むかついて躊躇無く後ろからぶん殴った。
人違いなら傷害の犯人。いや本人でもやばいどうしよう。
殴ったあと不安になる。
当たり所が良かったのか、悪かったのか。一発でのびた。
手を、後ろ手に縛り、足も結ぶ。
アイマスクセットアップ。
「さあ、どうしよう。完全に拘束しちゃった。監禁罪だ。参ったな」
財布を見ると、免許が入っていた。
山の麓辺りのマンションかな?
撮影して、元に戻す。他の物も必要そうな情報は撮る。
そして、車を調べに行く。
キーは付きっぱなしで、と言うかエンジンも掛かっている。
ドラレコなし。
カメラが、ビデオ二つ。
後部座席には怪しいバッグ。
中には手錠やら何やら、ごっそり。
他にはない。車検証とかその他も撮影。
もっていたPCへ、急いでSDカードのデータをコピー。
車を移動して、脇道の奥へ駐める。
男を、放り込もうとして気がつく。
スマホ。
ロックは、顔認証で一発。
ついでにデータをコピーする。
USB接続なので、意外と時間が掛かったが、コピーできた。
車に放り込み考える。すると奴が、もそもそと動き始める。
やばい。
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