神の都合と俺の都合

久遠 れんり

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第二章 異世界暮らし

第49話 王様のお願い

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 戦闘は終わり、彼らの残した一部を埋めて墓とする。

 大将マクシミリアーノ=ペカルスキーがやって来る。
「魔人族は周囲にいないようです」
「そうか」
 俺は探査をしたが、索敵をしてくれたようだ。

 武神達も居なくなり、男は俺だけになったしまった。
 うーん。結構淋しい。

「とりあえず、町に帰って片付けをしよう」
 俺達は、ぞろぞろと町へと帰る。

 そうして、見知った人達がかなり亡くなったことを知る。
 町の屋敷へ帰り、生き残った者達……
 考えれば、俺と関係がある人間しか残っていないな。

「どうする? 皆死んじまった。帰るか?」
 落ち込んでいたようだが、俺がそう言うとザワットなる。
 特に、マルタにとっては死活問題だ。

「皆さん居なくなるのですか? 私はどうすれば……」
 そう言って泣きそうな顔になる。
 そういえば、マルタには言っていなかったか。

「そういえば、お前には説明をしていなかったな」
「何をですか?」
 目には涙がたまっている。

「俺達が、異世界からの転生者だとは伝えたな」
「はい。聞きました」
 コクコクと頷くと、目にたまっていた涙が落ちる。

「向こうへ帰るには、この世界で死ななきゃならん」
「死ぬ…… じゃあ皆さん、向こうへ帰ったのですね」
 あれ? こんな話を誰かとした気が…… 委員長はいたが……

 まあいい。
「でまあ帰れると知っては居るが、なかなか踏み出せないものだよ」
「そうですね。それはかなり勇気が必要ですね」
 頭をなでていると、目を細めて気持ちよさそうにする。

 そうだな、とりあえずこいつが、生活をできる基盤を作らなきゃいかん。
 俺達がいなくなっても。

 そんなことを考えながら、魔力ごり押しで町の復興を手伝う。
 ゴリラ並みだった、業力達がいなくなったのが、地味にきつい。

 そうしていると、王様からの使者がやって来た。
 臆病なな事に、魔人領へ行き、危険がないかを確認をしてほしいと言うことだ。
 色々考えて、仕事を受ける代わりに、この場所を管理していた貴族がいなくなったので、俺達を領主にしろとだけ返事を持たせる。

 それは、居場所を作る第一歩。

 兵は使って良いといわれたが、ハッキリ言ってじゃまだ。
 俺達だけでいく。

 生き残っていた魔人族ゲルデから、魔人国の王都はもう人が住めないと聞いていたが、一応確認をしに行った。

 まあ、のんびり楽しみ物見遊山。

 素晴らしい森。
 元は畑だっただろう、雑草地。

 川。
 今は人が住んでいない町。
 住人達は、アキンダリア周囲の森に移住をしたはずとゲルデは言ったが、あの時探査しても居なかったし、もっと海の方へ行ったのかもしれない。

 まあ、王都に近付くにつれて、雑草は生い茂り、あっという間に自然へと帰って行っていた。

 まあ街道も、土で未舗装。
 そんなものなのだろう。

 この辺りに来ると、ゲルデは苦しかったそうだが、今は平気になっているとのこと。
 浄化しながら、再生をすることで魔人族は森の民に戻れるようだ。
 ただ、肌の色が違い、少し薄い黒色人種さんのイメージだ。

 全員治してくれたら、また暮らせるとぼやいていたが、一人治すのもかなり大変なんだと返す。
 でもできるじゃない、などとぼやいていたから、親兄弟でもいるのかと聞くと居ないと言われた。

「好きな男でもできたら連れてこい。治してやる」
 そう言うと、バカって言われた。

 情緒がどうも不安定なようだ。

 そうして、元住んでた家? へ忘れ物がないのか見に行った。
 彼女の家は、外壁に近い小屋。
 いや農具入れとか、そんなレベル。

 懐かしそうに眺めた後、お母さんが大事にしていた手鏡だけを持ってくる。

 逃げるときには、思い出したが、どこに隠してあるのか分からなかったそうだ。
 八重が、話を聞いてあっさりと見つけた。

 大事なものだったのか、壁の板に隙間があり、その隙間に差し込んであったようだ。
 よく考えると、この世界で、鏡面仕上げの金属板は高級品だろう。
 裏を返して、見るんじゃなかったと思った。
 どう見ても、貴族の紋章だ。

 何かがあって、追い出されたのか、彼女の母親は知り合いに体を売って暮らしていたらしい。
 そう商売ではなく、利息分なのか担保なのか。

「じゃあ帰ろう」

 草刈りをしながらだったので、都合半年ほどかかった。
 南側なので雪が降っていなかったが、アキンダリアの方へ近付くと雪が積もっていた。

 魔法で、蹴散らしながら進まないと、谷へ一直線だ。

 街道から、谷へ向けて、雪庇といって、雪が吹き付け一見地面がある様に見えるが、そこを踏めば、底がない。
 そう谷へ一直線だ。

 かまくらを作りながら、町へと帰る。

 門番もいて、普通の町になっていた。
「止まれこんな時期に大変だったな。町に入るなら、一時入場の金を払え」
 黙って貴族の証を見せる。

「マクシミリアーノ=ペカルスキー侯爵か、ヨハン=ホッベマー準男爵を呼んでくれ。霧霞 悠人きりがすみ ゆうとが帰って来たと言えば分かる」

 そう言うと、兵は、現場をほったらかしにして走って行った。
 その結果、俺達は雪の降る中で、震えながら待つことになった。

 当然、あわててやって来た、侯爵を怒鳴ることになってしまう。
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