泡沫の夢物語。-男と女の物語。短編集-

久遠 れんり

文字の大きさ
上 下
19 / 204
穂とめぐみと和音 はっぴいと?

第7話 諦める? そんなわけ無いじゃない

しおりを挟む
「ふふん。私なんか、すでに彼に生活費を貰っているの」
「えっ。愛人?」
 めぐみが驚く。
 ふりで、手でかくした口は笑っている。
 プレゼントの、アドバンテージは大きいようだ。

「違うわよ。まあ一緒に暮らせるなら、それでも良いけれど」
「じゃあそういうことで、結婚するのは、お姉ちゃんということで、たまになら許すわ」
「ちょっと、それは違うでしょ」

 二人がじゃれ合っている間、俺は悩んでいた。
 確かに和音にひかれていたし、淡い恋心もあった。
 でも明確になった恋心は、めぐみに対して。
 それは間違いのない事実。
 知りあってからの期間も時間も関係ない。

「なあ。和音」
 その言葉で何かを感じたのか、抱えてきている腕に力が入るのが分かる。
「悪いけれど、ずっと気になってはいたし、嫌いか好きかで言うと好きなんだけど。明確に、今はめぐみの方が好きなんだよ。同棲まで考えて、好きだって言ってくれたのはありがたいけれど。こうして、二人といるとその気持ちがはっきりした。ごめんな」

 そう言うと、和音の動きが止まり。
 ボロボロと涙が出始める。
「ねえ。嘘よね。本当に?」
「あーうん。なんだか、気持ちが決まっちゃった」

 すっと、俺の横から離れ、めぐみが和音の背中から抱きしめる。
「ごめんね。和音。ひどい言い方になるけれど、諦めて。姉妹で嫌いになりたくないの」
 そう言って抱きしめ、頭をなでる。

 和音は嗚咽をしながら、肩をふるわせる。床に涙がこぼれる。
「ひどいよ。これじゃあ。お母さんが言っていたとおり『巡恋歌』じゃないの」
 彼女は、涙を服の袖で拭い。泣きはらした赤い目で、じっと見つめながら聞いてくる。
「穂。正直に言って。私の告白が、昨日だったらどうだった?」
 そう聞かれて俺は非常に困った。結果というか答えは決まっている。即答できるがそれを言って良いのか?
「ああっ? そりゃ。めぐみには悪いが、受けたというかこっちから頼んだと思う」

 おれがそう言うと、涙を思いっきり拭い。いまだ涙で濡れた顔で、こっちを向き、ニコッと笑いながら、和音は立ち上がる。
 そして、不気味に笑い始める。
「ふふふっ。そうよ、違いは。たった、それだけなの。私は諦めない。『明日へ続く道』を心に、明日へと突き進むわ」
 そう言って、拳を天高く突き上げる。
 まるで世紀末の覇者。その最後のようだ。

 こっちから見上げると、天井から降り注ぐ蛍光灯の光に包まれ。神々しい。

 決めポーズを解除すると、ストンと座る。
「さっ。じゃあいいわ。ケーキ食べて、お風呂へ入って寝ましょ」
「「えっ」」
「帰るんじゃないの?」
 めぐみが、びっくりして聞く。

「どうして? お母さんには、同棲するって言って出てきたし、帰れるわけないじゃん。それに、一緒に寝ていたら間違って、手を出すかもしれないし。子どもが出来たら勝ちよ」

「穂。間違えないようにしてね。和音。絶対私に似せてくる気がする。ある程度なら化粧で何とかなるし」
「あーうん。努力する」
 そう髪型や服装の違いで、今現状。明確に違うが、顔は凄く似ている。
 そっとめぐみの耳に、口を近づけ囁く。
「病院早く予約して、ピアスを付けよう」
「あーうん」

 この後、お母さん直伝の家庭料理等、生活能力でめぐみは追い込まれていくことになる。二人は、無事結婚までたどり着けるのか。


----------------------------------------------------------------------------------------
 どうでしょう。
 モヤモヤが止まらない最後。

 描いていて、『明日へ続く道』を胸に最初は、和音が新しい明日に向けて歩き出すという感じだったのですが、一転小悪魔にしました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

処理中です...