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第三章 終末へと向かう世界

第43話 五年後

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 世界が崩壊して、情報が入らず。他がどうなっているのかは知らない。

 俺たちは、里村のじいさん達と協力し、郊外の方にまで勢力範囲を拡げていく。
 あれから、五年が過ぎ花蓮の妹。杏果も闇の力を使いこなし、大きな戦力となっている。
 能力は、やはり若い方が、親和性が高いようだ。
 絶対的強さは、俺の方が強いようだが、能力の範囲は、杏果の方が広い。

 勢力内では、農業を復活させ、海の方では漁業も復活。

 とっくに電気はなくなったが、そこら中から発電などのモーターを集め、危なくないように直線翼縦軸型や棒つまり円柱にリングを組み合わせた長岡技術科学大学が開発したものを利用。風の強さを感知し、ある程度より強くなれば自動的にリングが後退して回転が弱まる。弱くなれば勝手に前に進み回転を一定にするように構造を変更。
 この変更部分は、遠心クラッチの理論。つまり回転数が多くなれば、外のプレートを回す。逆なら内側を回す。つまり適正なら内部プレートは宙に浮かんでいる。

 そんな事をしながら、文化的生活を何とか保っているが、当然ほしがる光の奴らがやってくる。

 食らうだけだけどね。

 ただ、年に何回かは、勢力を持った遠征組がくる。

「西の方で光。あれは、終焉の光だな」
 部屋の窓から外を眺めていると、まばゆいいばかりの光が見えた。

「西側という事は、あのわがまま野郎が支配している地域ね」
 嫌そうに言うのは、花蓮。

 前に交渉に行ったとき、いきなり胸を揉まれたらしい。
 光の浸食が来たようだが、花蓮の内部に潜んでいる俺の闇がブロックした。
 今の花蓮は、毒やフェロモンの代わりに、闇を拡散できるようになっていたので任せたが、光には後れを取ったらしい。
 ついていった杏果が、股間を蹴りあげたらしいが。

 光の奴らは、普通の能力者を力で支配。ほぼ奴隷化して帝国を創り上げている。

 光の支配地域へ踏み入れれば、世紀末感が漂う。
 なぜなら、支配下にいる人間は、思考力などが落ちる。

 こちらと違い、笑顔もない。

 まてと言われれば、無感情で座り込んでいる。


 そんな地域だが、滅んだ可能性がある。
「どっちが使ったのか分からんが、見に行くか?」
「ちょっと待って、いま見ているから」
 そういうのは、杏果。

「凄いな。この距離で詳細が分かるのか?」
「えへっ。んんっ~」
 それを見ていて、花蓮がむっとした顔で杏果の胸を揉み始める。
「ちょ。お姉ちゃん。じゃまをしないで。あんっ」
「こら、花蓮」
 俺がそう言うと、パッと手が離れる。

 全くもうという感じの、杏果の顔が、粋なる歪む。

「数千単位が来てる。どうする?」
 俺はその瞬間に、自身の支配下へ東側へ退避の命令を下す。

「頭に響いた」
「距離が近いからな」
「嘘ばっかり、距離は関係ないでしょ。大丈夫なの?」
「大丈夫だろ。それより、くみを頼む」
「りょーかい。あたしは、どうして妊娠しないのかしら?」

 そう。くみは、第二子を妊娠中。
 一人目は男。司という名前で、いま三歳。

「まあ頼む」
 そう言って駆け出す。

「ちょっと待って、総」
 杏果が叫ぶが、放って行く。

「きちんと、服を着とけ」
 そう言うと、後ろから。
「もおぅ。また置いていかれた」
 背後から、文句が聞こえる。

 途中で、里村のじいさんと合流。
「お嬢ちゃんは、また置いてけぼりか?」
「そうだな」
「甘やかしすぎじゃ。おまえさんも親になったのじゃから、次代の育成を考えろ」
「そりゃまあそうだが、数千くらいだ。大丈夫だろ」
「簡単に言うのう」

 地面に降りたら、一気に走って行く。
 車もバイクもあるが、壊したくない。
 改造しまくった結果だからな。

 さて、西へ行き俺たちの縄張りの境界。一応壁を造り、門を設けてある。
 倉庫にあったコンクリートと、瓦礫の砕石。
 簡易で型枠を組んで、流し込んだだけ。コンクリートバイブレーターがなかったので、棒で突っついたが鬆(す)が随分入っている。三メートルほどの物。鉄筋は支えの所のみ。

 向こうから、土煙と。
「なんだありゃ?」
「まんま、世紀末じゃな。人に引かせているのか」
「まあ光だからな。人を使い捨てにしているのだろ」
 門からじいさんと出ると、矢が降ってくる。

「攻撃を受けたなぁ」
 その瞬間に、地面に闇を広げる。
 じいさんと、きっちり範囲を分けている。
 闇同士は、仲が悪く。重なると食い合いを始めてしまう。

「さて、この人数。全員頂いた」
「じいさん矢に気を付けろ。光を纏った棘がいる」
「はいよ」

 徐々に、行進の隊列が崩れ始め、騒めきが広がって来始める。

「おら何をやってやがる。止まるんじゃねえ」
 モヒカン野郎が、何かを叫んでいるが、あいつは光じゃないな。
 どこだ? 棘は当然違う。
 あの櫓の中か? 浸食して、纏めてある紐を食っていく。

 行く箇所か食らえば、ばらける。
「おわーなんだ」
 モヒカンや入れ墨達が、崩れる櫓から逃げる。

 崩れる櫓の中には、手足を切り取られ、柱にくくられた少女がいた。
「あれが光っぽいが、どういう状態?」
「かわいそうだが、周りで人が殺されて、自身もあの状態。状況は自明。その中で力を得たのじゃろう。光を得たら、欲望に狂う。情けを掛けず。終焉の光を使う前に、殺らんとまずいぞ」
「ああ。分かっている」

 周りの馬鹿者どもも、纏めて食らう。

 その後、怒りながらやって来た杏果に、仲間を増やさせて、力の使い方を説明していく。
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