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第四章 世界は戦乱へ

第37話 とりあえず、殴れるなら殴る

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 起き上がると、サイズが半分になっていた。

 だが、また密度が上がり、足が地面に少しめり込む。

 謎だが、この闇質量がある様だ。
 そして、また光希が殴るが、今度はひどく堅い。
 奴の足も、少しスライドをしただけ。
「駄目だ。重いし堅い。手伝え」

 飯を少し食おうと思ったが、孫使いのあらいじいさんだ。
 走っていき、体重を乗せて殴る。

 音はしない。だが、本当に堅い。

 そして意外と早い。
 やって来たパンチを、間一髪でかわす。

 俺達がやるように、相手もパンチを繰り返す。

 二対一だが、じり貧だ。
 どう見ても、一発でも貰うとやばい。

 そこへ、シーヴが参戦。
 爪を立てながら、えぐるように猫パンチ。

 するとすぐに、奴もパンチが猫パンチに変化をする。

 肘を曲げ、すごいスピードで引っ掻き合い。

「こりゃ、手を出せん」
 爪の先端は、手首を返した瞬間、音速を超えているようで、はじけるような音がする。
 そこへ、アデラが剣を持って参戦。
 刀身は、聖魔法の光をまとう。
 だが、ゴンという感じで止まり、切ることなどできない。

 そして当然、奴の左手が剣へと変化をする。
 いきなり伸びるリーチ。これはやばい。

 シーヴのしっぽを掴み地面へと引っ張る。
「うにゃあぁぁ」
 文句を言っているが、それどころじゃない。

 さっき、シーヴの胴体があった所を剣が通り過ぎていく。
 しっかり音速を超えて。

「気を抜くな」
「うにゃ」
 そう言いながら、頭をぶんぶんと振り頷く。

「やべえな」
 じいちゃんがぼやく。

「見せれば見せるだけ手数が増える。まだ生まれたてで、勉強中なのか?」

 試しに、背中側から槍で突く。
 うん。刺さらん。

 そして、右拳が槍になる。

 なんのこだわりかは知らんが、手足は二本ずつのようだ。

「これ手を、四本とかにすると、まねをするんだろうなあ」
 じいちゃんに向けてそう言うと、当然言ってくる。
「この際だ、できるならやれ」
「俺は人間だ。できるわけないだろう」
「じゃあ言うな。期待するだろう」
 するなよ。孫をなんだと思っているんだ?

 叫びあってるのが気になったのか、奴まで大口を開けた。
 つい反射的に、さっき追加できた手榴弾型光魔法を放り込む。
 男ってさあ、口を開けられると突っ込むよね。

「欲しいときは、あーんって、言うんだぜ」
 ついでに、顎下から蹴りを放つ。

「重い……」

 鼻と口から、光が吹き上がる。
「効いたか?」
 口が開いているから、もっと放り込む。

 ついでにランチャータイプの弾まで突っ込む。

 人間だと、喉の奥まで入ったようだが、平気だな。すげ。


 その時闇は考えていた。
 この光は、やばいものだと。
 高密度に圧縮をして、物理的な重さを持った。
 だがそれが解れ、消えていく。

 また体を、霧に戻そうとするが、それができない。

 何か決まり事があり、受肉した瞬間、それに沿ってしまったようだ。
 この宇宙の決まり事。それに組み込まれてしまった。

 むろんそれをしたのが何者かは判らない。だが、そのおかげで、生物のようにダメージを与えられる。
 闇にとっては不利な状況。

 動きを止め呻いているために、また口へ、ランチャーの弾が押し込まれ、はじける。

 とうとう光は、内側から喉を食い破ってきた。

 口腔から鼻腔、目を突き破り、頭蓋骨を消滅させる。

 だが、頭で考えているわけではない。

 胸より上は消えてしまったが、手足を振るい攻撃をまた始める。
 物理的な何かになったが、疲れや痛みなどは感じない。
 消耗をすると、小さくなって行くだけ。

 いい加減、皆は疲れてきた。

 こっちは人間で、光魔法を連発中だ。
「いい加減疲れた」
 そうぼやきながらふと気が付く。
 霧の時には効かなかったが、今ならひょっとして……

 真打ち登場と、杏がこちらへ来たとき、目の前の空間で、世界が軋む。

 そう、息吹が放った空間斬。

 あっという間に切り刻まれ、ブロックになり崩れ始める。

 その上に手榴弾がばら撒かれ、さらに力一杯の光魔法。

 世界が白く塗りつぶされる。
 その中で、蒸発するように、黒い奴が消えていく。

「そりゃ」
 光希も放つ。
 そして、シーヴ、アデラ、杏。

 光が本当に世界を染め、何か結晶が煌めく。

 それは、黄金の粒子が混ざり、少しいつもと違った。
 その光の中で、闇は消えていく……

 その下の地面まで、消える。

「ちょっとやばい。逃げろ」
 どのような反応が起こったのか、その場には百メートルを越える、クレーターが出来上がった。

 その光は、遠く離れた都市でも、見られるほどだったとか。

 それを見た大部分は、それが光希の仕業とわかり大騒ぎになる。

 石の像の横に、クリスタルの像ができたとか。
 息吹達は当然逃げた。

 そして、そのクレーターの中心から、ちょっとズレた所に、開いている大穴。
 そこには飛行機から数発の、浄化用爆弾が念には念を入れて落とされた。

 それにより、きちんと浄化できたはずだったが、闇は闇。
 復活には、数億年掛かった様だが、奴は再び這い出してきた。

 だがまあ、それはずいぶんと後の話し。

「さてそれでは、発表しようか」
 人が住んでいる地域。地球の空に、スクリーンが浮かんでいた。
 そこに流される、闇との戦い。
 そうファジェーエヴァでの戦闘。それを利用して言い訳が、始まった。
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