神の都合と俺の都合

久遠 れんり

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第一章 召喚

第10話 行軍の中で

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 色々な立場の人間達。
 娼婦のような女達。
 猟師や兵士。
 冒険者。

 だらだらと、行軍をする。
 スピードは遅いが、だるい。

 そんなだるい行軍の中で、農村から口減らし目的で派遣された女の子達を、幾人かが囲い込む。
 クラスの委員長、鈴木 悠司すずき ゆうじが率いるグループ。
 岩崎 秀幸いわさき ひでゆき松井 晋也まつい しんや太田 剛士おおた たけし
 食べるために何でも言うことを聞く女の子を見て、女子達は引いていたが、何年もまともに食えなかったと聞かされては、俺でも助けようという気になる。
 しないけれど。

 女子側のクラス委員稲葉 沙織いなば さおり川瀬 陽子かわせ ようこはどうも兵と付き合っているようだ。

 後は相変わらず傍観。
 基本男は変化を求め、女は安定を求める生き物というのは遺伝的な設計らしいから仕方が無い。

 ちなみに囲い込まなかった奴らは、食い物を餌に食い散らかしている。
 食い物でやれる女の子がよりどりみどり。

 俺にしてみりゃ、病気や寄生虫が怖いがな。
 気を付け、俺と八重は浄化をしている。

 水だけではなく、土などに居て、皮膚を食い破り体に入るモノも居る。
 結構未開の所は怖いんだよ。

 そして、なんとなく俺達のクラスも、いくつかのグループに細分化をしてくる。

「あんまりバラバラに動かれると困るんだけどね」
 そう言って、八重が怒っている。

 そう俺の都合上だ。
 だけど考えによっては、勝手に死んでくれれば楽だしストレスにならない。

 この行軍中は、いつも周りに目があるしストレスがたまる。
 トイレでもしようとすると、どこからか別の奴がやって来て、並んで始める奴がいる。
 排泄なんて、見るのも見られるのもいやなんだが。
 だが、八重は見せつける。
「他の人が来ないように見張っていて」
 そう言って。

 他の女子達もそんな感じだったが、気の緩んだのか、農民達もストレスだったのか、三人ほど女の子が殺された。

 もっとやられそうだが、勇者特典。
 彼女達は、襲ってきた奴を勢い余って殺しちまった。

 するとまあ、この世界の常識女のくせに生意気だという事になったらしい。
 田中 みゆきたなか みゆき高橋 千春たかはし ちはる鈴木 成美すずき なるみ

 彼女達は、見せしめのようにボコボコにされていた。
 ギリー隊長が怒り狂っていたが、犯人は分からなかったようだ。

「矢でも射かけたかな」
「そうね。やっぱりトイレのときには見ていてね。危ないから今度から見ていてあげるし」
「ちょっと待て、俺は男だから大丈夫」
「あら、これだけ人数がいれば、男が好きとか、それとも排便が好きとか言う人も居るかもしれないじゃない。ほらトイレ盗撮とか問題になったじゃない」
「あれは、少し違うんじゃないか? 俺には理解ができないけれど」

 そう言ったら、八重は指を一本立て、ブンブンと振る。
「ゆうちゃんに見られていると、おしっこが出るだけでぞくぞくするの。人間の体って不思議ね」
「ねっ。じゃない。変態め」
「ああっ。のししられるのも好き」
 そう答えながら、自身の体を抱きしめ、恍惚としている八重。

「お前、変態度が加速してないか」
「うーん。そうかな? 全身で愛そうとすると、何もかもが快感になっちゃって、そうね。ゆうちゃんの性ね」
「なんか、言葉に違和感があったぞ」
「あらー。お注射されると、それが吸収されて私の体を周り、ゆうちゃん成分で、三年ほどで細胞が置き換わるの」
 そんな頭の痛くなる会話をしつつ、行軍は進む。


 いい加減うんざりしていた。だが、一月も経ち国境とたどり着く。

 手前の平原と、魔族領の鬱蒼とした森林。

 先頭の貴族が、腕を上げる。
 途中から合流をしてきたこの人達は、辺境伯カルロス=ブエンディア侯爵。
 混ざっていきなり、仕切り始めた。

 矢よけだろう、板を張り付け泥を塗った車を前に出す。
「さて諸君、今年こそ彼の土地を、我が手に取り返えそうぞ」
「「「「「おおおおぉぉ」」」」」

 叫び声が聞こえたのか、向こうから反論が来る。
「馬鹿野郎。勝手に入ってくるな。毎年毎年」

 木の陰に、人影が増えていく。

 そして一人、が森から出てくる。
 魔族って言っても普通じゃないか?
 ちょっと角がある?
 そう普通のオッサン。

 隣は、女の人っぽい。
 肌は真っ赤だけど。
 反対側に出てきたのは、トカゲ人?

「この森から奥は、我らの領土。いい加減うんざりだが、昔あんたの国と交わした約定があるはずだ。探せ。こっちにはあるからな。ヴィルヘルム=カイエン王の子孫共よ」

 その言葉のすぐ後、カルロス=ブエンディア侯爵から矢が放たれる。

「やかましい、人もどきめ。生意気に口をきくんじゃない」

「「「「「おぉぉぉぉ」」」」」
 鬨の声が上がり、ドンと足を踏みならしたのを合図に、前進がちまちまと始まる。

 そう矢よけの櫓。
 重いらしくて遅い。

「オレー 突っ込めぇ」
 かけ声が響き、オレー、オレーと声が聞こえる。
 力を出しやすい声というのは決まっているのか?
 そんな下らんことが頭に浮かぶ。

 俺達は中団ちょい前、出番は遠そうだ。
「ミリー。オレが守ってやる。安心しろ」
 そんな声が聞こえる。

 鈴木 の相手がミリー。
 岩崎がピア。
 松井がマルタ。
 太田がノヴァー。

 マルタという子、すごく小さいが一体幾つだ?
 気にしていたら、横から声がする。
「一二歳らしいわよ」
「小学生か?」
「ギリ中学生?」
「良いのかそれ?」
「異世界だから良いんじゃ無い。知らんけど」
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