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第二章 チーム戦?

第15話 壊れる常識

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 おかしい。自分自身で、自分の理解ができない。
 数年ぶりに会ったせい?
 顔を見ると、冷静な判断ができない。

 自身の、気持ちが理解できず。困っている。
 一美は、思い出す。

 公園で会ったときも、駅前で会ったときも。
 すべての反応が、遅れた。
 あまつさえ、あんな奴に。懐かしさや、安心感を感じてしまった。

 斉藤総。私の、幼馴染み。
「むう」
「どうしたの?」
 脇に、桐谷奏がやってくる。
 奏は音を操り、空気に干渉するため。
 すぐ近くに居ても、分からないときがある。

「この前の、男の子?」
「そうね。なぜかあいつに会うと、冷静な判断や行動ができない」
 苦々しい顔で、一美が答える。
「何かの能力?」
「かもしれない。あの晩。訳の分からない力で、1人食われた。いえ、食われたのよね。今だに行方不明だから、多分ね」

「あの晩消えたのは、3人。うーん。怒らないで聞いてね。あの時。あの彼が、現れたでしょう。その時、私ね。この人は、運命の人って。思っちゃったの」
「はぁ? あいつを?」

「そう。姿が見えなくなって、落ち着いたけれど。あの時。凄くドキドキして、好きと言うより、愛おしいが近いかな。それがね、今でも胸の奥にあるのが分かるの」
「それが、奴の能力? でもそんなに幾つも?」
「能力って、まだよく分かっていないから、私たちより、上位とか?」

「あいつが? そんなの許せない。小学校の時だって、私の庇護下で何とかできていたくらいで。私が居なければ、もっと悲惨にいじめられていたはずよ」
 そんな感じで、一美は悩んでいた。


 その頃。デート中の、総たち。
「ねえ本当に。大丈夫? ですか?」
「大丈夫だよ。僕はこの前から、君に会うためだけに。今日を楽しみにしてきたんだ。ちょっとくらいの熱など。平気さ」
 そう言って、明智君は、安田千夏に笑いかける。
「まあ。明智さんたら。でも、あまりご無理は、しないでくださいね」
 今はまだ、猫をずっぽりかぶっている千夏。
 一見すらっとした美人。優しく心配したふりで、明智君に微笑みかける。

 結局、行き場が決まらず、とりあえずボウリング場へやって来た。
 これは、千夏ちゃんの発案。

 僕らは、したことがないが、彼女は、親に連れられ結構来るそうだ。
「本当は、筋力バランスが崩れるから、嫌いなんですけどね」
 そう言いながら、右でも左でも投げていた。

 僕たちは、とりあえず遊び方を検索して、投げ始める。

 そして、風切り音を上げ。
 12ポンドのボールが、直接ピンに当たる。
「うー。全部は倒れなかった」
 かわいく。くみが帰って来る。

「2投目で倒せば、スペアって言うみたいだよ。10点と、次の1投目の点数も足されるみたい。ストライクだと、次の2投分が加算。全部ストライクだと。300点満点だってさ」

「へーおもしろいですね」
「早く投げてよ。くみ。もうあのカバー上がったよ」
「そんなに焦らなくても。私が勝つのは分かっているんだから」
 そう言ってくみは、戻ってきたボールをつかみ。ブンと投げる。
 見事に、ピンをはじき。もう一本に当たり倒した。

「やった。これでえーと。すぺあかな?」
「そうそう」
 ハイタッチを、くみとする。
 そこで背後から、誰かがやってくる。

 警戒しながら、振り返る。
「あのう。プレイ中申し訳ありません。ピンに直接投げつけないで、レーンを転がしてもらえますでしょうか? レーンや設備を壊せば、損害と修理中の損益も請求させていただきますので。ご承知ください」
「あっはい。すみません」

「さっきから、ザワつくしカメラを向けられるから何事かと思ったけれど、そういう事か。説明には投げるとしか書いていないもの。レーンの途中に落とすと、レーンが壊れるから禁止くらいだよね」
 そう言った後、見回すと。確かに皆転がしている。

 立ち位置から、スパットとピンを直線で結ぶ。
 よしここだ。
 投げるとずっと、真ん中が抜けるだけで、左右にピンが分かれたスプリット状態。
 スコアの、俺の一投目は必ず、数字が丸で囲まれている。

 隣の明智達を見ると、彼女に手取り足取り教えて貰い。明智は努めて真面目な顔をして居るが、鼻の穴が広がり、鼻の下も倍ほどになっている。とてもおもしろい。
 でも今の雰囲気は、とてもいい感じだ。



 今日は約束があるため、駅前にやって来た。
 すると信じられない光景を見る。
 でれた先輩達。
 思わず3度見をしてしまった。
 それも、くみ先輩と、花蓮先輩。一人の男? 確かに2人とも仲が良かったけれど。
 それで、もう一人女の子。ちょっと怖そうだけど、かわいい顔の子だれ? 百面相しながら顔の色がコロコロ変わっている。

 私に気がついたと思ったら、明智さんを紹介し。
 いきなり、ほったらかしで、ホテルへ行こうと宣言するくみ先輩。
 こんな人だった? 私の記憶と随分相違がある。
 
 花蓮先輩がたしなめ、デートに行くようだ。
 話をしていた子は、鳩が豆鉄砲を食らった顔で、その場に放置。置いていかれる。
 良いのかしら?
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