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第二章 王国兵士時代

第32話 領主の館。惨劇と無様

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「話を聞こうか」
 そう伝える。
 その間に、目についた監視役を射貫く。

 わざわざ、白い腕章を付けているから、すぐわかる。
 戦闘に参加せず、ぼーっと立っているしな。

「あいつらが見張りか?」
「そうです。ああ、やって強制的に皆を働かせ、自分たちは領主の館に潜んでいます」
 正面の男がそう言うと、脇で柵を寄せていた男が割り込んでくる。
「そうだ。家族を助けてくれ」
 監視がいなくなったことで、皆が近寄ってきて懇願を始める。

「判った。だが、人質がいると面倒だな。どうするか?」
「手間ですが、忍び込んで救出をなさいますか? 本当なら無視をして攻め込めば、楽ですがね」

「そうだな。俺達が表で騒ぐから、別働隊が救出に向かえ」
「はっ」
 俺達は、正面から領主の館へと向かっていく。
 その間にも、白い目印を付けた奴を中心に、捕縛と退治をしていく。
 捕縛をしたのは、抜け穴の有無を確認するためと、味方だと油断をさせ、押し入るためだ。

 そのために、装備を剥ぎ取り、偽装をする。
「いけっ」
「はっ」

 一応、隊を分散させて、本体の数を少なく見せる。
 町中は、夜間のため、ある程度静かだ。

 途中でも、強制的に動員されていた兵を、味方にしながら、進んでいく。

 そして、領主の館近くに来ると、呆れたことに酒盛りの後だった。

 そこら中に、白い腕章を付けた奴らが寝ている。
「案内を捕まえる必要は無かったな」
「ですね」
 騒げないようにして、縛っていく。

 だが、館への道は一本道。
 流石に、見張りがいるだろう。
 そう思っていると、誰か兵が走ってくる。腕章を付けているが、白腕章の上に白地に赤と青の線が入った腕章も付けている。

「隊長。見張りは潰しました」
 送った偽装兵だった。
「報告ご苦労。優秀な兵がいると楽だな」
 そう言うと嬉しそうに走って行った。

 突入を開始していく。

 途中から、捕らえられていた人たちが、続々と解放される。だが、人質達は、皆服を脱がされている。
「逃走防止か。作戦開始が夜で良かったな」

 逃がす作業に当たっている兵に、状態を聞く。
「館の周囲に柵を作って、皆が詰め込まれていました。見目の良いもの達は屋敷の中に連れて行かれたようです」
「なるほど。やることは盗賊達と一緒だな」

 そして闇に紛れて、屋敷に忍び込み。叫ぶ間など与えずに、倒していく。

「一応注意はしたが、勝手に家財を押収をする兵をチェックしろ。ああ、どさくさに紛れ、女に手を出す奴は殺してかまわん。敵と間違えたと言えば良い」
「はっ」
 通達をするために兵が走る。

「ある程度は起こりそうですが、これからを考えると正解ですなぁ」
 ミヒャルがうんうんと頷くが、こいつ家に籠もっていたから、たまに口調がじいさんぽくなる。親父さんと二人だったはずだが。


 そして、四階。
 外から見た建物は、五階建てで、明かりがついていた。
「階段を探せ」

 だが、見つからない。
「どこだ?」
 面倒だが、一度外へ出て、確認をする。

「さっき、中では気が付かなかったが、各階一部屋分が繋がっていないな」
 兵の持つ松明が、一つ手前で戻っていく。
 一階の外をぐるっと回るが、出入り口は無い。

「一階から順に探すか」

 するとだ、用心深いことに、目指す部屋と反対側に地下へ降りる通路が見つかる。
「これか」
 降りると、二つに分かれている。
「片側は避難路でしょうか?」
「そうだろう。そっちは任せた。罠に気を付けろ。魔力の流れと物理、両方チェックだ」
「はいっ」

「そうは言ったが、全然無いな」
 警戒しながら進んでいく。
 だが、罠などは存在せず、階段に行き当たる。
 そっと覗き込むが、人も居ない。

 ハンドサインをだし、後ろに知らせる。

 一応、段に仕掛けがないかを、確認しつつ上がっていく。

 二階の踊り場へ来ると、左右に分かれ右に部屋があり、左は階段。
 兵達に二階は任せて、上に上がっていく。
 今度は、右方向にしか通路は無く、声が響いている。
 それも下品な声だ。広げて見せろとか何とか。

 部屋に押し入り、手前にいた男を、後頭部から殴り、ベッドでステキな状態で固まって居る女の口を塞ぐ。
「助けに来た。騒がないで」
 そう言うと、こっくりと頷く。

 もともと、服は取り上げられていたそうなので、シーツを羽織らせる。

 他もそんな状態で、幹部達の部屋のようだ。
 そしてその突き当たり。
 妙な蓋が廊下の端についていた。
 中を覗くと、ゴミ捨て場で、嫌なものを見る。

 一階の外周に入り口は無かった。どういう事か少し気になるが先に進もう。
 
「逆らった者達でしょうか?」
「かもな」
 きっと、捨てられていた人達は、人質の人たちだろう。
 旦那とかが心配していたように、逆らう人間も当然出てくる。

 上に向かい、探査をしてみる。

 魔法使いがいると気が付くことがあるので、使わなかったが、今まで会っていない。
 そう思って使うと、いるんだよね大体。
「やべ」
 あわてて、上へと上がっていく。

 だが一メートルほどの、火球が降ってくる。
 シールドを張り、脇にいなす。
 後ろに部下がいるが、このくらいは何とかするだろう。

「りゃ」
 身体強化をして駆け上がりながら、あわてて逃げる魔道士に、携帯用、ニードル発射筒を向ける。
 剣の鞘に沿わせて、一本くっ付けてある。

 針は、音もなく飛んでいき、太ももに刺さる。

 動きが止まったので、ぶん殴る。
 奴が、痛みのせいか顔を下げたので、まともに顔面を殴ってしまった。

 さてさて、四階は騎士達の詰め所だったようだが、ここも女と酒。
 騎士のくせにまともな奴が居らず、立ち上がろうとしてふらつく有様。

 兵に任せ、上へと上がる。
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