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第2章 周辺国との和解へ向けて

第18話 迷彩色の悪魔

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 そんなコントのような戦場に、奴らが派遣されてきた。
 現在、一二機で。
 東西の要塞へ三機ずつと、北の要塞へ二機ずつ。
 王都に二機と、量産中のものが複数台。

 その中に、赤い角が生えた実験機が二台。
 効率は悪いが、各部で円盤が回っていて、移動時に一瞬クラッチが繋がる。
 速度優先型。
 体が軋むし、限界以上で体を動かすため、筋断裂を起こしそうで怖い。

 これ以上を求めるなら、アシストではなく、操作型ロボットじゃないと駄目だとなったが、パイロットが中でシェイクされるのが想像できる。

 そのため、現行型をちょっとだけ強化して、次は戦車の開発に着手することになった。


 そんな王国内の都合はどうでも良く、今実際の相手。オリエンテム王国側から見ると音と大きさ、不気味な塗装と赤く光る目。
 そして、凶悪そうなハルバードが、いやでも目を引く。


「モンストシニョス侯爵。敵側に何か現れました」
「何かとは何だ?」
「見たことがないものです」
 狭いテントの中で、紅茶をすすっていた侯爵だが、その言い草にカチンときたようで、外へ出て行く。

「ええぃ。情報はきちんと伝えろ」
 そして、自分で確認し一言。

「何だあれは?」
 言い表す言葉を、本人も思い浮かばなかった。

「さて、何でしょう?」
「ううぬ。一当てをしてみろ」
「あれにですか?」
「あれにだ」
「はっ」

 どうやら侯爵も、あれに対応する言葉が、見つからなかったようだ。
「騒がしい鎧に向かい。一当てするぞ」
「本気ですか?」
「ああ。ご命令だ」
 そう言って、背後のテントをちらっと見る。

「手を出すと、やばそうな気がするのですが」
「そうだな。引きつけて、この方向から、矢を一斉射。すぐに逃げろ」
「そんな。矢など…… ああ。なるほど。この方向からですね」
 言いかけて、何かに気がついたようだ。

「そうだ、効くか効かないかは関係ない。面倒の排除だ」
「分かりました」
 そう言って、部隊長は走っていく。

 やがて、瓦礫の後ろに弓兵がそろう。
 場所は、きちんと理解がされたようで、街道と弓兵。
 その背後には、偉そうな怒鳴り声が聞こえるテント。
 一直線に、並ぶ位置。

 一当てしてみるか。そんな感じで、一機が来た。
 もう一台は、少し距離を置きやってくる。

 そして、後ろ側の一台は、離れた所で弓を構えた。

 やがて先頭の一台が、街道上に放置をされている、燃え残りの台車へとたどり着く。すると、それらを、強引に脇へ寄せる。
「おお。大弓の威力はすげえな」
 現場を見た兵は、その悲惨さに驚く。まともに当たった者は、まともな形をしていない。

「こんなのでよく、攻めてこられたものだ」
 そう言って、ぽいぽいと道の端へ、ジャマなものをすべて寄せる。

 その行為は、敵の領土へ入っても続く。

 やがて、カンと乾いた音がして機体に何かがあたる。
 視線を上げてよく見ると、敵側の拠点であった要塞の瓦礫。
 その向こうから、ひょこっと兵が現れては矢を放つ。

 荷車を縫い止めてあった大弓の矢を引き抜くと、そちらの方へひょいっと投げる。
 矢を射ようと、顔を出した兵のすぐ横をものすごい勢いで矢が抜ける。
 もう少し横に居れば、首が落とされるところだった。
 安定翼が石をかすめ、チュイーンと奇妙な音を立てる。

 そして、見事にテントを射貫く。

 侯爵は、意味が分からなかった。
 椅子にふんぞり返り、紅茶をすすっていた。
 なぜかすぐ脇を、何かが通り過ぎた。
 それは分かった。

 問題は、軽く右腕の上腕。肩との中間辺りを、細い棒か何かでたたかれたような感じがした。
「うん?」
 何だ? そう思い。右腕の方へ視線を向けると、口元からカップが、腕ごと落ちていった。
「はっ」
 どう言っても、戦闘中であるため。革鎧は装備をしていた。

 だがそんなもの、意味が無かったようだ。
 黒光りをする、刃が付いた槍のようなものが、視線の先に刺さっている。
 
 腕からは、堰を切ったように血が噴き出し始める。

「だれか、誰かおらんかぁ?」
 侯爵は、叫ぶ。

 だが、路上清掃を後回しにして、駆けつけたのは気導鉄騎兵団。
 テントの中を、赤い目が覗き込む。

「服の感じからすると、偉い奴のようだな」
 周りの布を巻き込みながら、ハルバードが振り抜かれる。
 必要の無い胴体は残し、首だけが布に包まれる。

 そして攻撃が来ると面倒なので、周りを見ると、誰も居なかった。
 至る所で、声が聞こえる。
「侯爵がやられた。撤退だぁ。撤退をしろ」

 鳴り物入りで盛大にきて、一日で撤退。
 これで、オリエンテム王国の政権交代へと続く序章。火の一夜が終了をした。

 報告では、パリブス王国は赤い一つ目の巨人兵を使役している。
 その強さは、兵一〇人分に匹敵。そんな情報が持ち帰られた。

 当然、王アレクサンデル=オルムグレンは、憤慨する。
 訳の分からない情報と、モンストシニョス侯爵の死。
 前回から、報告されるのはまともだとは思えない事ばかり。
 数百減っただけで、丸々帰ってきた軍。

 戦闘でも力が拮抗をしていれば、双方兵をつぎ込み、消耗戦となっていくが、一方的な虐殺では逃げるしかない。

 それが、今の状況である。
 だが、王からすると理解ができない。
「少しあたっただけで、逃げ帰るとはどういうことだ」
 王からの叱責が飛ぶ。
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