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第二章 異世界暮らし
第38話 神
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長い名前の痴女巫女が、長老達に説明をしている。
「ご神木がザワついているのは、喜びの舞です」
「「「はっ???」」」
皆の表情がおもしろい。
顎が外れそうな驚き。
漫画みたいな表情、初めて見た。
「喜びの舞とはなんじゃ?」
「この中に神、それも、上位の方がいます」
ばばーんと効果音でも出そうな感じで、俺達を指さす。
当然俺達は、何だ何だと周りを見回す。
だが、いるのはクラスメイトとマルタ。
「神?」
そこで、場を読まない武神がペラペラと暴露する。
「俺達、異世界から呼ばれた勇者ではあるけれど、それのことか?」
それを聞いて、また現場は騒然とする。
だが、なぜか片目を塞いだ巫女がポーズをつけながら、答える。
「いいえ、そんなショボいものではありません。神の気配、神気がこの地に流れ込みご神木は喜んでいます。そして歪んでしまっているこの世界を正常化できると、言っている気がなんとなく、いえ、言っている気がします。多分……」
そう言いながら、どんどん声が小さくなる巫女。
「どなたがそうか、判断ができないのか?」
「ええなぜか、今は力を抑えているようです。面倒なことに。チッ」
巫女さん舌打ち。
「あーとりあえず、歓迎かのう」
「そうですね。酔わせて正体を曝きましょう。秘蔵の酒を飲ませて」
その酒と言うのが口噛み酒。
噛み噛みして十日くらい。
十パーセント近くのアルコール濃度、ヨーグルト系の匂い。
だが臭い。
知らずに飲んだ業力が、吹きだした。
女の子も幾人か、口から白い液体をだばあする。
絵面がやばい。
「味は悪くないけれど、臭い」
皆に浄化を掛ける。
浄化のキラキラした光。
巫女の目が光る。
目が合ったので逸らす。
何を思ったのか、人の前に来て、顔を覗き込む。
八重達が掴んで巫女さんを引き剥がすが、ジタバタする。
そう、後ろ向きに引っ張られて、足をジタバタするから見えちゃいけない所がだね……
まあいい。
皆の様子を見たから、酒を浄化して。
ついでに、たのんだら例の木が生えた。
土魔法で器を作り、その中へ果物を入れて、果糖を元に発酵させる。
力を与えることで、五分もすれば酒ができた。
こそっと、それを飲んでいると、八重がいたずらをする。
そう、いたずらにより出来上がったそれはソーマ。
昔飲んだ記憶がする。
だが使った果物の味もして、意外と美味い。
それを見て、楓達がたかってくる。
もうね。
口々に美味しいと叫ぶから、原住民達も並び出す。
それを飲むと、全員平伏。
そう、美味かったようだ。
つい調子に乗ったのも悪いが、いよいよもって神認定が進む。
酒というのは、神の御業だと思われているらしい。
元の形と違うものを生み出す。
ただおもしろくないのは、巫女さん。
自分造った酒は噴き出され、なんか適当に造った酒が持てはやされる。
「そんなもの…… 飲ませてみろ」
そう言ってひったくるように飲んでしまう。
なんか、糸が切れたように、かくっとなったと思ったら、言葉をつむぎ始める。
「この、果物の芳醇な香りと甘みを残し、それでいて、キリリとした切れ味。適度に酒精も強く舌の上で複雑な味わいを残す。甘辛渋、幾つもの味が渾然一体となり、キラキラと光るように口腔を蹂躙し快楽をもたらす。これぞ神の御業…… 私の醸した口噛み酒…… わずかばかりの負けね」
そう言って、がっくりと膝をつく。
周りの反応は、全然違う、わずかばかりの差じゃねえと突っ込みたいのを我慢する。
彼女は彼女で、長年のプライドがあるのだろうが、皆は素直。
長年崇めていた酒に、見向きもしなくなる。
だが、本人も腰をすえて飲み始めて…… まあ問題は無いだろう。
ワインと同じで、潰して発酵して、ろ過すれば良いことを教える。
神木に、フォローするように伝える。
そう、最初に果物を食ったときに、リンクされて話しをした。
その深刻さに、八重も力を貸して、世界のねじれを治した。
あのじじいもどきが、まんじゅう欲しさに理を曲げたひずみが出ていた。
一対の神木。
今、実は元の力を取り戻し、魔人国側で瘴気が消えて、大騒ぎになっていた。
長年毒である瘴気に晒され、体もその影響で変化していた。
それがいきなり綺麗になると、当然それはそれでおかしくなる。
ドブ川はだめだと綺麗にすれば、ドブ川の環境で安定をしていた生態系は壊れる。
それが良いのか悪いのかは、人間側の勝手な判断。
まあ過去から、人間を害するからと、寄生虫のライフサイクルをぶった切り駆除をした。
それは人間に都合の良い環境。
寄生虫は、宿主にとっては害悪だが、彼らの都合もある。
そう今、魔人国はその状況で、パニックを起こしていた。
「ええい、原因を探れ」
魔王様から檄が飛ぶ。
そう元は、彼らも森の民。
瘴気により体が変化し、その代わり扱えないレベルの魔法を使う事が出来るようになっていた。
その変化は、すでに綺麗な環境では暮らせない体になっていた。
だが彼らが焦ろうとも、もう環境は変わってしまった。
突然紛れ込んだ、異世界の神の力によって。
「あたしの酒が飲めないのかい?」
ガラの悪い巫女に絡まれる男。
彼が神だと、クラスメートはまだ知らない……
「ご神木がザワついているのは、喜びの舞です」
「「「はっ???」」」
皆の表情がおもしろい。
顎が外れそうな驚き。
漫画みたいな表情、初めて見た。
「喜びの舞とはなんじゃ?」
「この中に神、それも、上位の方がいます」
ばばーんと効果音でも出そうな感じで、俺達を指さす。
当然俺達は、何だ何だと周りを見回す。
だが、いるのはクラスメイトとマルタ。
「神?」
そこで、場を読まない武神がペラペラと暴露する。
「俺達、異世界から呼ばれた勇者ではあるけれど、それのことか?」
それを聞いて、また現場は騒然とする。
だが、なぜか片目を塞いだ巫女がポーズをつけながら、答える。
「いいえ、そんなショボいものではありません。神の気配、神気がこの地に流れ込みご神木は喜んでいます。そして歪んでしまっているこの世界を正常化できると、言っている気がなんとなく、いえ、言っている気がします。多分……」
そう言いながら、どんどん声が小さくなる巫女。
「どなたがそうか、判断ができないのか?」
「ええなぜか、今は力を抑えているようです。面倒なことに。チッ」
巫女さん舌打ち。
「あーとりあえず、歓迎かのう」
「そうですね。酔わせて正体を曝きましょう。秘蔵の酒を飲ませて」
その酒と言うのが口噛み酒。
噛み噛みして十日くらい。
十パーセント近くのアルコール濃度、ヨーグルト系の匂い。
だが臭い。
知らずに飲んだ業力が、吹きだした。
女の子も幾人か、口から白い液体をだばあする。
絵面がやばい。
「味は悪くないけれど、臭い」
皆に浄化を掛ける。
浄化のキラキラした光。
巫女の目が光る。
目が合ったので逸らす。
何を思ったのか、人の前に来て、顔を覗き込む。
八重達が掴んで巫女さんを引き剥がすが、ジタバタする。
そう、後ろ向きに引っ張られて、足をジタバタするから見えちゃいけない所がだね……
まあいい。
皆の様子を見たから、酒を浄化して。
ついでに、たのんだら例の木が生えた。
土魔法で器を作り、その中へ果物を入れて、果糖を元に発酵させる。
力を与えることで、五分もすれば酒ができた。
こそっと、それを飲んでいると、八重がいたずらをする。
そう、いたずらにより出来上がったそれはソーマ。
昔飲んだ記憶がする。
だが使った果物の味もして、意外と美味い。
それを見て、楓達がたかってくる。
もうね。
口々に美味しいと叫ぶから、原住民達も並び出す。
それを飲むと、全員平伏。
そう、美味かったようだ。
つい調子に乗ったのも悪いが、いよいよもって神認定が進む。
酒というのは、神の御業だと思われているらしい。
元の形と違うものを生み出す。
ただおもしろくないのは、巫女さん。
自分造った酒は噴き出され、なんか適当に造った酒が持てはやされる。
「そんなもの…… 飲ませてみろ」
そう言ってひったくるように飲んでしまう。
なんか、糸が切れたように、かくっとなったと思ったら、言葉をつむぎ始める。
「この、果物の芳醇な香りと甘みを残し、それでいて、キリリとした切れ味。適度に酒精も強く舌の上で複雑な味わいを残す。甘辛渋、幾つもの味が渾然一体となり、キラキラと光るように口腔を蹂躙し快楽をもたらす。これぞ神の御業…… 私の醸した口噛み酒…… わずかばかりの負けね」
そう言って、がっくりと膝をつく。
周りの反応は、全然違う、わずかばかりの差じゃねえと突っ込みたいのを我慢する。
彼女は彼女で、長年のプライドがあるのだろうが、皆は素直。
長年崇めていた酒に、見向きもしなくなる。
だが、本人も腰をすえて飲み始めて…… まあ問題は無いだろう。
ワインと同じで、潰して発酵して、ろ過すれば良いことを教える。
神木に、フォローするように伝える。
そう、最初に果物を食ったときに、リンクされて話しをした。
その深刻さに、八重も力を貸して、世界のねじれを治した。
あのじじいもどきが、まんじゅう欲しさに理を曲げたひずみが出ていた。
一対の神木。
今、実は元の力を取り戻し、魔人国側で瘴気が消えて、大騒ぎになっていた。
長年毒である瘴気に晒され、体もその影響で変化していた。
それがいきなり綺麗になると、当然それはそれでおかしくなる。
ドブ川はだめだと綺麗にすれば、ドブ川の環境で安定をしていた生態系は壊れる。
それが良いのか悪いのかは、人間側の勝手な判断。
まあ過去から、人間を害するからと、寄生虫のライフサイクルをぶった切り駆除をした。
それは人間に都合の良い環境。
寄生虫は、宿主にとっては害悪だが、彼らの都合もある。
そう今、魔人国はその状況で、パニックを起こしていた。
「ええい、原因を探れ」
魔王様から檄が飛ぶ。
そう元は、彼らも森の民。
瘴気により体が変化し、その代わり扱えないレベルの魔法を使う事が出来るようになっていた。
その変化は、すでに綺麗な環境では暮らせない体になっていた。
だが彼らが焦ろうとも、もう環境は変わってしまった。
突然紛れ込んだ、異世界の神の力によって。
「あたしの酒が飲めないのかい?」
ガラの悪い巫女に絡まれる男。
彼が神だと、クラスメートはまだ知らない……
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