泡沫の夢物語。-男と女の物語。短編集-

久遠 れんり

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葵と蒼 ばっど

第3話 意外と良いね

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 帰りに、お誘いに乗ってみる。

 住んでいる場所。ここは、高そう。

 学生向けと言うけれど、ロビーにインターフォン。
 キョロキョロしながら、彼について行く。

 中へ入ると、1K。
 広さは、あまり変わらない。いや、収納が微妙に多い。
 むむむと、品定めして、値段を聞くと十万円。
 なんと、家より、三万円も高い。節約すれば一月の食費。

 そうしていると、音が聞こえ、風呂が溜まったと教えてくれる。

 飲みかけた、チューハイを、テーブルに置き。言ってみたかった台詞を言ってみる。
「じゃあまあ。入りますか。一緒に入る?」
 驚くだろう反応を期待する。
 だが彼は、予想を裏切る。

「良いの? じゃあ」
 えっ。驚かされたのは、私だった。

「えっ本当に?」
 聞き返してみたが、返事は同じ。
「言ったのは君。さあ行こう」
 呆然とする私を、風呂場へ向けて、背中を押して連れて行く。

 躊躇していると、彼は、上だけを脱いで、人を見る。
 見られていると意識すると、余計に恥ずかしい。
 すると、軽く抱きしめられ、優しいキス。
 そのまま、耳元で囁かれる。
「脱いで。それとも、おれが脱がす?」
 
 思わずゾクッとくる。
 ふっと耳に息が掛かると思ったら、カジカジペロペロとし始める。
 なっなにをするのよ。
 そう思ったら、徐々に下がってくる。
 耳から、首へ。

 ゾクゾクが止まらない。
 そうしていると、いつの間にか、上が脱がされていた。
 彼は、私の肌を確かめるように、指を滑らせ、口もどんどんキスをしながら下がっていく。はっ。気がつけば、下のきわどいところにまで口が。
 私いつの間に下を脱いだの?

「まっ。まって。お風呂に入ってから」
 何とかそれだけを言う。
「んー。良いよ。すでにノリノリだね。欲求不満があふれてる」
 彼は自分の手についた、私の物を見ながらそんなことを言ってくる。
 冗談じゃ無い。

 服を脱ぐだけで、かるくいったわよ。
 何これ。こいつもしかして、危険な奴? ホストとか、小説でよく見るインキュバスとか。
「ばか。…… 入る」
 あわてて、力の入らない足を奮い立たせ浴室に入る。
 ざっと、シャワーを回しかけ、座り込む。

 頭の奥が、じんじんとする。
 背中にゾクゾクが走る。
「はうっ」
 予想以上というか、このままして、だいじょうぶなの私?
 浮気者の、彼より何倍もくるんだけど。

 多少気持ちが落ち着いたと思ったのに、背中側でドアが開く。
 あーきた。
 意識すると、少し緊張をする。身構えると。声が聞こえる。
「お湯をかけるよ」
 声をかけられ、背中にシャワーを感じる。

 そして、予想外な質問。
「髪はどうする? 洗う?」
 少し考えるが、時間が取れる。
 その間に落ち着こう。

「うん。居酒屋さんの油の匂いとか、ついているし」
「了解」
 そしてまた予想外。
 背中に、手が添えられ、仰向けに倒れていく。
 えーと、首の後ろの腕は何。
 すぐ横に。彼の顔。煌々と輝く浴室灯。

「えっなに?」
「髪。洗うんだろ」
 しらっとそう言われ、抱っこ状態で、髪にお湯がかけられる。

 これは。
「あー楽だけど、むっちゃ恥ずかしい」
 つい本音が、出てしまう。

「大丈夫。俺も裸だから」
 そして、とんでもない回答。だから何よ。

「それは、そうだけどぉ」
 頭皮をマッサージされる。全部が優しい。

 シャンプーをし流して、その後。
 はい。トリートメントですか。

 毛先から塗り込み、しばし待つ。
「トリートメント。浸透の間に、お体を洗います」
 はっ。体?今から、ちょっと待って、頭を洗われただけでもう動けない。

 きっと、途中でいったのも気がついているのよね。
 洗っている間、背中に彼を感じて。

 ああ。彼の手が、洗うといいながら首から肩へマッサージ。
 気持ちが良い。ヌルヌルした感じが良い。
 肩から腕に。
 いつの間にか、体が起こされ彼の膝の中にすっぽり収まっている。
 髪の毛には、タオルが巻かれている。
 
 けれど、私の目の前に鏡があるのよ。
 そこには、だらしない私の顔。
 見たことのないような。
 そして、彼の手は、腕を洗い終わり、体へ。
 私の体を、ヌメヌメしながら動いていく彼の手を、鏡で見る。
 すでに全身力は入らない。

 体の前半分が、終わるとそっと寝かされる。
 今度は、足先からヌメヌメと洗っていかれる。
 足の指。あんなに感じるとは知らなかった。
 指の股の間。
 彼の手の指が、分け入ってくるときに、思わず声が出る。
 そして順に、マッサージをしながら、上に。

 こんな、明るいところで。
 まあ良いや。そして、大事なところも洗われ、お湯が流される。
 彼に引き寄せられ、おなかの奥をせり上がってくる感覚。

 再び、彼のを受け入れた状態で、対面で抱っこ。
 彼の手は、背中を洗っているのだろう。
 ヌルヌルした感じが背中を移動する。
 そして、お尻も当然。
 この格好だから、洗いやすいでしょう。

 ぬっと何かが入ってくる。
「あっ」
「力を抜いて」
「はっ。何なんで」
「考えない。ほら」
 そう言って、また首筋にゾクゾクが来る。

 キスもくる。口にも胸にも。
 そして幾度目かの硬直。

 そして、それに気がついた彼は、トリートメントを洗い流し。
 床に寝かされる。
 ぐったりして、薄目を開けると、彼は嬉しそうに自身の体を洗っていた。
 そして、私を抱っこし。
 湯船に。浸かる。

「葵って、感じやすいんだね。嬉しいよ」
 そう言って、同じ色を名前に持つ蒼は、嬉しそうに笑っていた。
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