泡沫の夢物語。-男と女の物語。短編集-

久遠 れんり

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穂とめぐみと和音 はっぴいと?

第7話 諦める? そんなわけ無いじゃない

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「ふふん。私なんか、すでに彼に生活費を貰っているの」
「えっ。愛人?」
 めぐみが驚く。
 ふりで、手でかくした口は笑っている。
 プレゼントの、アドバンテージは大きいようだ。

「違うわよ。まあ一緒に暮らせるなら、それでも良いけれど」
「じゃあそういうことで、結婚するのは、お姉ちゃんということで、たまになら許すわ」
「ちょっと、それは違うでしょ」

 二人がじゃれ合っている間、俺は悩んでいた。
 確かに和音にひかれていたし、淡い恋心もあった。
 でも明確になった恋心は、めぐみに対して。
 それは間違いのない事実。
 知りあってからの期間も時間も関係ない。

「なあ。和音」
 その言葉で何かを感じたのか、抱えてきている腕に力が入るのが分かる。
「悪いけれど、ずっと気になってはいたし、嫌いか好きかで言うと好きなんだけど。明確に、今はめぐみの方が好きなんだよ。同棲まで考えて、好きだって言ってくれたのはありがたいけれど。こうして、二人といるとその気持ちがはっきりした。ごめんな」

 そう言うと、和音の動きが止まり。
 ボロボロと涙が出始める。
「ねえ。嘘よね。本当に?」
「あーうん。なんだか、気持ちが決まっちゃった」

 すっと、俺の横から離れ、めぐみが和音の背中から抱きしめる。
「ごめんね。和音。ひどい言い方になるけれど、諦めて。姉妹で嫌いになりたくないの」
 そう言って抱きしめ、頭をなでる。

 和音は嗚咽をしながら、肩をふるわせる。床に涙がこぼれる。
「ひどいよ。これじゃあ。お母さんが言っていたとおり『巡恋歌』じゃないの」
 彼女は、涙を服の袖で拭い。泣きはらした赤い目で、じっと見つめながら聞いてくる。
「穂。正直に言って。私の告白が、昨日だったらどうだった?」
 そう聞かれて俺は非常に困った。結果というか答えは決まっている。即答できるがそれを言って良いのか?
「ああっ? そりゃ。めぐみには悪いが、受けたというかこっちから頼んだと思う」

 おれがそう言うと、涙を思いっきり拭い。いまだ涙で濡れた顔で、こっちを向き、ニコッと笑いながら、和音は立ち上がる。
 そして、不気味に笑い始める。
「ふふふっ。そうよ、違いは。たった、それだけなの。私は諦めない。『明日へ続く道』を心に、明日へと突き進むわ」
 そう言って、拳を天高く突き上げる。
 まるで世紀末の覇者。その最後のようだ。

 こっちから見上げると、天井から降り注ぐ蛍光灯の光に包まれ。神々しい。

 決めポーズを解除すると、ストンと座る。
「さっ。じゃあいいわ。ケーキ食べて、お風呂へ入って寝ましょ」
「「えっ」」
「帰るんじゃないの?」
 めぐみが、びっくりして聞く。

「どうして? お母さんには、同棲するって言って出てきたし、帰れるわけないじゃん。それに、一緒に寝ていたら間違って、手を出すかもしれないし。子どもが出来たら勝ちよ」

「穂。間違えないようにしてね。和音。絶対私に似せてくる気がする。ある程度なら化粧で何とかなるし」
「あーうん。努力する」
 そう髪型や服装の違いで、今現状。明確に違うが、顔は凄く似ている。
 そっとめぐみの耳に、口を近づけ囁く。
「病院早く予約して、ピアスを付けよう」
「あーうん」

 この後、お母さん直伝の家庭料理等、生活能力でめぐみは追い込まれていくことになる。二人は、無事結婚までたどり着けるのか。


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 どうでしょう。
 モヤモヤが止まらない最後。

 描いていて、『明日へ続く道』を胸に最初は、和音が新しい明日に向けて歩き出すという感じだったのですが、一転小悪魔にしました。
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