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第3章 周辺国との協力と発展

第50話 調停

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 王国は、混乱をした。
 数万の兵が、数千に敗れた。

 生き残ったのは、わずか。
 デニス=ヘルストレーム伯爵により、情報が持ち帰られる。
 宰相である、アウグスタ=ガンビーノは頭を抱える。

 急遽、第一王子であるエイナルを、王とするため戴冠式を行う。

 そしてその傍らに調査を行い、ジャンパオロ=オリヴェル伯爵とエミリアン=リクハルド男爵達が画策した陰謀であると断定。
 両家は取り潰す。

 だが、結果として王国に対しての反逆者となった、アルトゥロ=パチェコ男爵の問題。
 幾多の貴族、そして王まで殺した大罪人。
 国として、そのままにはできない。

 だが、数万の軍勢を討ち滅ぼす力。
 そもそもの発端は、此方の落ち度。

 そこに、答えを導くのは無理がある。
 勢いのまま王都へ進軍でもしてくれば、まだ他の諸侯も立ちやすい。
 だが、パチェコ男爵は沈黙を守る。

「なあ。戦には勝ったが、これからどうなるんだ?」
「さあ、今交易はオリエンテム王国とするようだが、向こうでも色々とあったようでな」


 そう、オリエンテム王国の辺境。
 パリブス王国へと割譲をした領から始まった、新農法と生産物。
 裕樹に頭を下げて、国内へと援助を広げた。

 各領は、物資輸送用モノレールが張り巡らされ、その沿線はパリブス王国を中心として、北のセプテントリオ王国や、西のオコーデンタリス共和国にまで届いている。
 今まで数週間かかっていた荷物が、数日で届く。

 野盗による損失もなしに。

 当初は、野盗など盗賊達による、倒木や置き石が有り損害が出た。

 だが、それがあった周囲は徹底的に調査。
 そして慈悲などない徹底的な駆除。
 今では、沿線にフェンスと有刺鉄線が張り巡らされている。

 その期間行われた駆除は、本当に無遠慮で無慈悲なもので、本当に駆除といえるだった。

 奪ったもので、宴会をしている最中、無音で飛来する矢。
 気がつけば、生きている者はいない。

 あらかじめ数人だけ生かして、助けを求める繋がりを追う。
 周囲のグループを順に潰していく。
 その中で、取引のあった商店もあぶり出して、繋がりを潰す。
 そこに、慈悲はなかった。

 この世界に来て、数年が経ち、彼らは学習をした。
 この世界、駄目な奴は駄目だと。
 残せば、善良な人間が虫けらのように殺される。
 そこに、慈悲を入れるのは、ただの自己満足であり悪だと。

 気がつけば、盗賊などはいなくなっていた。

 だが真面目に暮らさせば、いくらでも仕事はあった。
 パリブス王国から広がった好景気。

 物価は下がり、一気に一般の民達はその生活が変わっていく。
 荘園制が、強制的に解除されて、自由を得た人々。

 一部ではあるが、病気から解放されて、新たなる生活を始める人たち。

 すべてが変わっていく。

 その輪から、メリディオナル王国は取り残されていた。
 そして内戦ともいえる状態から、その対処をこまねいている間に、慶子はオリエンテム王国を経由して、再び裕樹達と繋がる。

 それには、三年の時間が必要だった。

 その前に、メリディオナル王国はパチェコ男爵を前に逃げた。
 鉱山のある直轄地、旧ヘンリク領を含め、オリヴェル領やリクハルド領を見捨て、パチェコ男爵に対して、罪を問わないことを正式に通達。
 前王の死なども、不幸な事故として済ませてしまった。

 内戦ともいえる戦の詳細。
 それが、国内で伝わると、残った貴族達は逃げた。
 パチェコ男爵に対する懲罰。
 それに名前が上がったとき、自身がどうなるのかを想像してしまった。

 兵を挙げ、殲滅するために、彼の軍団がやって来るのではないか。
 圧倒的暴力。それを各貴族は恐れた。

 宰相も、実際困っていた。
 多数の貴族がいなくなり、内政にも困る状況。
 だが、パチェコ男爵の事は放置できない。
 国としてのメンツもある。

 だが、懲罰賛同者はいない。

 そこへやって来た、オリエンテム王国が調停者としてやって来た。

 その中で、トップだけが話し合い、税金は納めるが領への干渉無用。
 周辺の領は合併。
 王達については、よくよく考えれば、流布された悪意に踊らされての不幸な行き違い。
 間違った懲罰に対して、パチェコ男爵は身を守っただけ。
「それの何処に罪がありましょうか? もし、彼に力が無く。不当な罪を着せられた場合、王国はきちんと対処を行いましたか?」

 何処まで知っているのか。
 オリエンテム王国がよこした調停者は、そう言って笑う。

「パチェコ男爵が、負けていれば、その後はなかったであろう」
 宰相はそれだけ言って、調停書にサインを行った。

 一方的な王国側の負け。

 実質、パチェコ男爵は巨大となり、今後内政にも干渉しない文言が、書かれた文書を受け取った。
 建前上伯爵となり、その力を増す。

 そして、三領を加えて巨大化をしたパチェコ伯爵領は、オリエンテム王国と繋がりさらに力を増していく。

 その後、裕樹の所から、使者としてやって来た秀明が、慶子から子供を見せられ、泣きながら帰ったときに結んだ契約は、すべてが甘々で、慶子の思う通りにすべてが進んだ。

 技術移転まで結んでいやがった。
 そう言って、後で秀明は裕樹に叱られることになる。

「だって、すごく幸せそうな顔で、子供を見せてくるんだ」
 そう言って、秀明は泣き濡れた。
 元彼として、完全に惨敗である。

 行くときには、慰謝料がてら、有利な規約をしてくる。
 そう言っていたのだが、完全に慶子が上だったようだ。
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