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第三章 終末へと向かう世界

第45話 そして俺たちは復活を目指す。

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 忙しくしていると、北側へ行った明智達が、わずか二ヶ月で帰ってきた。
 
「お疲れ早かったな」
「ああ途中で、隠れ里的な所を見つけた」
「隠れ里?」
「ああ基本は、虫系。管理者は動物系。山の中に点在していて、自分たちで自給自足していた」

 明智から話を聞くと、田んぼや畑を細々守り、現れたイノシシや鹿を狩っているようだ。

 酒も造っていて、もてなしとして夜伽(よとぎ)歓待があったと明智が喜んでいた。一応、この町の方向を教えてきたという事だ。
 興味があればくるだろう。

 それから遅れること、三ヶ月。やっともう一つのチームが帰ってきた。
 東へ向かったチームだ。
「何も無かった。都市は廃墟で光が暴れたのか、至る所にぽっかりと謎の池が出来ていた」
 疲れた感じで、チームリーダーの白石さんが答えてくれた。
「それでまあ、もっと行こうかと思ったが、寒くて雪が降ると帰ってこれない気がして諦めた。すまない」
「いや、東北の豪雪は無理だろう」
 俺と、里村のじいさんもねぎらう。


 七彩たちは、帰ってこず、調査隊を出そうかとしていた春先。
 ぽっかりと帰ってきた。
「無事だったのか。良かった」
「えへ。ただいま。色々収穫があったよ」
 そう言って抱きついてくる。

 その晩、報告を詳しく聞く。
 各地方の集落では、動物系の村長がいて集落を守っている。
 村に入ったよそ者は、攻撃されるのがおちだが、闇でドーピングされている七彩達には効かず向こうが降参したようだ。

 そんな集落が、点在していて平和に生活をしている。
 どこに行っても、戦国武将よろしく戦争状態だった光たちは共倒れをしたようだ。
 もしくは、年を経るたび消えたので、冬が越せなかった可能性があると言うことらしい。

「まあそれなら、将来的に交流していっても良いか」
「そうね。今度は一緒に行かない?」
「どちらにしろ、冷媒その他諸々。欲しいものはあるからな。関西や中国地方に向けて行かなきゃならん。道は使えそうだったか?」
「使えそうだけれど、高速は危ないよ。光の馬鹿だと思うけれど、切り取られたところがどこにあるか分からない」
「そうか、それにもう十数年メンテナンスも、されていないだろう。避けた方が良さそうだな」

 そんな話をしていると、久しぶりにくみがやってくる。
「なあに? 楽しそうな話し?」
「ああ色々探しに、関西方面へ行こうかという話だ」
「行く。うどん食べたい。お好み焼きとかたこ焼きも」
「さすがに店は無いだろうが、鉄板を見つけたら作れそうだな。ソースさえ何とかなれば作れそうだが」
「そんなことを言っていたら、食べたくなってきた。なんだかそういうものを普通に食べていた10年前が、凄く懐かしい」
 そう言って、くみがよだれを垂らす。

「そうだな世の中が、安全で平和。良い時代だったな。なるべくそれに近いところまで戻したいが、世の中で色々な仕事に従事していた人が消えた以上。すべてが手探りだ」
「そうねぇ。ソースだけでも復活は難しいし」
「違いない」

 そう言って語るくみと俺の横で、七彩が首をひねっている。

「お好み焼きとか、たこ焼きって何?」
 そう言って、きょとんとしている。
「七彩は食べたことが無いのか? お祭りの縁日とかでも出ていたと思うが?」
 ぶんぶんと、首を振る。

「じゃあやはり、作るか。じいさん達と相談して再現しよう」
「そうだね、キャベツもあるし。お祭りだね」
「鉄板を探せば、たこ焼きも作れるが、どこかにあるかな?」
「ちょっと待って、どこかに店があった気がする」
 わいわいと、話が盛り上がり、翌日には、祭りをしようという事になった。

「春と、秋二回どうじゃ」
「えらく張り切っているな」
「そりゃそうじゃ。報告を聞いた感じ、平和になったようだし、これからは文明を復活させる。そのための第一歩。ソースを作るぞ」
 里村のじいさんもその連れ連中。無論年寄りだが、盛り上がり始める。

「ソースは野菜と果物、そして香辛料。ううむ難しい。輸入が無いと栽培できん物もはいっとるな」
 里村のじいさん達が、書庫から本を探し出してきたようだ。
「ナツメグ、シナモン、クローブが無い」
「今ならまだ、どこかに無いか?」
「よおし、探してくる」
 年寄り達が、走り始める。

「やっぱり能力のせいか、みんな元気だよな」
「そうね」

 その後、妥協に妥協重ねたソースだったが、マヨネーズや鰹節が良い仕事をして、そんなに悪くなかった。七彩達も喜んでいたし、これからの世代は、これがスタンダードの味になっていくのだろう。


 今だ、日本以外はどうなっているのか知らないが、ここから俺たちは文明の復活に向け、努力することをみんなの前で宣言。

 決意も新たに、自分たちが出来ることをやっていく。

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