神の使徒は闇を走り、道化師は戯れる。ー 異世界、世直し道中記 ー

久遠 れんり

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最悪な国、ニコ国

第38話 カグラ再び参戦。

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 王は喜びながら帰る。

 だが、その一方で困惑をしていた。
 教会の上位、その誰もがあんな事は成しえないはず。
 治療魔法というのは、本人の治す力を加速するものだと聞いている。

 つまり、傷は深ければ痕となり、それは消えず、欠損部分は生えることはない。
 娘の片耳は半分ちぎれていた。
 拷問でよく使われる手だ。

 それが、すべて綺麗に治っていた。
 彼は冒険者と言ったが…… まさか伝説の使徒様? 神の使いが年百年とか何千年かに一度地上に降りられて、人々の暮らしを見るとか。
 その時、駄目だと思えば洪水などの天災を起こし、心正しき者達だけを助けるような行為をなさるとか。
 教会を含めて、そのような伝承はどこにでもある。

 未だに論争の残る書籍、神による粛正。その黙示録というものには、この地は丸く、何もない空間に浮いているというものが書かれている。

 神の怒りにより、別の星がこの地に降ってきたとき、空を飛ぶ船により心正しき者達は救われたと書かれている。
 その船は弓形ではなく、木馬の様だったとか。

 確かお怒りになられ、魂の解放を期待をして星を落としたのは、キャソンバルダイソン様だったか、大層きれい好きな神だとか?

 まあなんにしろ、過去の戒めは何か理由があるもの、そうニコ国め許さん。
 神に変わって、天罰をお見舞いしてやる。
 彼が使徒様なら、綺麗にしておかなければ……
 
 王は、王妃に報告をして、ロジーヌが元の様に治った事を伝えた。


 そうして、報復、そして粛正の戦が始める。

 丁度、ニスカ国のニコ国討伐隊、ゴットハルト=ナンデンヤルカ侯爵が、ニコ国第一次遠征軍大将コズール=クラッカー伯爵にだまし討ちに遭い、撤退したくらいの時だった。国の反対側から今度は、ヨウシア国が攻めてきた。

「やっぱり来たか」
 姫に逃げられたときから、予想はしていた。

 そのため今度は、国同士の戦として礼節を持った物では無く、盗賊としての戦法を最初から使ってきた。

 街道を行軍していくヨウシア国。
 街道はそんなに広くないため、数千の兵とは言え、隊列は長くなっていく。


「野郎ども、準備は良いか?」
「いつでもいけますぜ」
「前にやっていたのと同じだ、奪うものは無いから焼き払え」
「「「「おう」」」」

 のろしではなく、磨いた金属により光が煌めく。
 それが合図で、街道のあちらこちらで、いきなり木が倒れた。

「なっ、敵襲」
 隊の中で声が上がるが、その時にはすでに分断をされていた。

 木の下敷きになった者達もいて、当然助けようとする。
 だがそこに、油の入ったツボが投げ入れられる。

「なっ、まずい。総員退避」
 気がついた者達が声を上げるが、そこに火矢が撃ち込まれる。

 瞬く間にそれは燃え上がり、倒された木までが燃え始める。
 阿鼻叫喚、生きたまま焼かれて、その叫び声が戦場に響き渡る。

 そのため、ヨウシア国は懲罰隊千人ほど、三分の一を焼かれてしまう。

 そして、そのこそくな手法に、王は本気になる。
 半分は私怨からの懲罰だったが、今度は違う。
 自軍の兵を殺されたのだ。

 本格的な戦争へと突入し、冒険者ギルドへも声が掛かることになる。

 そう、そうなれば、登録してあるカグラも当然出なければいけない。
 ギルドで話しを聞き、いやな記憶が蘇る。

 この世界へ来て、一番の衝撃。
 だがそのおかげで、能力は広がり、人間的な心も少し返って来た。

 だが、忘れていたが、ヴァイオレットやロジーヌにひどいことをした連中だという事。記憶を見て、カグラはそれを知っている。


 様々な不安を抱えながら、参戦をすることになる。

 今回は、街道脇にも兵や冒険者が入り込み、チェックを行いながら進んでいく。

「あー面倒だ」
 冒険者達がぼやく。
 木は茂っているが、街道沿いは光が入るために下草が生えている。

 だが、ぼやきながらも、入っていたおかげでニコ国に入る手前で早くも奴らの罠を見つけた。

「おおい、木が切られている。気を付けろ」
 そんな声があちこちで聞こえ始める。

「まだ木が枯れていない、敵に気を付けろ」
 そんな声まで。



「畜生、奴らもそこまで馬鹿じゃないか……」
 ニコ国の工作員達は逃げていく。
 流石に奇襲というものは、幾度も使えないようだ。


 その頃、副官バークヘアは、旧ダミアン王国を走り回っていた。
「それはまことですか?」
「ああ、現王は、暫定なんだ。新制モナリチア王国は、あるお方の助言で、議会制を取ろうと思う」
「議会制でございますか?」
「ああ、代表が一人だからおかしくなったときに国が倒れることになる。等しく力を持つものが複数人いれば、全員がおかしくならない限り、国は正しく歩めるとな」
「おお、なるほど。その助言を行った方は?」
 そう聞くと、トビアス=ハーケス伯爵は首を振る。

「冒険者、カグラと言ったな。あの者は一人で城を攻め落とし、王達の首を落とした後、姿を消してしまった」
 そう言って残念そうな顔になる。

 農場での包囲から脱出。
 その場で、同じ作戦が行われると判断をして、一気に同胞を助けて立たせ、攻撃に転じると、あっという間に城を落としてしまった。

 そこへ至るときには、先についてまだ何も考えておらず。冒険者だから期待もせずに、そう、からかい半分に、茶飲み話として話しを振ると、そんな事を教えて貰った。
「あの男は、伝説の賢者かもしれない」
「賢者ですか……」
「まあ良い。しばらく、私の仕事を手伝いなさい。何も手柄無しに家の復興を進言することもできまい」
「はい。よろしくお願いいたします」
 こうして、新制モナリチア王国は厄災の種を、内側に取り込んでしまった。
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