泡沫の夢物語。-男と女の物語。短編集-

久遠 れんり

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ひまと到 夏向け 恐 グロ

第2話 不覚

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 夏向けと思いながら、エグい方に行ってしまった。
 カニバリズムな話が、入っています。
 ご注意ください。
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 朝目が覚める。
 枕元の…… すまほ。
 此処何処? あっいや。思い出した。
『君明日休みだよね』『はい』『じゃあ泊まろう』
 昨夜の会話。

 脳みそを、ワインで流し込んだのがいけなかった。
 隣で寝ている彼を起こさないように、ベッドから出る。
 酔ってはいたが、いたしてしまった。
 しっかり感覚はある。

 彼ってば本当に、隅から隅まで私を味わった。
 その切ない、刺激にやられた。
 触手のようなうねうねが、全身なめ回し、私からあふれる物を飲み干して。
「あー。はずかし」
 おかげで、いきまくってしまったわよ。
 でも、夢の中でも、今もじいちゃんが駄目だといっている。
 こんなに、絡んでくるのは、珍しい。

 彼氏が出来て、絡んでくるときはあった、そんなときは、大抵喧嘩別れ。でもその時でも、ここまでひどくはない。

 シャワーを浴びて、体を拭き。じっと見る。
 彼が、時々していた仕草。
 私の毛。

「剃った方が良いのかしら? でもなあ」

 着替えて、浴室を出る。

「おはよう。よく眠っていたね。気分はどう?」
「おかげさまで、すっきりしました」
 そう言うと彼は、ニコッと返してくる。

「コーヒーと紅茶どちらが良い?」
「あっすみません。自分でします」
「いいよ。昨日と今日。君は僕にとってのお客さん。つまり、僕がホストさ」
 そう言ってテキパキと準備が始まる。
 私が入れようとした紅茶。

 美味しい紅茶を優雅に頂き、食事はルームサービスではなく、レストランに降りていく。
 此処のオムレツが好きで、ルームサービスでは駄目だという事だ。
 火が通り過ぎるらしい。一度、お願いしてみたが駄目だったようだ。
「やはり、できたてのこの感じ。良いね」
 そう言って、白いテーブルクロス、ならぶ料理。優雅な姿。
 恐縮する私、手をふり首を振り警告を出すじいちゃん。

 そして、私を恐縮させている、周辺からの視線。
 当然誰も、口には出さないが、どうしてあんな女と、そんな声が聞こえてきそう。

 目が合うと、フンて言う感じに目がそらされるのよ。
 女の人って怖いわ。

 でも私は、懲りずにもう一度彼と、同じ事をする。
 花火の見えるレストラン。
 誘われて、行くと言ってしまった。

 今回は、つい下の手入れもしてしまった。彼にどうこうじゃなく、夏だし。
 食事の後、かれにしゃぶり尽くされ、ぐったりなる。
 味わいつくされた感じ。
 そして、朝。

 シャワーを浴びていて、ふと気がつく。
 キスマークと、歯形がついている。
 気がつかなかった。
 彼に文字通り、美味しく頂かれちゃった?
 もう。

 そんな馬鹿なことを考え、一人で笑う。

 シャワーから出ると、彼が光の中で、ゆっくりと紅茶を飲んでいる。
 絵になる姿。
 軽く足を組み、ゆっくりとカップを傾ける姿。


 そして、その一週間後。
 案内を受ける。
『家に来ないかい? 週末。美味しいものを食べて、ゆっくり過ごそう』
 それに、返事をして、行くことにする。
 相変わらず。じいちゃんはバタバタとしている。

 でも、行っちゃった。
 彼の家。マンションの方かと思ったら、本当の家。
 こちらのマンションは、仕事用に借りているだけらしい。
 週末は、本当の家の方で、ゆっくりとするらしい。

 彼は笑って、『古いだけだよ。掃除も大変』そう言って笑う。
 周りに女の子がいれば、撃ち抜かれた人が続出だろう。
 凄く機嫌が良いのか、彼の表情が、いつもにまして明るい。

 車で、小一時間。
 人里を離れ、田舎に入っていく。
 案内看板に餓鬼沢村? とか書かれている。

「この辺りって、物騒な名前ですね。さっき餓鬼沢村って書いていましたよ」
「ああ、色々な所に伝承があるからね。鬼とか、後土着の伝染病とか」
「はー。沢がついているから、ありそうですね」

 いよいよ、家が少なくなってきた。
 だが、すぐに立派な門が見え。車が前に止まる。
 彼が、ボタンを押すと、門が開き車が静かに走り始める。
 そして門に入った瞬間。

 私の目には、十数人の女の人が見え、口々に言葉を紡ぎ出す。
『ここは駄目』『帰りなさい』『彼は本当に人を食べるの』『私たちは食べられてしまった』『死にたくないなら帰れ』

 眼窩(がんか)のみの目。そこから、涙があふれている。
『食われた』『目玉は美味しい』『彼が言うの』『君はやはり美味しい』

 その瞬間。彼女達の記憶が頭の中でよみがえる。
 食事の中に睡眠薬。
 裸にされ、椅子に固定される。
 腸内洗浄され。
 その後、水だけを飲まされ。
 四肢から順に、そぎ切りされていく。
 自身の前で、順に料理され食われる。

 そして彼が言う言葉『うん。やはり君は美味しい。ありがとう』

 そうして、残りは傷む前に冷凍される。
 その日の気分で換えられるように、今でも吊るされているの。
 その画が、脳内に浮かぶ。

「止めて」
「おっと、どうしたんだい」
 そう言う彼の表情は、本当に楽しそうで。
 横でじいちゃん腕組んで怒っているし。
 じいちゃん、皆さん助けて。警察を呼んでくるから。

 そう言って車から、飛び出す。

「あら、彼女もしかして見える人か。そんなもの。物語だけかと思ったが。まずいかな」
 彼はギヤをドライブに入れ、アクセルを踏み込む。
 タイヤを滑らしながら、Uターン。私を跳ね飛ばす為に、突っ込んでくる。
 ところが、いきなり横滑りし立派な門柱に勢いよくぶつかる。

 古い車だったのか、エアバックはなくもろに顔面をぶつけたのか仰向けになった顔は血だらけだ。
 幽霊達が言ったことを信じて、私は、電波の入るところまで、マラソンした。
 そう。きっと五キロメートル以上走ったわよ。パンプスで。靴擦れはするしつま先は痛いし。

 警察が来るまで、たっぷり三十分以上待った。
 理由としては、当然豹変した彼に、車で轢かれそうになって逃げたと言った。

 彼の家に逆戻り、これで警官が偽物なら、きっと超大作ねと思いながら家の前に行くと、壊れて止まった車。そこから這いずり、開きっぱなしの玄関ドアへ続く跡。

 警官達は、中に入り声をかける。
「おとなしく出てこい」
 そして、警官の悲鳴。

 彼は、十数体の女の人に囲まれて椅子に座っていた。
 彼の息はまだある様だが、その女の人たちは、マネキンではなく剥製。

 そして、その家では、霊たちが言ったように、色々な物が見つかる。
 でもそれは、報道もされることなく、無かったことになった。
 
 私も警察に呼ばれて。
「口外しないように。それが君の為だ」
 そんな事を言われた。

 警官はこそこそと、少し震えながら言ってくれる。
「世の中には、平民は知らない方が良い世界があるんだ。君はたまたま助かった。喜びたまえ」
 
 後日、私の口座に、一千万円ほどの入金があった。
 彼の名前で。
 私は、その意味を考え、ぞっとする。

 彼は今も、美味しそうな娘を、探しているのだろうか?


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 夏向けと言うことで、一番怖いのは人間ですよね。
 最近物騒になってきたし。
 最初は家に行くと、幽霊となった女の子が立っている話だったのですが、まあ。
 多少賑やかに。
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