上 下
4 / 186
美樹と大和 はっぴぃ

第4話 歪んでいた元彼

しおりを挟む
 寝ぼけているようなので、そっと寝かせ、悩む。
 すると、目が合う。

「目が覚めたか? 薬。飲み薬と座薬どっちが良い。効き目は座薬の方が早いが、自分で尻に入れられるか?」
「ありがとうございます。入れてください。お願いします」
 そう言って、いきなりこっちにお尻を向けると、躊躇無くズボンと下着を脱ぐ。
 そのスムーズな動きに驚く。
 母さんが言った、つんつるてんの意味も分かった。

「いや、思いっきりが良いなあ。ちょっと冷蔵庫に行って、取ってくるから」
 そう言って、部屋を出て行く。

 戻ってきても、そのままだった。
 まじまじ見るのは良くないが、気がつく。お尻に無数にある。何かで叩かれた傷跡。
 まあ。いつまでも、この格好をさせるのはあれなので、座薬を入れる。
 すると、するっとはいる。
 押し出されもしない。
 普通は、熱で少し溶かしながら押し込み。
 そのあと少し、押し込んだ状態を保持しないと、押し出すものだが、それがない。

「うん? 慣れているのか。もう良いよ」
 下着と、スエットを戻し、声を掛ける。
 すると、布団から顔を出し、首をひねっている。
「どうした。お休み」
 そう言うと、やっと布団へ潜り込む。
「お先に失礼します」
 そう言って、眠り始めた。

 少しして、38度まで、熱が下がる。

 安心をしたが、熱が下がれば、汗をかく。
 自分で出来るかな。


 夢を見ていた。
 いつものこと。
 こちらの体調などは関係ない。
「何故だ。どいつもこいつも、どうして馬鹿なんだ。人の足を引っ張ることしかしない」
 彼は機嫌悪く酔って帰ってくると、いつもはけ口を私に求める。
 
「おい尻を出せ。トイレが汚れていたぞ」
 すぐに、反応しないとお仕置きが、キツくなる。
 躊躇無く、お尻を出す。
 初期は、手の平だったが、いまは革製のパドルという物や物差しなどの時もある。

 彼が必ず、その時に言う台詞。
「これは君のためだ。ミスをミスとしてその時に教えないと駄目だからね。他の奴らは、君のことなど、どうでも良いから救ってくれないし、教えてくれない。僕も辛いんだよ。分かるね」
 そう言われ、彼が望む言葉を答える。
「ありがとうございます。私が至らないばかりに。申し訳ありません」

 彼は元々、取引先の係長だった。
 私は、幾度かの先輩との営業。つまり研修を終わらせ、1人で営業をして初っぱなにミスをする。
 単純な、納品物品の個数間違い。
 後で調べると、初期の発注後。個数変更が来ていた。
 それも、急な追加発注で、急ぎのタグが付いていた。
 私は少しあわてて、対応をした。言い訳だが、それでミスをして、そのフォローを彼にして貰った。

 彼はその時から、ずっと私のフォローをしてくれている。
「お礼。そんな物良いよ。どうしてもって言うなら。居酒屋で良いから、食事でも行くかい?」
 その後すぐに、男と女の関係となった。
 取引関係があるから、無論秘密。

 そして。
「同じミスを繰り返すのは、社会人としてどうだ? そうだな。そういうときには躾だ。お尻ペンペンをしてあげよう」
 そこから、この教育が始まった。

「おまえは、本当に駄目な奴だ。屑だな。役に立たない」
 そんなことを日々言われ、私は彼の言うことに、ただ従うようになっていった。
 変なプライドなど捨て、彼に従えば楽になった。
 
 ただ、容赦なく始まる、躾。
 それだけは、怖い。
 寝ていても、すぐに反応し、従わなくてはいけない。
 そう。私は従っていたのに。

 そしてあの日。
「おまえ。もう良い。つまらん。別れよう」
 彼はそう言い残すと、家を出て行く。
 一瞬。何を言っているの? 理解ができなかった。少し思考も出来ず固まっていたが。一応、追いかける。

 廊下に出て、下を。マンションのアプローチ側を、のぞき込む。
 すると、見たことのない若い女と、私の住むマンションの玄関先から、腕を組んで出て行ってしまった。

 その瞬間に訪れる安堵。
 もう、お仕置きを受けなくてすむ。
 それと同時に、やって来た恐怖。

 わたしは、これからどうすればいいのか? という疑問。この数年。彼の言うとおりに行動をしていた。

 翌日。友人2人を誘い。飲みにでる。
 飲んで忘れようと思ったが、酔うほどに襲ってくる恐怖。

 さらに、この酔った状態で、部屋に帰り。
 もし、彼がいれば。
 きっとフルコースで、折檻を受けなければいけなくなる。
 冷たい浴室。流れ続ける冷たいシャワー。
 あれは、真冬で死にそうだった。

 きっと。その恐怖から、実家の方に足が向いたのだろう。

「おい。美樹。分かるか?」
 うん? 呼ばれている。誰?

 目を開けると、大きくなった大和が、心配そうにこちらをのぞき込んでいた。
「うん。ああ大和。どうしたの? もう夕方?」
「いや。心配だったので休んだ。さっきの熱冷ましが効いたから、熱は大分下がったが、動けそうなら体を拭いて、着替えた方が良い。きっと汗で、濡れているだろう?」

 そう言われると、ぼうーとした感じ減ったが、節々の痛みと頭痛。そして、言われたとおり汗びっしょり。

「あれ。熱冷まし? 飲んだっけ?」
 ふと、記憶になく聞き返す。
「いや。座薬を入れるとなったら、躊躇無く尻を出したから、悪いが入れたぞ」
 それを聞いて、固まる。

 寝ぼけて、彼からの折檻を受けるため。勘違いをして出したんだ。
「あー。何か。ごめんね」
 大和に見られた。恥ずかしい。

「いや。何かおかしいとは思いながら、薬を入れるのを優先した。意識がなかったのか? 目も開いていたし、しっかりしていたから、分からなかった」
「あーうん。別れた彼が。私がミスをすると、叱るから。きっと勘違いをしちゃったのね」
 そう、言葉を濁したつもりだが、大和が食い下がってくる。

「見る気は無かったが、尻の傷。それが、やられた傷か?」
「あーうん」
 そう答えると、大和は短く言葉をかけてくる。
「言っちゃあ悪いが。別れて良かったな」
 そう言うと、大和は清拭シートと着替えを残し、部屋を出て行く。
 自分では見ないけれど、お尻。そんなにひどいの?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

処理中です...