上 下
22 / 44
第四章 世界は戦乱へ

第22話 錬金術。創薬

しおりを挟む
 気のせいか、じいちゃんが若くなってきている。
 行動は前からだが、体が。

「じいちゃん。何かした?」
「おお、お前が取ってきたヒュドラの尾で、材料がそろったからな。薬を創った」
 そう言って、にっと笑う。

「ただなあ、副作用がすごい。気合いと根性で何とかしないと、飲んだ瞬間に死ぬぞ」
「じいちゃんで、それ?」
 じいちゃんの弱音。ちょっと驚きだ。

「ああ。まず人をやめ。特訓をしてから飲んで…… どうかな?」
 じいちゃんがそう言うなら、相当だろう。

 じいちゃんは元から少し、人から外れていたから大丈夫だったが、ばあちゃんや親父達はどうかな。

 軽く言った、人間をやめるという事。あの痛みと苦しみは無視して、数日動けないだけと言っていたじいちゃんが、死ぬという言葉を使う。
 相当だろう。

 若く見えるが七十二歳。よく試したな。
 しかも、一気に若い体に戻れるわけではなく、じわじわ。毎回苦しみを受ける。

「まあ、家族には言って見るが、どうかな。各自の判断に任せよう」
 そう言って、少し悲しそうな顔をする。


 まあ、それはそれ。
 そして、シーヴ達の動きが、活性化をする。

「移民が来ます。まず一万人」
「と言う事は、宣言はやめて、徐々に混ざる気になったんだな」
 最初は宇宙船で空を埋め尽くし、侵略者よろしく、やる予定だったようだ。
 それはプライド的にも刺激するし、後々も面倒だ。
 こそっと混ざれ。そう提案をした。
 現在、丁度混乱中だしな。

「そうです。光希様のご意見が、満場一致で採択されました。ほとんどが、こちらで言う欧米人系なので多少混乱はあると思いますが、よろしくお願いいたします」
「判った。町長にはもう許可を取ってあるし、技術支援のおかげで、県の方も何も言わん。もともと、扱いに困っていた国有地。ごっそり貰ったぞ」

 そう、見放された国有林。
 メンテナンスをするだけで、膨大な金がかかる。
 そんな山が、かなりの面積で存在している。

 ニュータウン化。山を切り開き宅地化をする。
 入ってくるのが、少し遠い所からだが、そもそもが、限界集落だらけだった高知県。Iターンの推進という事だ。
 一気に人数が増える。

「まずは、一万か。獣人達は?」
「今回優先的に。半数は獣人です」
「町は分けるのか?」
「今時、差別はあまりありませんが、今下手に分けると、この先で、再燃とか起こりませんか?」
「難しいところだな。移民でストレスがある。力を合わせて、がんばろーとなれば良いが」

 そんな事を、家族会議で決めていく。

「山は、平地となだらかな小山に整地して、広葉樹は再利用。昭和の遺産である、杉やヒノキは使って良いらしいから使おう」

 そう、事が起こる前、円安により国内産の木が少し見直されていた。
 ただまあ、伐採後は植林されず。パネルが張られていたようだが。


 そうして、最新装置と魔法のごり押しで、お迎えの準備は出来た。
 今回の移民船は、角形の五百メートル級。
 内部は、空間魔法で広げられ、快適だそうだ。

 ニュータウン脇の空港へ船が着陸する。
 建てられた家は、向こうでの標準タイプ。
 外側は、樹木系モンスター由来の樹脂製で軽くて丈夫。湿度まで調節する優れもの。地面とは、わずかに浮いているらしい。
 形状は半円の部屋を、通路で繋いだような形が基本で、まるで昔のSFだが、飛行系モンスターからの攻撃を考えると、この形になるとの事。

 ユニットで作成をして、接続は専用樹脂。張るだけ。

 水などは、家の中で循環式。
 基本はすべて魔導具だから、エコだ。

 そう、ファジェーエヴァは長年電動化で文明を進めたが、星の具合が悪くなり、近年は魔導具文明へと、舵を切った。
 基本的には、コントロール用水晶板で、家中の魔導具を制御できる。
 板が無いときは、音声だ。

「まあ基本、家については向こうと同じだから、問題ないだろう。星全体で三十億人くらいだったな?」

「そうですね。何か意味があるかのように、定期的に厄災というか、災害が起こるので」
 端末をいじりながら、アデラが設定をしていく。
 今空港の船に、住民に向けて情報が流されている。

 居住する家の説明と、環境。
 近隣の町と原住民。
 基本ルール。そしてマップ。

 四国山地の山の中。
 周囲の町をあわせて一万人だったのに、いきなり一万人が増える。
 これからどんな事になるのか、予想は誰も出来ない。
 だが、移民の第一歩は始まった。

「到着した事を報告して、各家庭用コンソールと配送システム。輸送船のコンピュータが来たから余裕が出来たにゃ」

 現行は輸送船に乗せてある食糧の分配と、各家庭にあるコンソールで発注。そして空間魔法による配達。
 中間部分は、今回、管理倉庫兼発送センターを造った。

 中では、フォークリフト型と人型のゴーレムが走り回っている。

 コンピュータが在庫状況と減る速度を見て、アラートを出す。
 そのアラートを見て、人が農協なり、生産者なりへ発注をする。
 生産者は、トランスファーチューブへ物を放り込む。

 やっと流通システムが、組み上がったようだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

ようこそリスベラントへ

篠原 皐月
ファンタジー
 日欧ハーフの来住藍里(くるすあいり)は、父親の遺伝子を色濃く受け継いだ兄二人とは異なり、母親の遺伝子を色濃く継いだ純日本人顔の女子高生。日本生まれの日本育ちで、父の故郷アルデイン公国へもこの何年かは足が遠のき、自分がハーフである事実すら忘れかけていた彼女だったが、自宅がとある美少女のホームステイ先となった事で、生活が一変する事に。  実は父親の故郷には裏世界が存在し、そこは階級社会なくせに超実力主義な、魔女の末裔達が暮らす国だった!? 更に不幸にも建国の聖女(魔女)の生まれ変わりと見なされてしまった藍里の周囲で、トラブルが多発。のんびり女子高生ライフから一転、否応なしにやらなきゃやられるサバイバルライフに突入させられてしまった藍里の、涙と笑いの物語です。小説家になろう、カクヨムからの転載作品です。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

俺が異世界帰りだと会社の後輩にバレた後の話

猫野 ジム
ファンタジー
会社員(25歳・男)は異世界帰り。現代に帰って来ても魔法が使えるままだった。 バレないようにこっそり使っていたけど、後輩の女性社員にバレてしまった。なぜなら彼女も異世界から帰って来ていて、魔法が使われたことを察知できるから。 『異世界帰り』という共通点があることが分かった二人は後輩からの誘いで仕事終わりに食事をすることに。職場以外で会うのは初めてだった。果たしてどうなるのか? ※ダンジョンやバトルは無く、現代ラブコメに少しだけファンタジー要素が入った作品です ※カクヨム・小説家になろうでも公開しています

処理中です...