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第5章 獣人国平定
第85話 謎の勢力
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「此処がキングクリムゾン」
ヨシュートがその地に立つ。
直径五十キロの広大な土地を、円形に高さ十メートルの壁が囲む。
元々は、隕石でも落下したような、窪地だったようだ。
その底には、地獄にでも通ずるような穴があり、底から魔物が湧いてきていた。
そこに、壁が造られ、町が広がり、さらに外に壁が造られて広がっていった。
歴史と共に、その穴は幾度か氾濫を起こし、古い町は亡くなった被害者と共に埋められて、その上に新しい町が建設されて行った。
そう、モンスターの氾濫被害者達、その死体の上に建つ町。赤い都市と呼ばれる由縁である。
「『光の導き』ですね」
「はい、そうです」
「私は、スタローン家執事、セバスチャンヌと申します」
「これはご丁寧に、私はヨシュート様の副官ロニー=ウィルと申します」
彼は、副官と言う単語に反応をする。
「副官? でございますか?」
「ええ、私の役目は多岐にわたっておりまして、便宜上副官と称しております。はじめて彼の方とお会いしたとき、彼が上官でしたので」
そう言うと、セバスチャンヌの目が鋭く光る。
「軍でございますか、それはどちらの?」
そう聞くと、ロニーの目がキラリと光る。
「旧名ベルンハルト王国、彼のお方はあっという間に大陸を統合し、覇王となったのです。この大陸も統治しようと来たのですが、殲滅ではなく平和裏に獣王となる事を選択をしたのです」
ロニーは、恍惚とした表情で、すべてをぺろっと暴露してしまう。
その時の彼は…… 何も考えていなかった。
話を聞いたセバスチャンヌは、それをどう受け取っていいのか判らず、目の前にいる『光の導き』の代表を、どう測って良いものかと考える。
だが、考えても判らず、無視をすることにする。
「本戦会場、屋台の場所は決まっております。ですが、仰っていたとおり、此処の倉庫の場所を移し空いたところを使用する許可はいただきました。移設と建築予算はそちらが負担で本当によろしいのでしょうか?」
ロニーは不敵に笑う。
「ヨシュート様が、パパッとかたづけます」
「ヨシュート様が?」
当然訳が分からない。
「ええ、見学に来られれば、あなたは奇蹟を見る事になるでしょう」
そう言って嬉しそうなロニー。
ロニー=ウィル、彼は無自覚に騒動を招き入れる男……
果たして、その奇蹟はセバスチャンヌの目の前で起こる。
「奇蹟は現場で起こっているんです」
疲れた感じで現れた、ヨシュートと言う代表。
大会が終わり、こちらへ移動してきて落ち着いたため、ヴァレリーとベルトーネが朝まで許してくれなかった。
意識を失っても、もう一人を愛している間に、まだまだぁ、という感じで復活をする。
そして、ヨシュートを送りだして、自分たちは眠りにつく。
「ズルいよなぁ」
ぼやきながら、ヨシュートは手をかざす。
その瞬間、石で造られた建物が砂となり、バサッと言う感じで崩れる。
風が一吹き。それだけで、その砂の山が消えてしまう。
「なんと……」
本当に、一瞬。
どういう魔法なのか、セバスチャンヌには全く理解ができなかった。
ただ、無くなったのは事実。
そしてだ…… 新倉庫予定地。
綿密に書かれた図面。
それは少し小さな体育館レベル。普通に造れば、人を大量に従事させれば半年。
普通なら、一年以上はかかるだろう。
「ふーん。判った」
それだけである。
今度は腕も振らない。
位置を大体歩いて確認。
彼の部下だろうか? 紐を持って走り回り、炭でマークを付ける。
もう一度図面を見て目をつぶる。
すると、なんと言うことでしょう。
地面から建物が生えてくる。
それもあっという間に。
石のようだがつなぎ目はなく、完全一体化。
盗難などを考えても、安全性は高そうだ。
漆喰で固めても、たまに崩されて盗難が起こる。
だがこれは?
「完全に一体化をした、石でございますね」
そう、セバスチャンヌがどう確認をしても、つなぎ目がない。
そして、窓は無くとも人が入れば、魔導具が勝手に光を発する。
そして人が居なくなれば、勝手に暗くなる。
入り口には、魔導具による認証。
対になる魔導具を持っていないと扉が開かず、横スライドの扉のため押したり引いたりの力にも強い。
「これは、素晴らしい」
セバスチャンヌは、その造りに先進性を感じる。
ヨシュートが伝えて、ユキが造った魔導具。
それはこの世界では、とびぬけた発想。
無論、倉庫は一発オッケー。
彼らは、屋台の出店場所を確保する。
その頃、発表された獣王戦のトーナメント表に、ある驚きがあった。
元々、地方予選などおまけのお祭り、六か国に対しての言い訳のような試合。
本選の一六個の枠の内十個は、基本シードで埋まっているのだ。
今回、その一個が棄権され空いていたのだが、それに対して色々な思惑が絡み合い騒動となった。
だがまあ、そんな事に関わらず、屋台は仕上げられていく。
「新人だと?」
「場所が空いたために入り込んで来たらしい。新興のなんとかの光だとか言う商会だ」
それを聞いて、嬉しそうに笑う店主達。
「ハン…… 何日持つかな」
皆が頷く。
「ああ、獣王戦の屋台は戦争だ、試合の合間合間にどれだけさばけるのかも重要だ。俺なんか、釣り銭を用意して、出された金と売った商品ですぐに渡せるようにしているからな。歴史が違うぜ」
それを聞いて、突っ込みが入る。
「おいおい、個数によって釣りが違うだろ」
「だからだよ、箱を用意してだな…… 言うわけないだろう」
「ちっ、けちめ」
関係する者達の思惑が渦巻き、試合だけではない欲望が今動き始める。
ヨシュートがその地に立つ。
直径五十キロの広大な土地を、円形に高さ十メートルの壁が囲む。
元々は、隕石でも落下したような、窪地だったようだ。
その底には、地獄にでも通ずるような穴があり、底から魔物が湧いてきていた。
そこに、壁が造られ、町が広がり、さらに外に壁が造られて広がっていった。
歴史と共に、その穴は幾度か氾濫を起こし、古い町は亡くなった被害者と共に埋められて、その上に新しい町が建設されて行った。
そう、モンスターの氾濫被害者達、その死体の上に建つ町。赤い都市と呼ばれる由縁である。
「『光の導き』ですね」
「はい、そうです」
「私は、スタローン家執事、セバスチャンヌと申します」
「これはご丁寧に、私はヨシュート様の副官ロニー=ウィルと申します」
彼は、副官と言う単語に反応をする。
「副官? でございますか?」
「ええ、私の役目は多岐にわたっておりまして、便宜上副官と称しております。はじめて彼の方とお会いしたとき、彼が上官でしたので」
そう言うと、セバスチャンヌの目が鋭く光る。
「軍でございますか、それはどちらの?」
そう聞くと、ロニーの目がキラリと光る。
「旧名ベルンハルト王国、彼のお方はあっという間に大陸を統合し、覇王となったのです。この大陸も統治しようと来たのですが、殲滅ではなく平和裏に獣王となる事を選択をしたのです」
ロニーは、恍惚とした表情で、すべてをぺろっと暴露してしまう。
その時の彼は…… 何も考えていなかった。
話を聞いたセバスチャンヌは、それをどう受け取っていいのか判らず、目の前にいる『光の導き』の代表を、どう測って良いものかと考える。
だが、考えても判らず、無視をすることにする。
「本戦会場、屋台の場所は決まっております。ですが、仰っていたとおり、此処の倉庫の場所を移し空いたところを使用する許可はいただきました。移設と建築予算はそちらが負担で本当によろしいのでしょうか?」
ロニーは不敵に笑う。
「ヨシュート様が、パパッとかたづけます」
「ヨシュート様が?」
当然訳が分からない。
「ええ、見学に来られれば、あなたは奇蹟を見る事になるでしょう」
そう言って嬉しそうなロニー。
ロニー=ウィル、彼は無自覚に騒動を招き入れる男……
果たして、その奇蹟はセバスチャンヌの目の前で起こる。
「奇蹟は現場で起こっているんです」
疲れた感じで現れた、ヨシュートと言う代表。
大会が終わり、こちらへ移動してきて落ち着いたため、ヴァレリーとベルトーネが朝まで許してくれなかった。
意識を失っても、もう一人を愛している間に、まだまだぁ、という感じで復活をする。
そして、ヨシュートを送りだして、自分たちは眠りにつく。
「ズルいよなぁ」
ぼやきながら、ヨシュートは手をかざす。
その瞬間、石で造られた建物が砂となり、バサッと言う感じで崩れる。
風が一吹き。それだけで、その砂の山が消えてしまう。
「なんと……」
本当に、一瞬。
どういう魔法なのか、セバスチャンヌには全く理解ができなかった。
ただ、無くなったのは事実。
そしてだ…… 新倉庫予定地。
綿密に書かれた図面。
それは少し小さな体育館レベル。普通に造れば、人を大量に従事させれば半年。
普通なら、一年以上はかかるだろう。
「ふーん。判った」
それだけである。
今度は腕も振らない。
位置を大体歩いて確認。
彼の部下だろうか? 紐を持って走り回り、炭でマークを付ける。
もう一度図面を見て目をつぶる。
すると、なんと言うことでしょう。
地面から建物が生えてくる。
それもあっという間に。
石のようだがつなぎ目はなく、完全一体化。
盗難などを考えても、安全性は高そうだ。
漆喰で固めても、たまに崩されて盗難が起こる。
だがこれは?
「完全に一体化をした、石でございますね」
そう、セバスチャンヌがどう確認をしても、つなぎ目がない。
そして、窓は無くとも人が入れば、魔導具が勝手に光を発する。
そして人が居なくなれば、勝手に暗くなる。
入り口には、魔導具による認証。
対になる魔導具を持っていないと扉が開かず、横スライドの扉のため押したり引いたりの力にも強い。
「これは、素晴らしい」
セバスチャンヌは、その造りに先進性を感じる。
ヨシュートが伝えて、ユキが造った魔導具。
それはこの世界では、とびぬけた発想。
無論、倉庫は一発オッケー。
彼らは、屋台の出店場所を確保する。
その頃、発表された獣王戦のトーナメント表に、ある驚きがあった。
元々、地方予選などおまけのお祭り、六か国に対しての言い訳のような試合。
本選の一六個の枠の内十個は、基本シードで埋まっているのだ。
今回、その一個が棄権され空いていたのだが、それに対して色々な思惑が絡み合い騒動となった。
だがまあ、そんな事に関わらず、屋台は仕上げられていく。
「新人だと?」
「場所が空いたために入り込んで来たらしい。新興のなんとかの光だとか言う商会だ」
それを聞いて、嬉しそうに笑う店主達。
「ハン…… 何日持つかな」
皆が頷く。
「ああ、獣王戦の屋台は戦争だ、試合の合間合間にどれだけさばけるのかも重要だ。俺なんか、釣り銭を用意して、出された金と売った商品ですぐに渡せるようにしているからな。歴史が違うぜ」
それを聞いて、突っ込みが入る。
「おいおい、個数によって釣りが違うだろ」
「だからだよ、箱を用意してだな…… 言うわけないだろう」
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