泡沫の夢物語。-男と女の物語。短編集-

久遠 れんり

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穂とめぐみと和音 はっぴいと?

第6話 久しぶりの再会

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「ねえ、お母さん」
「なあに、本気で同棲でもするの?」
 お母さん。何言ってんだよ。

「うん。する。お試しで」
 和音。君も何を言っているの?
「なら良いけど、まだ孫はいらないから、避妊はしなさいよ。じゃあ、穂君よろしくね。食費位は、自分で稼ぐでしょ」

 俺は何が起こっているのか分からなかったが、いやいやちょっと待て。
 今日は一体、なんて日だ。
 やっぱり、明日死ぬんじゃ。

 そんなことを考えていたら、食べ終わった皿を持ち、彼女が走って行く。

 あっけにとられて、見ていると、声が掛かる。
「あの子、ああなったら絶対引かないから。よろしく頼むよ。まあ付き合う気がないなら、出来れば手は出さないでね。エッチすると、どうしても情が深くなるから、別れたときに傷が深くなるし」

「ああ。はい。でも良いんですか?」
「言っただろ。あの子は駄目って言うと向きになるから。しばらく好きにさせるのが一番なんだよ。しかし、同じ男に一目惚れか。遺伝子というのは凄いね。もし、めぐみのことで、剛が何か言ってきたら、浮気をしていたあんたには、文句を言う権利はないって言ってやりな。どうせこれから、めぐみに連絡するんだろ。そうしたらきっと、めぐみも一緒に暮らすことになる。ひゃ、いやはち、いや70パーセント位はそうなるだろう。まあよろしくね」
「はあ。分かりました」

 まあお母さんの言うとおり、めぐみに電話をした。
 案の定。否応なく。「行く」そう言って、電話が切れた。

 お礼を言って、店を出る。
 家に向かって、帰るが、独身者用の2K。最悪彼女達に、一部屋使ってもらえば良いか。

 そう思いながら帰ると、マンション近くで、うろついているめぐみを見つけた。
 こっちを見つけると、間髪置かず声が掛かる。
「あなたね。私のそっくりさん。……あれ?」

「言いたいことは分かるが、先に家へ入ろう」
「あーうん」
 めぐみは、じっと和音を見る。
 和音は俺の左手を組んで離れない。
 和音は事情が分かっているからな。少しずるいか。

 実は久しぶりの姉妹の再会なので、ケーキも買ってきた。
 投げ合わないことを祈ろう。

 部屋へ入り、ローテーブルの所に座って貰う。
 二人にお茶を出す。
 その間も、不思議そうな感じで、見つめ合っている。

「さて、これケーキ」
「「ありがとう」」
 声がハモる。

「こっちが大学でのクラスメイト。辻田和音ちゃん。それでこっちが、岸田めぐみちゃん。和音はもう知っているからあれだけど、めぐみ。この子は、君の妹だ。俺もさっき知ったばかりだけど。それで、今朝行った喫茶店は、お母さんのお店のようだ」
 薄々気がついていたようだが、めぐみはやっぱりという顔になる。

「あーうん。そうじゃないかと思ったの。穂と一緒に現れたときびっくりしたわ」
「それでまあ再会のケーキ。ショートだけどね。まだいくつかあるから、交換も出来るよ」
 今目の前には、イチゴのショート。和音が譲らなかった。

「あの喫茶店。お母さんの店だったんだ。あの近くには幾度か行ったのに、入ったことがなかった」
「実は、別れたときに、お腹に子どもがいて、純て言う妹がいるのよ。おっ。お姉ちゃんは会ったことがないけれど」
「妹? 純」
「純ちゃんはこの子だよ。僕達が行ったときに飲み物を持ってきた子。改めて今度会いに行こう」
 スマホで写真を見せる。

「うん。あー和音は元気にしていた? 別れたときに、お母さんが怒っていて、お父さんにはあわせないとか言って、今まで会えなかったけれど」
「まあ一緒だと思う。高校卒業まで友達がいなかった位」
「あーやっぱり。うちもお父さんが仕事があるから、色々な行事。昔は悲しかった。中学からは再婚してあの人がいたけど、頼まなかったし。高校から寮に入って、エスカレーター的に今短大」

「短大。エスカレータって、あの女子高」
「そうそう。一応今は共学だけどね。あそこは寮があったから、どうしても家に居たくなくて。いまはまあ、それほどでもないけれど」
「そうなんだ」
 凄く、表面的には平和に来ている。
 ちょこちょこ、ケーキも食べつつ。何故か、間間に二人が俺を見て、にへっと笑う。

「それで、今は大学に入って、友達も出来たし。クラスメイトに恵まれたし。幸せよ」
 わざわざ寄ってきて、俺に腕を組む。
「私もね、昨日まで。人生つまらなかったの。でもね、今日運命の出会いがあって、すごく幸せ」
 そう言って、俺の両側でにらみ合う。

「そっ。それは良かったわね。でもね、大学に入ってから、彼とはすぐ知り合ったの」
「そうなの? でも今朝、間違えて私に声をかけるくらいしか、認識されていなかったし、私の方がかわいいって、穂は言ってくれたもの。キスだってしたし」
「キスぐらいしたわよ。さっきだけど」
「さっき。穂。まあ、襲われたのなら、心の広い私は気にしないわ」
 時間的な違いからか、めぐみに余裕がある。

「襲っていないわよ」
「どんな状況よ」
「あー姉さんとキスしたって言うから、ちょっと不意打ちで」
「同じじゃない」
 めぐみの顔が、怪訝そうな顔になる。

「違うし。それにお母さんにも同棲して良いよって、許可貰ったし」
「ぐっ。我が母親ながら、なんていい加減な」
「お父さんには言ったの?」
「言ってないけど、言うわけないじゃない。あの人はもう自分の家庭があるの。私だって子どもじゃないし。それに、あっ」
 そう言って取り出したのは一緒に買ったピアス。

「どう? 穂からプレゼント。すぐに外れるイヤリングと違って、ぴ・あ・す。すぐには外れないのよ」
 そう言って、勝ち誇る。
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