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第三章 終末へと向かう世界

第40話 神御導生再び

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「周辺、どうですかね」
「もう少し広げないと、食料が厳しくなりますね。特に商業施設は、○○駅周辺なので、あっちまで行けば、かなり違うと思います」

 相談をしているのは、関係者の親。
 地図を中心にして、話し合い中。

「どっちにしても、あまり長くは無いし、あまり人数を増やしたくないが。襲ってくれば食らうより、つい仲間にするんだよな」
 そう。暴動が起こった頃から、飢餓感が少なくなった。
「近寄ってくる、光の連中。総君がごっそり奪ったからね」
「予想外とはいえ、二〇人も一気に増やした」
「でも、話を聞いたでしょ。光の……」
「ああ。神御だろたぶん。奴に触れられると、意識が乗っ取られ、否応なく体を使われる。本人達は、中途半端に意識があるから、苦しかったって」
「ああ。夫婦者だと、自身の目の前で、奥さんが神御に奉仕するのを、見させられたって泣いていたな」

 そう、奴の力は支配を持つ。
 ただ俺の方と違い、キツい。
 いや俺の方も、…… いや、もっとあくどいか。俺の力は、改変をしてしまう。意識そのものを。だから、神御の支配と違い、辛くは無いだろうが、目の前で妻や子が抱かれていたとしても、きっとどうぞと差し出してくるだろう。
 アコギなのは、俺の方かもな。

 そんなことを話していると、周辺を見張っている奴と繋がる。
 目の前には、五〇人ほどの集団。
「やばそうだ、行ってくる」
 そう言って飛ぶ。

 現場で見ると、意識を繋いでみたときより、人数が多い。
 中心。美女に囲まれて、見たことのある人。

「久しぶりですね。山崎さん」
「斉藤君か、ここを仕切っているのは?」
「そうです。手を出してこなければ、何もしません。お帰りください」
「いや君らは、不法占拠中だ、解放して出ていくのは君達の方だな」
 山崎さん。力を得て、力に飲まれたか。随分雰囲気も変わったな。

 そう言ったと思ったら、前列。
 主に男達が、駆け出してくる。
 匂いもするし、俺は仲間達に早急に下がって貰う。
 麻痺か、毒か分からないが、食らい中和していく。
 影から、獣の顎が襲ってくるが、逆に浸食して行く。

 意識が、対象つまり俺に向いている間に、地面に影を広げる。
 触れた奴らを、どんどん浸食して行く。

 立ち尽くし出す仲間に、異常を理解したのか、山崎さんは逃げようとし始める。
 周辺の仲間は、逃走を助けるように突っ込んできて、影に触れ正気に戻っていく。

 逃走する、先へ回り込み。
 山崎さんの仲間の中に混ざり込み、脇から手で触れ、光使いが常に纏っている光の障壁を直接食い潰し、浸食する。
 だがやはり、食い合いでは相殺されてしまう。

 足下に影を展開して、落とす。
 その後、中で光の攻撃により食われたが、最後は、塗りつぶす。
 力を得て期間が短かった割には、膨大な力が、流れ込んでくる。

「あーやっぱり。効率が良いなあ。適当に光を狩りたくなるよ」
 周りで、ザワザワしている人たちは、すでに仲間になっている。
 ざっと百二十人くらい。大人から子どもまで。
「だけど食らうと、人数が増える。これが問題だ。まあいい。見た感じ何日も食べていない様子だし帰るか」
 ぞろぞろと、連れて帰る。

〈くみ、百二十人くらい。連れて帰るから、食べるもの用意しておいて〉
〈げっ。分かった〉

 一人に対して、繋ぐのも大分できるようになった。
 この前までは、メッセージの垂れ流しになったからな。
 力が強くなったせいか、性質がこの前の異変から変わったせいか、よくは分からないが、制御に苦労する。やはり事態は、第二段階へ進んだのだろう。


「さてそういう事で、人が増えて、どうしようもなくなりました」
 見回すと、最近入ってきた人たちが、ばつの悪そうな顔をする。
「だが、光に支配された人たちを、助けない手はありません。そこで、隣の駅まで支配地域を拡大します。最初から居た人には説明しましたが、農産物や海産物。それを入手し自給自足できる環境を整えていきます。慣れないうちは大変でしょうが、文化的生活を取り戻しましょう」

 偉そうに、若造が宣言するが。
「「「おおっ」」」
 そんな威勢のいい声が、帰ってくる。

 支配のため、人数が増えると絶対に発生する反乱や苦情が起きない。これだけでもありがたい。まあ、こうしてほしいとの、意見は聞いているけどね。

 翌日、一人で隣の駅まで支配をしながら歩いて行く。
 俺の支配地域を抜けると、途中から、物騒な雰囲気が漂い出す。
 野良の、能力者達が縄張り争いをしているのだろう。人だった物が、あちらこちらに転がり、ひどい匂いがしている。
 病気の予防や、みんなを連れてくるのにじゃまなので、綺麗に食らっていく。

 探知範囲に入る奴らは、次々浸食していく。
 ただあまり、性格の良くなさそうな奴は、食らう。
 浸食したときに、見えるからな。

 さて、見た事のある奴が、まあ随分と雰囲気が変わったが、目の前に現れる。
「久しぶりだね。神御さん」
「君か、元気そうだね」
「あんたこそ、変な冠までかぶって、救世主かい?」
「ああ私は、神の声を聞いた。この星を纏めなさいと。混沌を収め王になれと」
「奇遇だな。俺も聞いたよ」
 そう答えた瞬間。

 目の前。世界が、白く塗りつぶされた。
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