泡沫の夢物語。-男と女の物語。短編集-

久遠 れんり

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巧巳と華久帆(かくほ)

第2話 そして作戦は始まる

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「はいこれ、資料」
「ありがとうございます」
「今更だけれど、PCは持ってる?」
「はい」
「そうよかった。親と共用とかじゃないわよね」
「自分の部屋にあります。絵も描くので、タブレットを使い出すと、かなりの時間占有するので」
「そうよね。フリーハンド? それともベジェ曲線」
「その時々ですよね。紙に下書きして、スキャナーで取り込んでから起こしたり。フォトショだと重くなるので、悩みますね」
「でもレイヤーを使い出すとやめられないし、ブラシもね」

 そんな話の後。
「後キャンバスの質感が、やっぱり良いですね」
「そうね。水張りしていると、気持ちが入るわよねぇ。画面だとどうしても色が違うしキャリブレーターとか高いしね」

 そんな楽しい話をして、翌日。

「先輩これ」
 差し出されるメディア。
「あげるわよ。どうだった?」
「あー初めて見ました」
「興奮した?」
 凄く嬉しそうに聞いてくる。

「ええ、まあ。ただ、イメージが頭に入らなくって」
「あら? 経験無いの?」
「えーまあ。好きな子はいるけれど、そんな事までは。今ちょっと疎遠だし」
「え゛っ。彼女いるの?」
「いえ。彼女にはなっていません。ちょっと、絵とか文章に対して、偏見があるみたいで。お金にならないならやめろ。勉強しろばかりで」
 そう言うと先輩は、眉間にしわを寄せる。
 こんな顔初めて見た。

「それって、典型的な自分の常識でしかものを図れない人ね。いっちゃ悪いけれどつまんない。あっ。ごめんね」
「いえ、僕もそう思います。なんとか、認めて貰いたいけれど」
「コンテストとかは、いくつか取っているのに?」
「ええ一番じゃ無きゃ、意味がないって言って」
「あらまあ。一般人には理解できないのかしら? わたしならすべて投げ打ってでも応援するのに」
 そう言ってくれるのは嬉しいが、やはり幸笑に期待してしまう。

「ありがとうございます。やはり難しいのでしょうか?」
「期待してみても良いけれど、駄目なら。わたしどう? 趣味はバッチリのはずよ」
「そう。ですね。まあ機会があれば、お願いします」
 ふふ、フラグゲット。
「気長に待っておくわ。それで、秋に文化祭で販売する部誌。テーマを決めて部員にも周知。それと夏に絵画コンクールがあるから、出す人の指導もお願いね」

 指導にかこつけて、スキンシップを彼と重ねる。
 ひかれるかと思ったけれど、彼は自分の疑問に対して貪欲だった。
 わたしは、それにつけ込み、彼とのふれあいを深める。
 それをジャマする、幼馴染みという強武器を持った邪魔者の存在。

 そんなこんなで、忙しくしている中で、部室に忍び込んでいる怪しい後ろ姿を発見。
「あれは、邪魔者Sさんじゃない。良いこと考えちゃった。おとなしくはまってくれるかな?」

 キョロキョロと、山を持ち上げては確認している。
 何をしているのかしら? ああっ。そうか、あれをご所望なのね。
 えっちなことには、興味があるのね。

「無いわね」

 後ろからそっと近づき、割れ目にそって、お尻をなでる。
 そのまま後ろから、そっと抱きつく。

 おっと、叫ばれないように口を塞ぐ。
「泥棒さん、何をお探しかな?」

 わざと、耳に息を吹きかけながら、聞いてみる。

「えっあの。今日、巧巳は?」
「巧巳君は放課後じゃないと来ないし、冊子の隙間にもいないと思うわ。そう思わない? 幸笑ちゃん。 きっと、あなたのお探しの物は、う、ら。の冊子かしら? えっちな気持ちが、あふれて、顔に出ているわぁ」
「っそんなこと」
 いいえ、そう言っても分かるわ。

 そう。しっかり、気持ちが顔に出ている。
「無いと思うの? 鏡を貸しましょうか?」
 そう言うと、多少むっときたようだ。
 馬鹿ね、図星だからむっとするのよ。
 人間はそういう生き物。

「あーいえ。また、放課後来ます」
 あらあら、見栄を張って。

「そう残念ね。部員がいるところでは出せないのに。帰っちゃうんだ。残念。それじゃあね。幸笑ちゃん」
 ほら、人間正直にならないと。

「あー。ごめんなさい」
 やっぱり。
「いらっしゃい。こっちよ」
 どの辺り、でもあれね。変に甘い感じのを見せて、巧巳に手を出されるといやね。
 うーん。ちょっと過激目の引くようなもの、したことない子にはキツい奴。

「ジャンルは何? 男同士? それとも、男と女? それなら、軽い物からハードコアな物まで。それとも、女同士?」
 そう聞きながら、背後から体を抱きしめて、耳たぶを甘噛みする。

「ひっ」
「どう? 人の体っておもしろいでしょう」
 そう言って、色々と触れてみる。
 そこそこ良いからだ。
 でも、経験はなさそう。
 浮気でもしていれば巧巳に囁くのに。彼女は、男に抱かれたことがあるみたいよって。

「こんな触り方なら、どう感じるのだろう、そんなことを考えながら、文字だけで表現をするの。それを読んだ人が、同じように感じてくれるように。ゾクゾクするでしょう」
 
 少し遊んだ後、ジャンルごとに一冊ずつ選んであげた。
 そう、喉の奥で感じるような。穴という穴すべてで奉仕するもの。
 渡すと、彼女はあわてて出ていった。

「どうしたんですか? 搦手部長。嬉しそうな顔をして」
「うーん? ちょっと資料集めに良さそうな子を見つけたの、巧巳君も手伝う?」
 彼女は興味ありそうだから、誰かと経験して貰って彼に見せるのも良いけれど、さすがにあからさまだと、嫌われちゃうかしら。

「裏もの用でしょ。エッチするのはちょっと。触られた感想言うのもかなり恥ずかしかったんですから」
 そう言って彼は思い出したのか、顔が赤くなる。

「私もきちんと、説明をしたでしょ」
「それは、そうですけれど」
「将来役に立つわよ。きっとね」
 そう、あなたの好きなところは、すべておぼえたわ。
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