上 下
25 / 67
第二章 王国兵士時代

第25話 遺跡探査

しおりを挟む
「この森へ調査に行け」
 ヨエル=ヴラハティ少将配下の、ゲイアリエル=マグワイア中佐に呼ばれ、命令を受ける。

 今回は、なぜかレオンのみ。
 その頃、他の連中は王都周辺で、野盗退治を別々に命令されていた。
 そう。通常とても面倒だし、何をしてくるかわからない連中。
 他の兵達からも敬遠される命令。

 だが、シグナの集い配下の兵達は、良い感じに壊れていた。
「ひゃはー」
 などと叫びながら、延々とアジト内を走り回る。
 剣を振り回しながら。

 その話は、盗賊や野盗内で広がり、恐怖されることになる。

 そしてレオンが調査に向かう森は、内部に遺跡があり、たまに強力なモンスターが湧くらしい。

「はっ。拝命いたします」
 そう言って、任務を受ける。

「俺がいた村の近くにも、地下遺跡があったんだよ」
「そうですか。文献によると、高度文明の跡地だそうです。今より数千年前に何か事故があり、人々は天と地に隠れたとあります」
「へえ、そうなんだ」
 ミヒャルの知識は幅広く、色々なことを知っている。
 子供の頃、剣技や体術も習ったが、向いてないと判断し、知識を集め回ったようだ。

 小部隊、五十人を連れて調査に向かう。

 王都から、たった二十キロ程度の距離。

 そこに、手つかずの森が存在をする。
 その森を囲むように、周囲は開墾されている。

「あれだな」
 今回、俺達は補給隊に少しお願いをした。

 調査中待っていて貰う。
 帰ってこなければ、王都へ連絡をしてもらう。
 期限は、帰ってこない日が、三日を超えれば帰って貰う。

「じゃあ頼んだよ」
 そう言いながら、部隊を連れて、薄暗い内部へと入る。

 この建物、石のようだが、つなぎ目がない。
 きっちりと造られ、地上は二階程度。
 四角い形で横長。部屋はいくつかあり、壁が四角く抜かれている。

 ミヒャルの指示で、棒の先にタイヤの付いた板をくっ付け、それにろうそくを立てる。そして、前方二メートルほどを転がしていく。
 地下へ入ると有毒ガスが有り、息ができなくなるかららしい。
 たまに、爆発をするから、鳥などのほうが良いらしいが、捕まえられなかった。

 だが地下一階に、モンスターが現れる。出てきたのは、ゴブリンや、スライム。

 地図を作りながら確認をしていく。

「隊長。階段があります」
 声がするほうへ向かう。

「おう。階段だな」
 さっき捕まえたゴブリンを転がしてみる。
 むろん腕と、足は縛ってある。

 さっき作った、ろうそくを転がす道具は、ゴブリンを見た瞬間に、ただの荷物になった。
「大丈夫そうだな」
 ゴブリンは騒いでいるが、生きてはいるようだ。
 そして、階段横にある大きめの扉は、押しても引いても開かなかった。

 ゴブリンに先導させながら、階段を降りていく。


 その頃。王都。
「命令をしたか?」
「はい。あの遺跡は、地下三階から、到る所にトラップが仕掛けられ、部隊を幾度全滅させたかわかりません」
「あの、レオンとかいう小僧が死んだら次々に関連の部隊。それらを送り込め」
「はっ」

 叔父である、アンセルモ=リザンドロ伯爵からよろしく頼むと言われ、多少の金銭も受け取った。失敗するわけにはいけないと、ヨエル=ヴラハティ少将は思いながら大好きなワインをあおる。


 危険な遺跡。
 すでに三階に来ていた。
「また罠だ。ゴブリンのお代わり」
「へーい。おまち」

 マップに書き込みながら進むが、かわいそうなゴブリンは、遺跡だけでは収まらず、森から絶滅をしそうな勢いで、捕まえてこられ使われる。

 表にいた、補給隊はその光景に首をかしげる。
「あのゴブリンのかわいそな声が、耳に残るぜ」
「俺達にとっちゃ、最大の敵だが、あの感じだとかわいそうだなあ」
 目の前を、ロープで縛られ、連れて行かれる。
 その光景を、複雑な表情で見つめる兵達。

「この通路だけ、異常に罠が多いですね」
「そうだな。すでに十匹以上のゴブリンが命を落とした」
 そう言った矢先に、ロープの先でゴブリンの丸焼きが出来た。

「あのエネルギーはどこから来ているんだ? あれって魔力の流れがあるから魔法だよな」
「私にはわかりませんが、そうなんですね」
 ミヒャルにも不得意がある様だ。

「もう一匹送って、魔力の流れを見ろ」
 そう言うと、魔法を使える兵が集まってくる。
「もう少し…… あの辺だな」
「あっ燃えた」
「報告します。壁の色が変わりました」
 一人の兵が、気が付いたようだ。

「おーい。ハンマー隊。壁を壊せ。トラップはさっきゴブリンが踏んだが、一応気を付けろ」
「はい」
 そう言ってハンマーで、ぶち壊していく。
 壁の中には、金なのか、何かの線が埋め込まれ横に走っている。

「これか」
 棒を突っ込み、線をひっぺがす。

 すると罠があるところには、線の先に繋がった魔導具が埋め込まれていた。
「その魔導具も掘り出せ」
 掘り出して、魔力を流すと火が出た。

 王都で使われる物より魔力効率が良い。
「これは良い。鍛冶をするときに使える」
 思わず喜んでしまう。

「おい。その線を追いかけろ」
 兵達は、ガンガンと壁を壊していく。
 ついでに、トラップがあったところをすべてぶち壊す。

 すると、ミヒャルが何かに気が付いたようだ。
「遺跡は、王家の持ち物。壊して良かったのでしょうか?」
「ミヒャル。男は細かなことを気にしちゃいけない。遺跡自体は壊していないし、少し壁を壊しただけだよ」
 レオンは、この数年。幾人かの師匠達から影響を受け、多少性格があれになり、十三歳の時に比べ、純朴さが失われていた。

「そうですか……」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。

飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。 隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。 だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。 そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

処理中です...